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放射線による影響はエネルギーによって違う

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福島第一原発の事故による放射線被ばくについて、御用学者らから「医療用被ばくと同程度だから」がんになる確率は無視できる。必要以上に心配してストレスを溜める方が問題だ、などの解説がされている。

同じ医療関係者でも、北海道がんセンターの西尾正道院長が「医療ガバナンス学会」への投稿で述べているように(1)

パニックを避けるためにCT撮影では6.9mSvであるなどと比較して語るのは厳密に言えば適切な比較ではない。画像診断や放射線治療では患者に利益をもたらすものであり、また被ばくするのは撮影部位や治療部位だけの局所被ばくであり、当該部位以外の被ばくは極微量な散乱線である。内部被ばくを 伴う放射性物質からの全身被ばくとは全く異なるものであり、線量を比較すること自体が間違いなのである。

問題を適切に指摘している方もいる。西尾院長はまた、ICRP勧告の枠組みの範囲内であるが、内部被ばくについても一考すべき意見を書かれている。

そこで、ここでは放射線のエネルギーに注目した別の観点から、外部被ばくについて考察してみる。

ICRP勧告による(日本の法令はこれにしたがっている)と、被ばく実効線量は、放射線による吸収エネルギーに、放射線の種類によってICRPが定めた「放射線荷重係数」(下の表)をかけて求めることになっている。

放射線の種類 エネルギー範囲 荷重係数
X線とガンマ線 全エネルギー 1
ベータ線(電子) 全エネルギー 1
アルファ線、重粒子線 20
陽子 2MeV以上 5
中性子 エネルギーに応じて 5~20

ご覧のように、エックス線もガンマ線も、ストロンチウムなどからのベータ線も、そのエネルギーに関係なく全エネルギー領域で「1」という荷重係数が与えられている。ECRR(欧州放射線リスク委員会)は、すべて「1」などというそんなバカなことはないだろう!と批判しているのである。

エックス線またはガンマ線は、医療で人体の透過写真を撮ること以外に、鉄などの鋼構造物の検査にも使われている。いわゆる非破壊検査である。そして、検査対象物の透過厚さと比重に応じて適切な放射線エネルギーが選択される。(下の図)

放射線の種類 エネルギー 適用範囲
医療用エックス線 50~100keV 人体
工業用エックス線 100~400keV 鉄30mmまで
工業用ガンマ線 Ir-192 400keV 鉄50mmまで
              セシウム137 660keV 鉄80mmまで
              コバルト60 1170,1330keV 鉄120mmまで

今回の事故によって放出された、セシウム137、コバルト60も非破壊検査で使われている。(Cs-137は今はほとんど使用されていないが)この表で明らかなように、エックス線・ガンマ線と言っても、そのエネルギーによって透過する厚さがずいぶんと違う。原発の圧力容器のように150mmもある鉄を医療用のエックス線では検査できないし、逆に人間の検査には100keV以上の高エネルギーの放射線を照射しても検査できない。仮にセシウム137の放射線で胸部撮影をすればどのような写真になるか? 次の写真の左は通常の医療用エックス線、右がセシウム137のような高エネルギーによる写真である(実際に撮影したのではなく、こうなるという画像処理を施したものである)

Image11

つまり、人体に高エネルギーのガンマ線を照射したら、コントラストのないのっぺりとした画像になり、病変部や腫瘍があっても識別することが困難である。放射線のエネルギーが高いと、骨のように密な組織も筋肉のような軟組織も、透過する放射線量ではその差は小さい。したがってフィルムに届く放射線量に差がないから写真の濃度に差が出ない。つまりコントラストのない写真になる。左の写真で脊髄が白いのは放射線が透過しないからであり、右の写真では脊髄を透過している(被ばくしている)のである。

医療用エックス線による被ばく線量は通常、皮膚への入射位置でのシーベルト単位で測られるが、ガンマ線による被ばくは全身についての骨髄線量として測定される。例えば医療用エックス線による皮膚線量が0.5mSvであれば、軟組織線量は0.3mSvであり、骨髄線量は0.03mSvとなるであろう。一方でセシウム137などの高エネルギーガンマ線による線量は、骨髄線量でもほぼ同じ0.5mSvである。生物学的エンド・ポイントとして白血病を考えるならば、骨髄の造血組織の被ばく線量が異なることにより、ガンマ線による0.5mSvはエックス線による0.5mSvよりも高いリスクを与えることになる。

福島の子どもたちにガラスバッジを持たせて被ばく線量を測定する計画が動いている。国立がん研究センターもそのように提案している。内部被ばくを無視しているが、測定しないよりはましであるが、ガラスバッジは一ヶ月胸部に着けて積算線量を測定するものである。結果はさらに半月後に分かるのであるが、それで被ばく線量が多いと知ってもどこで被ばくしたのか分からない。なんだか、被ばく量が多くないことの証明に使う魂胆ではないかと思う。

外部被ばくだけを考慮しても、子どもたちはセシウムによるガンマ線を浴びているのであって、医療用の低エネルギーエックス線ではない。ガラスバッジの測定結果をもって医療用被ばくと比較することの愚は避けなければならない。

1980年代にICRP内部では、トリチウムには2、オージェ電子放出体には5の荷重係数を採用すべきであるという議論があったが、原子力産業への配慮から採用されなかった。このようにICRP勧告の中身は、科学的な合意としてでなく、軍事産業・原子力産業へ配慮したなものであることに注意しなければならない。ICRP勧告が言っているから正しいとはならないのである。素人考えでも全エネルギーで同じ「1」は、明らかに不自然で非科学的である。

東大病院の放射線科医らによる「医療被ばくと比較してたいしたことはない」という主張は、エネルギーが違えば画像の鮮明さが損なわれてレントゲン写真が撮れないという、自らの仕事によって裏切られているのである。


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