近藤誠氏の中川恵一批判は不十分だ

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膵臓がんのブログのはずなのに、このとろこ福島原発のことばかりを書いている。私は今、がん患者である。どういうわけか生き残っている。もちろんこの先どうなるかは誰にも分からないし、統計的に言えば再発・転移の確率がまだ50%ほどはある。しかし、現在生き残っている者の務めとして、福島原発の事故によってたくさんの、本来ならがんとは無縁であったかもしれない人たちに、がん患者にはなって欲しくないと思う。特に放射線に感受性の高い若い人たち、子供、幼児は、なんとかリスクを減らして欲しいと願っている。そのような気持ちで福島原発に関係した内容を書いてきた。しかし、政府やマスコミ、御用学者(この言葉が東京新聞でおおっぴらに出てきたことは一種の驚きであった)たちが、あたかも放射線によるがん発症は無視できるかのような説明をしていることに、非常な怒りを覚えている。

Wshot00231_2 近藤誠氏が文藝春秋6月号で「放射線被曝 どの数値なら逃げるか」と題して、中川恵一東大医学部放射線科准教授らの「御用学者」を批判している。近藤氏の批判は(ICRPモデルを前提とするかぎりでは)概ね正しいのだが、弱点もある。

中川氏は「原爆の被害を受けた広島・長崎のデータなどから100mSv以下では、人体への悪影響がないことは分かっています」と述べているが、これに対して近藤氏が「近年、低線量被ばくのデータが充実してきた。原爆被爆者調査を継続したところ、10~50mSv領域でも直線比例関係があることが示唆されたのです。」と反論している。その通りだと思う。この点をさらに言えば、原爆被爆者の疫学調査においては対照群の選択に人為的な誤魔化しがある。

隠された被曝 こういうことだ。ABCC(原爆障害調査委員会)などによる疫学調査において、爆心地から半径3kmの外で被曝した方と入市被爆者は被爆者とは認められていなかった。また、この調査は1950年から始まったが、それ以前に死亡した方は無視されている。そして、がんの発症率の調査において、この3km以遠の被爆者を、”被爆者ではない”として対照群に入れて調査した。これでは発がん率が過小評価になるのはあたりまえである。広島・長崎の被爆者のデータがICRPの大きな根拠になっているのであるが、更に言えば、ICRPは内部被ばくをほとんど無視している。原爆投下後に襲った枕崎台風(1945年9月17日)によって放射性降下物が大雨でほとんど流されていたのであり、その後の測定では残留放射能を過小評価している。ICRPモデルを批判した書籍としては矢ヶ崎克馬氏の『隠された被曝』しか見当たらないが、ICRPモデルの欠点を詳しく解説している。

福島原発の事故後の政府や御用学者の説明は、現行法令が依拠しているICRP勧告すらも無視しているのであり、その点を追求することは重要である。校庭の20mSv問題をとっても、現行法令に違反するようなことを政府が行なっているのであり、少なくともICRPの精神で対応するように求めることは必要である。しかし、この20mSvのことを考えてみても、この数字には内部被ばくは無視されているのである。

ICRPでも一応は内部被ばくを評価するシステムにはなっている。しかし、それは放射線のエネルギーだけに注目した単純なモデルである。この半世紀の間に新たに発見された放射線の分子生物学的な成果はまったく反映されていない。放射線による影響を吸収エネルギーだけで評価できないというのが、近年の分子生物学の到達点である。例えばバイスタンダー効果やペトカウ効果、ゲノム不安定性、バイノミナル効果などがあるとされている。

吸収エネルギーに放射線加重係数をかけて線量当量(被ばく量)を計算することになっているが、飛程の短い、つまり狭い範囲内の細胞に集中的にエネルギーを与えるベータ線もガンマ線と同じ1という係数が与えられている。素人が考えてもこれはおかしいだろうとなる。また、臓器の一部の細胞にベータ線が照射されても、臓器全体の重さで平均して内部被ばくを求めるのである。したがって効果が<薄められる>。ここでも内部被ばくが非常に過小評価されている。

近藤誠氏も、ICRPモデルの範囲内でしか考えられないから、「医療被ばくに比べれば福島原発による被ばくは問題ではない」ということになる。内部被ばくのない(PETなどでは内部被ばくがあるが、生物学的半減期が極端に短く、重要臓器に残留しないものを使っている)医療放射線にしか接していない中川恵一や近藤氏に、内部被ばくの危険性を考慮しろというのが無理なのかもしれない。彼らに限らず、医療用放射線の専門家を自称するのなら、せめてゴフマンの『人間と放射線―医療用X線から原発まで』には目を通して欲しいものだ。


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