【追記あり】18モデルケース「山下」マーフィーの法則的試算

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福島第一原発の事故で、周辺の市町村から避難した人たちの外部被ばく線量を、18のモデルケースとして試算したとNHKで報道されています。

18のモデルケースを作成し、空気中の放射線量の推移と照らし合わせて、事故発生翌日の3月12日から4か月間に体の表面に受けた放射線量=外部被ばく量を試算しました。このうち、原発から20キロ圏内の川内村で、最も線量が高かった場所から3月13日に村内の小学校に避難し、さらに3日後に郡山市に再避難した人の場合、4か月間の外部被ばくは0.7ミリシーベルト程度と推定されています。

また、飯舘村で、線量がもっとも高かった場所にとどまり、役場の機能が移転するのにあわせ、6月21日に福島市に避難したという想定では、19ミリシーベルト程度に達しました。このケースでは、避難後の被ばくなども含めると年間では、国が避難の目安とした20ミリシーベルトを超えるおそれがあり、事故直後の情報公開の在り方など、政府の対応が改めて問われそうです。

放射線医学総合研究所の試算ですが、この程度の試算なら事故後すぐにでもできたはずです。電卓ひとつあれば誰にでもできる程度の計算でしょう。しかも被ばく線量を少なく見積もっている。それを証明してみます。

私の作成したウェブページにアップしてある「被曝リスク計算プログラム」のExcel-VBAに少し手を加えて、期間外部線量が計算できるように修正してみました。これを使って検算してみます。

ケース1:(汚染度はCs-134+Cs-137の合計)
3月12日  川内村の土壌汚染  1000kBq/㎡       0.1mSv
3月13日  河内村小学校        300                   0.1以下
3月16日-7月11日  郡山市    60                     0.5
合計                              0.7mSv

Cap1

郡山市内では河内村小学校よりも土壌汚染が高いところがあります。避難したら余計に被ばくしたということもあり得ます。試算結果が0.7mSvとなるためには、郡山市のもっとも土壌汚染の少ない場所に避難していたと仮定しなければ計算が合いません。仮にCs-134+Cs-137で300kBq/㎡のところに避難したとすれば、2.8mSvとなり、合計では3.0mSvです。1年間ここにいたならば、8.2mSvとなります。

ケース2:(汚染度はCs-134+Cs-137の合計)

3月12日-6月21日  飯舘村   2000kBq/㎡     16.5mSv

6月22日-7月11日  福島市    1200kBq/㎡      1.8

合計                18.3mSv

Cap2

こちらもほぼ同じ結果となりました。

しかし、飯舘村の「線量がもっとも高い」地域はCs-134、Cs-137のそれぞれで3000kBq/㎡以上のところが広範囲にあります。放医研の試算は、飯舘村の中心部で1000kBq/㎡以下の場所を想定しているとしか考えられません。

Cap3_2

 

ケース2でもっとも汚染が高い場所に居住していた場合

を計算してみます。

3月12日-6月21日  飯舘村   6000kBq/㎡     49.6mSv
6月22日-7月11日  福島市    1200kBq/㎡      1.8
合計              51.4mSv

4ヶ月間で50mSvを超えてしまいます。50mSvとは、放射線業務従事者が「5年間で100mSv、ただし、いずれの1年でも50mSvを超えてはならない」とされている線量です。飯舘村の「もっとも線量の高い」地域にいたのなら、この程度の線量にならなければウソです。しかもこれは、3000k<とされた地図の赤い部分の下限値を使った計算結果です。倍以上で、100mSvを超える結果も十分にあり得ます。

Cap6

 

被ばく線量のシミュレーションは、仮定条件の設定次第でいかようにも変えられるのです。私の計算でも、屋外にいる時間を10時間、建物の遮蔽係数を0.7としていますが、こんなものどうにでも設定することができるのです。地面からの線量しか計算していませんが、屋根に放射能が貯まっている場合は点状からの線量が一番多くなります。そのようの要素は例え計算したって、いい加減な推定にしかなりません。放射線被ばくを計算で求めることは、所詮おおざっぱな見積にしか過ぎません。

18のモデルケースは、どうやら恣意的に被ばく線量を少なく見積もる意図で計算されています。


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私のVBAによる計算は、放射線医学総合研究所がウェブ上にアップしてある「放射線緊急時の評価および対応のための一般的手順」からのデータに基づいています。

半減期を考慮するためにExcelのVBAでプログラムしてありますが、4ヶ月程度の期間なら減衰を無視してもよいので、それなら電卓があれば十分計算できるのです。この程度の計算を事故から半年以上も立たなければ出せないというのは、「専門的能力の欠如」と言って良いでしょう。

しかも、これは「外部被ばく」線量だけです。内部被ばくはまったく考慮されていません。

このような試算を出して「安全だ」と言いたいのでしょうが、そうはなりません。郡山や福島市の代表的な汚染地域、Cs-134、Cs-137がそれぞれ300kBq/㎡のところに1年間いたとすると、外部被ばく線量は16mSvにもなります。このような放射線管理区域とすべきところには18歳未満の人は立ち入ってはいけないし、妊婦や乳幼児がいることが異常なのです。

600kBq/㎡とはどのような汚染なのか。経済産業省が今回の事故に合わせて出している放射能防護服着用基準によれば、郡山市や福島市では「汚染-C区域」に相当する防護服を着用しなければならない地域が多く存在します。40ベクレル/?は、400kBq/㎡です。文部科学省の「放射線量等分布マップ 拡大サイト」で見れば明らかでしょう。

原発事故現場で作業をされている方たちが着用している、それと同じものを郡山市や福島市内でも着用するべきほどの放射能汚染なのです。

Cap4

Cap5

マーフィーの法則に次のようなのがあります。

マイクロメータで測って、チョークで線を引き、斧でぶった切る

斧でぶった切るのなら目分量で測れば良いものを、マイクロメータでミクロン単位まで測ろうとする行為を笑ったものです。山下俊一氏と放射線医学研究所も、電卓で計算できる程度の計算を、長期間かけて綿密なプログラミングをしていたのでしょうが、まさにマーフィーの法則を地でいっています。被ばく線量を少なく見積もるために知恵を絞っていたので遅くなったということでしょう。

放医研が自ら公開しているデータを元に斧でぶった切るようにざっくりと計算すれば、少なくとも妊婦や子どもは早期に避難させるべきだという判断ができたのではないか。

放射線影響研究所の長瀧重信元理事長は、「被ばく量は住民が最も知りたい情報で健康影響を調べる基本となる。今回、遅れたとはいえ、モデルケースをまとめたのは一歩前進で、早く住民に知らせるべきだ」としています。そのうえで、試算結果については、「ほとんどのケースでは被ばく量が少なく、避難の対策はおおむね成功していると言える。一方で、なかには年間で20ミリシーベルトを超えるおそれのあるケースもある。健康への影響が出るとは考えにくいが、こうした地域で事故当初の情報提供が適切だったか、改めて検証する必要がある」と話しています。

長瀧氏のコメントもおかしいですね。一歩前進ではなく、遅すぎる試算でしょう。20mSvを超えても健康への影響は考えにくい?? どの根拠を元にしているのでしょうか。彼のこれまでの学者としての業績からはこのような結論は導き出せません。

放医研はどのような条件で試算したのかを明らかにすべきです。

私の計算と異なるのは、土壌への沈着量ではなく、文科省の発表した周辺空間線量率に0.6(根拠薄弱、実測値と比較すべき)を掛けて実効線量率を計算しています。対象となる核種もセシウム以外にヨウ素131、132、キセノン、テルルなども計算しています。

建物の遮蔽係数(線量低減係数としている)などはそれぞれの条件に応じて計算してますが、3月15日以降がそれ以前よりも係数が小さくなっているのはなぜでしょうか? 水素爆発した後の方が線量が低いはずがないでしょう。平屋・二階建ての建物で0.6⇒0.2 です。どうして3分の1になるの? さらに言えば、屋根に放射能が降り注げば、もっと高くなるはずです。

このように、放射線による被ばく線量を計算するのは、係数の扱い方次第でどのようにでもなるのです。

まさにマーフィーの法則通りのことをやっていました。

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