がんも原発も、人としてどう生きるかの問題

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がんになれば、何が本当に大切なものかが、これまでとは違って見えてくる。マクファーランド神父は「未来を心配することから私を解放し、過去を悔やむことからも解放し、たった今を生きられるようにするため」に神は私にがんを使わされた、のだと考えている。生き方を180度変えたがん患者はたくさんいる。地位や名誉などは、がんという病気の前には何の価値もないものだと見えてくる。スーパーのレジに並んでいて、隣の列が早く進もうが、私の前の老女がたっぷりと時間をかけて一円玉を探そうが、そんなことにもいらいらしなくなる。信号が赤に変わると、ゲートの開いた競走馬のごとくゼロヨン加速を体験仕様とする気持ちも薄れて、5秒かけて時速23kmにするのが一番燃費が良いと助言してくれるカーナビの忠告に従っている。

5月27日のBS11「INsideOUT」に城南信用金庫の吉原毅理事長が出演していた。城南信用金庫は「原発に頼らない安心できる社会へ」という声明を出してホームページにも載せている。ツイターでも話題になった。吉原理事長は番組で、「東北の信用金庫が津波で被害を受けた。立ち上がろうとしたが、原発の事故の影響で事業を再開できない。また、顧客の事業そのものが原発事故のために成り立たなくなった。地域の産業を応援するという信用金庫の存在基盤そのものがなくなるのです。これは常識で考えても原発に頼ることは危ないということだ。」と言っている。そして、行内で節電をやってみたら30%は簡単にできた。原発による電力が3割だとか、原発は安いとかの議論があり、本当は安くもないし、火力水力で十分まかなえるとの主張もある。それを措いておくにしても、3割は楽に節電できる。ならば地域全体が崩壊するような原発は必要ないのではないか、このような主張だ。

いのちと放射能 (ちくま文庫) ごく普通に、全うに考えれば吉原氏のような考えに至るはずだ。雑誌『世界』6月号は、「原子力からの脱出」との特集の最初に、このブログでも何度か紹介した生命科学者の柳澤桂子さんを登場させている。柳沢さんはチェルノブイリの事故後に『いのちと放射能』という本を出し、このように書いていた。

原子力問題で一番の悪者はいったい誰なのでしょう。
原子力を発見した科学者でしょうか。
原子力発電を考案した人でしょうか。
それを使おうとした電力会社でしょうか。
それを許可した国でしょうか。
そのおそろしさに気づかなかった国民でしょうか。

そのように考えてきて、私はふと、私がいちばん悪かったのではないかと気がつき、りつ然としました。

私は放射線が人体にどのような影響をおよぼすかをよく知っていました。放射能廃棄物の捨て場が問題になっていることも知っていました。けれども原子力発電のおそろしさについては私はあまりにも無知でした。

スリーマイル島の事故のとき、それをどれだけ深刻に受けとめたでしょうか。

そして、さらにチェルノブイリの事故が起こってしまいました。

そして、さらにフクシマの事故が起こってしまいました。『世界』誌上で柳沢さんは「原子力発電反対の立場からいうと、今度の事件で、世界中が原子力発電をやめてくれると良いのですが、けっしてそういうことにはならないでしょう。私の個人的な推測では、しばらくの間食品や大気中の放射線量を気にしても原子力発電所の事故が収まれば、また原子力発電所の新設は始まり、既存の発電所の運転はそのまま続けられるだろうと思います。」と推測している。

私もそのような予感がする。なぜかというと、「企業は、自己の短期的リスクについて心配することに多くの時間を費やすが、システム的なリスクについてイはあまり考えない」からであり「今回の危機からは、いざとなったら税金に頼って脱出できること以外、ほとんど教訓を得ていないらしい」からである。実はこの文言は、リーマンショック後の銀行業界について、数学者のデイヴィッド・オレルが『なぜ経済予測は間違えるのか?—科学で読み直す経済学 』に書いたものである。オレルは正統的な経済学によるよりも、複雑系理論やネットワーク理論で経済を分析したらどうなるか、という視点で書いているのだが、彼の指摘は原発にも良くあてはまる。要は誰も長期的なリスクを心配していない、東電がなくなった後は野となれ山となれ、というに等しい考えが多数の経営者の関心事であり、城南信用金庫の例は珍しいということだ。

とすれば、この「原発ネズミ講」をやめさせるには強力な権力が必要だが、ドイツなど少数の国を除いて、日本も他の国の政府もその意志がない。

あと一、二カ所の原発が事故でもしないかぎり、原発からの完全撤退二はならないだろうと思う。でもその時に日本という国に住み続けることができるのだろうか。

今考えを180度変えなくて、いつ変えるのだ。これまでの生活を根本から見直さないかぎり、がんも原発も解決の道がない。

それにしても、セシウム137やストロンチウム90は筋肉と骨に蓄積することが分かっている。筋肉組織が少ない女性の場合は、乳房や子宮に蓄積する。そして、アメリカの研究では原子力発電所の運転と乳がんの発生率に相関が指摘されている。ヨウ素131と小児甲状腺がんの因果関係は明かである。しかし、日本のがん患者団体、患者会から、今回の事故について「将来のがん患者が増加するから」と抗議した例を知らない。私が知らないだけかもしれないが、検索にはかからない。

患者団体にとっては「今のがん患者・自分の癌」だけが関心事であり、将来のがん患者には関心がないということか。それも短期的リスクにだけ関心があるという点では原発推進側と同じではなかろうか。


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