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緊急時にGentlemanがすべきこと

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福島第一原発に勤務していた50代の女性と他二人の女性が、妊娠可能な女性の被ばく限度である3ヶ月で5mSvを超えたと報道された。この報道を聞いて、「こんな高線量環境下に女性を平然と勤務させていたのか」と心底驚いた。女性の被ばく限度が男性よりも小さいことはイロハのイであり、放射線業務に関連する人間には常識だ。緊急時には、女子供を真っ先に安全なところに避難させるのが、ジェントルマンの取るべき行動ではないか。日頃から「放射線は怖くない」という教育が、このような事態を招いたのではないだろうか。

東京大学大学院教授の小佐古敏荘氏が、4月30日付で内閣官房参与を辞任する意向を表明した。政府が定めた福島県における小学校などの校庭利用の、年間20mSvという線量基準を適用することは、ヒューマニズムの観点から絶対に受け入れられないという小佐古氏の意志表明だ。小佐古氏はICRPの委員も務め、2007年勧告の国内取り入れに当たっての放射線審議会にも関わっており、多くの原発訴訟においても政府側の証人として活動してきた人である。その彼からみても、今回の政府の対応は常軌を逸していると言わざるを得ないのである。

  1. 原子力安全委員会は法に則った行動、放射線防護の基本原則から逸脱している
  2. 初期の放射能雲による甲状腺の被ばく等価線量については、関東・東北の全域にわたって公表すべきである
  3. 引き続き放射能が放出されているのであるから、SPEEDIの計算結果による公衆の甲状腺等価線量及び実効線量を迅速に公表すべきである

などと主張している。 <「国際常識とヒューマニズム」に則ってやっていただきたい>と題して、

 緊急時には様々な特例を設けざるを得ないし、そうすることができるわけですが、それにも国際的な常識があります。それを行政側の都合だけで国際的にも非常識な数値で強引に決めていくのはよろしくないし、そのような決定は国際的にも非難されることになります。
 今回、福島県の小学校等の校庭利用の線量基準が年間20mSvの被曝を基礎として導出、誘導され、毎時3.8μSvと決定され、文部科学省から通達が出されている。これらの学校では、通常の授業を行おうとしているわけで、その状態は、通常の放射線防護基準に近いもの(年間1mSv,特殊な例でも年間5mSv)で運用すべきで、警戒期ではあるにしても、緊急時(2,3日あるいはせいぜい1,2週間くらい)に運用すべき数値をこの時期に使用するのは、全くの間違いであります。警戒期であることを周知の上、特別な措置をとれば、数カ月間は最大、年間10mSvの使用も不可能ではないが、通常は避けるべきと考えます。年間20mSv近い被ばくをする人は、約8万4千人の原子力発電所の放射線業務従事者でも、極めて少ないのです。この数値を乳児、幼児、小学生に求めることは、学問上の見地からのみならず、私のヒューマニズムからしても受け入れがたいものです。年間10mSvの数値も、ウラン鉱山の残土処分場の中の覆土上でも中々見ることのできない数値で(せいぜい年間数mSvです)、この数値の使用は慎重であるべきであります。
 小学校等の校庭の利用基準に対して、この年間20mSvの数値の使用には強く抗議するとともに、再度の見直しを求めます。

3月23日のこのブログ「放射能の拡散」でも書いた通りで、小佐古氏も触れているが、20mSvを超える被ばくは放射線業務従事者でも年間で1人とか数人であり、それを幼児や小学生に許すことを簡単に認めてしまう、ここには法律も住民の健康も何も考慮されていない。

低線量被ばくの影響に関しては、専門家の間でも意見が一致していない。しきい値があり、ある線量以下は安全だという主張もあり、それを支持する研究もある。一方で、低線量ではむしろより危険だという主張もあり、それを支持する研究もあるのである。現行の法体系の基礎となっているICRPの勧告でさえ、甘すぎるという主張がヨーロッパを中心にして提起されているのである。しかし、少なくとも法令が依拠しているICRPの放射線防護に関する基本原則は守らなければならない。特に女性と子供の健康は最大限に配慮しなくてはならないはずである。それすらも逸脱している「無法状態」だと小佐古氏は断じているのである。文部科学省にはジェントルマンはいないのか。

まだ国内法令に取り入れられていない2007年勧告の中身を先取りし、自らの主張に都合の良い低線量域での仮説とデータだけを取り上げて「安全だ」と言ってきた中川恵一氏や国がんの嘉山理事長の責任も重大である。

一方で無視できないのは、小佐古氏の文書では放射線業務従事者の「緊急時被ばくの限度」を最初から500mSvなり1000mSvにすべきだ、250mSvにしたのでは「モグラたたき」である、と言っているように読めることだ。

2007年勧告の国内法令取り入れの議論が、数年間にわたり行われ、審議終了事項として本年1月末に「放射線審議会基本部会中間報告書」として取りまとめられ、500mSvあるいは1Svとすることが勧告されています。<中略>
放射線審議会での決定事項をふまえないこの行政上の手続き無視は、根本からただす必要があります。500mSvより低いからいい等の理由から極めて短時間にメールで審議、強引にものを決めるやり方には大きな疑問を感じます。重ねて、この種の何年も議論になった重要事項をその決定事項とは違う趣旨で、「妥当」と判断するのもおかしいと思います。

これにはまったく同意できない。2007年勧告はまだ国内法令に取り入れられていないからだ。放射線安全委員会には「法に則って」と要求しながら、自らは放射線審議会の中間報告の段階の「緊急時被ばく限度」を採用すべきと言うのである。小佐古氏も涙ながらに都合の良いことをいうものだ。

1000mSvなどはとんでもない数字だが、今回の福島第一原発での緊急時被ばくを放射線業務従事者の集積線量から外すとの考えが東電から出されていた。厚生労働省は最終的には、「いずれの5年間でも100mSvを超えない」に緊急時被ばくを加算するように決定した。(従来はこの点があいまいだった)つまり、今回100mSvを被ばくすれば、今後5年間は放射線業務に従事できないということである。

作業者の健康を守るということでは当然の決定であるが、問題もある。現場の作業員の多くは下請け、孫請けである。彼らが今後5年間放射線業務に従事できないとどうなるのか。東電の社員ならいい。いくらでも別の仕事に配置換えすることが可能だから。しかし、下請けの中小企業では配置換えする部著がない。結局解雇するということにならないかと懸念する。あるいはそうならない(解雇されない)ために個人被ばく線量測定器を意図的に外すということもあり得る。これまでにもそうした行為は行なわれているのである。東電は、100mSvを超えた作業員の雇用を保障しなければならない。

東電のロードマップでも一応の安定までには9ヶ月だと言っている。私は、爆発的な事象が起きなければだが、3年以上はかかると思っている。この期間に熟練の作業員はどんどん被ばくの上限に達して戦列から離れていく。いずれは素人をかき集めて作業をさせることになる。経験を積んだ作業員がいなくなれば、他の原発では定期点検すらできなくなる。検査をして安全を担保することができなくなるのだ。この影響はボディーブローのように効いてくるだろう。結局、原発とは特定の下積みの集団の犠牲の上に成り立っているのだと、今回の事故は証明してくれた。


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緊急時にGentlemanがすべきこと” に対して2件のコメントがあります。

  1. masafumi より:

    横レス 失礼します。
    要するに藤田様は第一種放射線主任者では ありますが、
    もともとの放射線被ばく限度基準の設定、(根本的なことですよね)
    に疑問を持っていたということですよね?
    今回の事故にあたり、政府が基準を引き上げた事は
    あるか、ないかわからない健康被害より、経済性を重視した
    現実的な判断として、支持しているわけですよね?
    素人として、よくわからないのが、だったら 今までの
    長年 適用されてきたルールとは 一体 何だったのか?
    ということです。事故後、平然とルールを変更することに
    疑問を持つ人が出て来るのも 当然のことです。国民の
    健康に関わることですからね。
    >長期低レベル被曝に影響に適応するのは無理があり、
    安全レベルにみるのはよいが、
    緊急事態には確固たるデータが必要である
    確固たるデータが ないから、基準値を引き上げてもいい、と考える人と
    いや、健康被害が出る恐れがあるから、基準値は守るべきだという人と
    意見はわかれるようですね。あなたは前者のようですが、こういう判断という
    のは 東大の小佐古氏がいうように、ヒューマニティーが問われる問題
    だと思います。
    低量の被爆の後遺症は ガンと食生活の関係にも 似て、
    相関関係を 完全に証明するのは 難しいと思います。
    10年後、20年後には チェルノブリだけでなく、福島のデータも
    出てきますから、適正な被爆基準というものも より明確になってくる
    と思いますが、、、。その時では 遅いと個人的には思います。
    >具体的なデータをもってご指摘くだされば幸いです。
    被爆量基準値 引き上げ賛成側にも、否定側にも
    具体的なデータは存在しないことは 藤田様には わかっている
    ことでしょう?
    日本人の乳がん罹患率は 戦後 急上昇
    しましたが、乳製品摂取量の増加と関連性を指摘する専門家
    (特に栄養学者)も出てきました。しかし、それを完全に
    証明することは難しいです。食生活だけでなく、ストレス
    や 運動不足や さまざま要因が重なって、発症するわけ
    ですからね。 低量被爆の後遺症の調査というのも
    同様に 難しいでしょう。明確な結果が出ていないから、
    安全というのか、安全性を疑うのかは、再度いいますが
    それは ヒューマニティーの問題だと思います。
    ただ、『明確な事実』として、我々の前にあるのは
    福島の事故後に 政府は 線量基準を引き上げたということです。
    要するに 明確なエビデンスがない線量基準ないからこそ、
    基準値を引き上げたことは 健康よりも 経済性を重視した
    判断であることの証左であるといえます。

  2. 藤田 雄二 より:

    貴殿のブログを拝見し、放射線の影響を理路整然と記述されているので、いくつか質問させていただきます。
    現在の規制値が、あるかないかわからない低レベル放射線の影響を、万が一の影響を考えて、あまりにもきびしく制定され、リスクを抑える以上の現実に多くの悪影響を与えていると考えているからです。
    悪影響とは
    ①避難地域を設定されたため、現実に多くの家畜、ペットの命が悲惨な形で奪われている。
    ②高齢者にとって避難所へ移動、生活することは極めて大きな現実的なストレスであり、10年以上あとで現れるかもしれないとされる発がん効果を考えると、悪影響のほうがはるかに大きい。
    ③風評被害による雇用の損失を含め経済的損失があまりにも大きい。、
    また現状、私の考えていることは以下のことです
    多くは食品総合研究所の緊急シンポジウムの資料に基づくものが多いです。
    ①1950-60年代の米ソ中仏の大気核実験で、現在レベルの数百~数千倍の放射性物質が大気中にばかまれている(日本内)。
    このような時代に生まれ育った世代(私を含め)に、白血病等の有意な増加のデータはない。従って現在のような低レベルな放射線で騒ぐ必要は全くない。
    ②ICRP勧告は「線量は容易に達成できる限り低く保つべきである」の哲学に基づき設定されたものであり、平時はこれでよいが、福島原発のような問題(チェルノブイリは問題外)がおきた場合は、確固たる影響レベルを考慮した緊急レベルが設定されるべきである。
    ③現在の設定値は広島・長崎の短期大量被ばくの結果を、単純に年間被ばく線量に換算したものである。長期低レベル被曝に影響に適応するのは無理があり、安全レベルにみるのはよいが、緊急事態には確固たるデータが必要である。
    また高レベルからの単純な直線外挿法による推定値である。
    ③「低線量ではむしろより危険だという主張もあり、それを支持する研究もあるのである」とあるが、具体的にどのような論文があるか。
    低線量ではむしろより健康に良いとするデータは存在する(ホルミシス効果)。
    ④内閣官房参与に迎えられた小佐古氏が辞任されたが、確固たるデータを示して辞任すべきである。さもないと単に不安をあおるだけである。(実際かなりの人があおられている)
    ⑤強制的に全住民を立ち退かせる避難地域は設定すべきではない。住民の選択制にすべきである。
    以上ですが、ここが間違っているよと指摘があれば、具体的なデータをもってご指摘くだされば幸いです。
    なおカビがはえているとはいえ第一種放射線主任者の資格をもっていますので、専門用語は大丈夫です。

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