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ストロンチウムの怪

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横浜や東京で検出されたストロンチウムに関して、文科省が「福島由来ではない」と反論したことが話題になっています。真相はどうなのか?
横浜市が採取した堆積物及び堆積物の採取箇所の周辺土壌の核種分析の結果について

こちらのブログ「3.11東日本大震災後の日本」にまとめられているので、それを参考にしながら検証してみます。文科省と横浜市の同位体研究所が発表した検出データは次のようになります。

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セシウムについては両者の値はほぼ同じですから、問題はないでしょう。測定値に信頼がおけると言えます。

同位体研究所のストロンチウムの分析方法は住友3Mの「ラド ディスク」を使った固相抽出法とされており、Sr-89とSr-90の区別ができません。文科省の言い分は、Sr-89が検出されていない、Sr-90は3.11以前の大気圏核実験やチェルノブイリ事故の影響によって降下したSr-90の値と同程度である、したがって横浜で検出されたストロンチウムは福島原発由来ではない、と述べています。

同位体研究所側は「固相抽出法による測定の留意点」において次のように述べています。

放射性ストロンチウム89と90の構成比

福島第一原子力発電所の事故で放出されたと推定される放射性ストロンチウムの総量は、次の通りです。

ストロンチウム89: 2,000テラベクレル 半減期 50.5日
ストロンチウム90:  140テラベクレル 半減期 28.9年

ストロンチウム89の半減期は50.5日ですので、9月時点では、5ヶ月経過し、当初放出量の6%程度にまで減少している事になります。 ストロンチウム90は、ほとんど減少していない事を踏まえると、9月初旬時点ではほぼ同量程度と推定されます。
従って、RadDiskによる測定については、おおよそ半分程度が半減期の長いSr90と推定されます。
(注記:この試算は回収されたストロンチウムが福島原子力発電所由来である場合となります。 過去の大気圏内原子力爆弾実験、チェルノブイリ原子力発電所事故由来の残存放射性ストロンチウムである場合には、ストロンチウム90の構成比が高くなります。仮に本測定において、由来が過去の原爆実験又はチェルノブイリ原発事故のストロンチウムを回収していると仮定すると本測定の測定値は、ストロンチウム90の値であると解釈されます。尚、2005年~2009年における神奈川県による放射能測定調査では(横須賀・対象:草地土壌)、ストロンチウム90の測定値は1.7~2.3 Bq/kgの水準でした。また同時期において東京都新宿区における同様の測定においては、1Bq/kg未満の測定値でした。)

Sr-89と90の分離はできないが、放出量の比から推定して半分はSr-90だろうと言うのです。しかし、Sr-89の半減期が50.5日であれば、「当初放出量の6%程度まで減少」ではなくて、5ヶ月後(150日として)には12.8%になります。9月時点では6ヶ月経っているので、それなら8.5%。こうした基本的な計算でミスを犯すようでは、この測定機関のデータの信頼性にも疑問符が付きます。

放出量の比が正しければ、同位体研究所の測定値129Bq/kgのうちでSr-89が約80Bq、Sr-90が約40Bq/kgとなります。2対1です。

文科省の報道発表では、「この手法(固相抽出法)ではラジウム、鉛などベータ線を放出する天然核種、あるいはベータ線を放出する子孫核種が抽出されることが示されている。」と反論しています。セシウムなどが放出するガンマ線は「単色放射線」であり、エネルギーがきまっていますが、ベータ線は「白色放射線」で連続したエネルギーを持ちます。核種によって最大のエネルギーはきまっていますが、エネルギースペクトルから核種を決定することはできません。Sr-90の場合はベータ崩壊してYb-90になり、Yb-90がさらにβ線を出してZr-90になるときに2.28Mevという非常に高いエネルギーのβ線を出すので、それを利用してSr-89と区別できます。

そのために前処理としてストロンチウムだけを抽出しなければなりません。文科省が利用した(財)日本分析センターは化学的に抽出し、同位体研究所はラドディスクを使った固相抽出法で迅速に抽出したというわけです。問題は抽出の精度ですが、3Mのサイトではこの「ラムディスクはストロンチウムに対して高い選択性を有した粒子によって補足される」と書かれています。ラジウムや鉛を分離できないものを世界の3Mが販売するとも思えませんが、実際のところは分かりません。

それでは文科省の言うように、横浜のストロンチウムは福島由来ではないと断言できるかというと、これも問題があります。セシウムは飛来しているがストロンチウムは飛来してこないとは都合が良すぎるように感じます。文科省もチェルノブイリによるストロンチウムが日本に飛来していることは認めているのですから、福島から横浜までは、チェルノブイリよりもはるかに近い距離です。チェルノブイリ由来のストロンチウムはあるが、福島由来のものはないというとき考えられるのは、福島原発からのストロンチウムの放出量は政府の発表よりも相当少なかったという場合でしょう。(放出量も訂正されたり、海外からは過小評価だと言われているからあまり信用できないが)この仮定が正しければ、私の予測からははずれますが、より危険なストロンチウムが少ないのなら住民にとっては歓迎すべきことです。

19日のブログにも書いたように、NNSA(米国国家核安全保障庁)のデータでは伊達市などでもSr-90が測定されています。このデータによれば、Sr-89の最大値は9.19E-06μCi/g(340Bq/kg)で、Sr-90最大値は、1.68E-07μCi/g(6.2Bq/kg)でした。Sr-90/Sr-89の比は約2%となり、福島原発からのストロンチウムはほとんどがSr-89だということかもしれません(断定はできませんが)。

横浜のSr-89が約80Bq/kgとすると、半減期を考慮して3月時点では約670Bq/kgとなります。これはNNSAのデータと比較すれば2倍ですから多すぎます。横浜で福島の2倍のSr-89とは、これにも疑問符が付きます。

4月にはハワイ島のヒロで牛乳からSr-89が検出されたと報じられました。
米国環境保護局(EPA)のRadNetデータベースで確認できます。「State」に「Hi」(ハワイ)を選択し、Analyteに「Cesium-89、Cesium-90」を複数選択、From Dateには「03/11/2011」を入力、その他は空欄にして一番下にある「Search Database」ボタンをクリックしたときの検索結果は下の図です。
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4月4日にSr-89が6.5pCi/L検出されています。Sr-90は測定限界以下(マイナス)です。6.5pCi/Lは0.24Bq/Lに相当します。検出限界に近い値かもしれませんが、福島由来と考えてまちがいないでしょう。ハワイまで飛んでいるのに横浜には飛来しなかったとは、とうてい納得できません。

現時点では、同位体研究所のデータは信頼性に乏しい。しかし、文科省の言い分も納得できない、というのが私の結論です。

脱原発のサイトなどでは「文部科学省の陰謀だ」などの書き込みがありますが、そうではなく、きちんとデータに基づいた批判をすべきでしょう。そのためにもストロンチウムについてもっと多くの測定を実施して公開するように要求すべきです。土壌よりも食品のデータが重要です。横浜の測定値に反論するためなら文科省は迅速に反応したのですから、できないことはないはずです。


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