今公表すべきは、死の灰の拡散データだ。
茨城県のホウレン草から放射能を検出したと報道された。核種もベクレル数も不明だが、福島県の農産物・畜産物は壊滅的であろう。NHKの水野解説員は「人体に影響のないレベル」と相変わらずの(意図的に)まちがった説明を繰り返している。ホウレン草に検出されたということは、吸っている空気も水も、濃度は小さくても、ありとあらゆるものが汚染されているのだ。ホウレン草だけを食っているのではない。
文部科学省の測定では、3月19日19:00時点で、原発から北西30キロにあるNo.32地点で136.0μSv/hと発表している。
「直ちに健康に影響する線量ではない」と水野解説員は言うが、一年間では
136×24×365=1,191,360μSv=1,191mSv
であり、放射線業務従事者の一年間の許容線量50mSvの23.8倍なのである。5年間で100mSvという法律があるから、実に60年分の被ばく線量になる。生涯放射線に被ばくする仕事に従事していてもあり得ないほどの線量を、たった1年で被ばくする量だという事実を、マスコミは報道しない。
ちなみに、このような被ばくを文部科学省では「事故」といい、「大量被ばく」という。そして、その作業員は直ちに放射線作業からはずされ、千葉の放医研に送られて厳重な検査を受けることになるのである。事業者には「事故報告」が義務づけられる。マスコミにたたかれる。そんな線量が、30キロの自宅待機の距離にあるのである。しかも、この数値は外部被ばくに限った計算である。内部被ばくは考慮していない。
セシウム137はバリウム137mを経てバリウム137に壊変する過程で大量のガンマ線を放出する。このガンマ線がモニタリングポストで測定されているのであろう。空気中のセシウム137を体内に取り込むと、バリウム137mに壊変するときにベータ線を放出する。ヨウ素131もキセノン131に壊変する過程でベータ線を放出する。体外被ばくはガンマ線が怖いが、内部被ばくはアルファ線、ベータ線のほうがこわい。それはごく小さい距離しか跳ばないからであり、ごく薄い物質で遮蔽されるからである。つまりは放射性物質のごく近傍の細胞だけを放射線が叩く。発がん作用が大きくなる。
政府は半径100kmの県民を全員疎開させるべき時期になったと、私は考える。アメリカなどの諸外国は80km以内は待避するように自国民に勧告したが、この処置の方が正しいのである。
今必要なのは、
- どのような核種が
- どの程度
- どの方向に
拡散しているか。そのデータを公表することである。SPEEDIはそのためのシステムではなかったのか。まったく期待された機能を果たしていないではないか。
核種の同定にはアルファ線、ベータ線、ガンマ線のエネルギーを測定する必要がある。しかし、茨城県にはたくさんの原子力関係の施設・研究所がある。そうした計器を持っているし研究者もいる。どうして測定して公表しないのか。
モニタリングポストはガンマ線・中性子線など電離放射線の空間線量率を測定しているだけである。原子炉の周辺では重要なデータではあっても、それ以外の地域では、空気中に放射性物質がどれくらい漂っているのかの「指標」でしかない。これで人体の被ばく量を推定して安全だと報道するのは、無知であるばかりではなく、事実の隠蔽である。