18モデルケース試算の疑問


【日 時】2020年9月21日(敬老の日) 13:00~16:00(開場:12:45)
【参加資格】膵臓がん患者とその家族
【参 加 費】無料
【定 員】 100名
【内 容】
第一部 講演:佐藤典宏先生
   「膵臓がんの標準治療と代替医療~外科医の立場から~」
第二部 患者さん同士の交流会。コロナにも膵臓がんにも負けないぞ!

ウェブ会議ツール「Zoom」を使ったWeb交流会となります。
スマホだけで簡単に参加することができます。


詳しくはオフィシャルサイトで

9月20日9:00AMまで参加申込受付中です。
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12月14日のブログに書いたように、福島県のホームページに「県民健康管理調査」進捗状況発表(平成23年12月13日発表)が掲載され、その中に放射線医学総合研究所が作成した「外部被ばく線量の推計について」(以下「推計」とする)というPDF資料があります。

この推計は、今後福島県が全県民を対象とした健康影響調査を行なう際の、個人被ばく線量の推定方法を明らかにしたものであり、モデルケースとして18例の試算を行なっています。

しかし、もっとも被ばく線量の大きい例が19mSvであり、都合良く20mSvを超えていないと聞かされると、私の頭の中のアラームが鳴り響くのです。土壌への沈着量から計算した私のごくおおまかなアルゴリズムによる計算結果とは数倍の違いがあることによって、さらにアラームの音量が大きくなります。

長文になりそうなので、最初に結論を書いておきますが、線量評価にいくつかの疑問点があり、被ばく線量を小さく見せようと意図して計算されている、と判断せざるをえません。

  • 衣服・皮膚などに付着した放射性物質からの外部被ばくを考慮していない
  • 線量低減係数(建物遮蔽計数)を小さく評価している可能性がある
  • 周辺線量当量から実効線量(成人)への換算係数 0.6 は小さくはないか。照射ジオメトリー(放射線の方向性)として、どれを採用したのか不明である。

順番に見ていきます。

外部被ばくの原因は?

放医研は、IAEA-TECDOC-1162を翻訳した「放射線緊急事態時の評価及び対応のための一般的手順」を公表しています。この83ページには「線量評価の概要」の「考察」として、

事故時には、個人の被ばくは、外部被ばくも内部被ばくも発生するだろうし、そして種々の経路を通じて被ばくするだろう。 外部被ばくは、線源、空気中のエアボーン放射性核種(イマージョンや頭上のプルームによる被ばく)、地面上にならびに、人の衣服および皮膚の上に沈着した放射性核種からの直接照射に起因するだろう。 内部被ばくは、プルームから直接か、もしくは汚染された表面からの再浮遊のいずれかによる放射性物質の吸入、汚染された水および食品の経口摂取、または汚染された外傷を通じて生じる。

今回の試算は外部被ばくのみであり、内部被ばくは対象外です。(これも大問題ですが)しかもその外部被ばくを計算するのに、空間線量率のみを用いています。文科省のモニタリングデータやSPEEDIのシミュレーションでは、既に通過したプルームを正しく評価しているとは考えられません。空気中の放射性核種の濃度が分かっていませんから、放射性プルームによるガンマ線外部被ばくによる実効線量、空気イマージョン線量は推計されていません。また降下した放射能が衣服や頭髪や皮膚に付着したでしょうが(避難所のサーベイで汚染が明らかになった人もいる)、それらのガンマ線による被ばくも皮膚ベータ線量も試算の対象にはなっていません。

線量低減係数(建物遮蔽係数)の疑問

231213senryosuikei__03

線量低減係数(建あ物遮蔽係数)が、3月15日を境に係数が変っているが、2号機は3月15日にベントを開始している。その直後に爆発音がしサプレッション・プールが破損したらしいと東電が発表しています。3月21日 4時頃 – 5時半頃、茨城県北東部(日立市)から茨城県東部(鉾田市にかけて、再び高濃度放射線量の南下が観測され、鉾田市では、5時30分に最大2.908マイクロシーベルト/時が観測されています。

つまり、3月21日までプルームが通過した可能性がありますが、当然建物の中にも侵入するので、線量低減係数は3月14日以前と同じにするべきでしょう。

「IAEAで設定された値」とは表E4のことだと思われますが、この遮蔽係数は「表面に沈着した放射性物質について」示したものであり、建物の中が汚染されていれば、この係数をそのまま用いることはできません。少なくとも、「代表的な範囲」のMAX値を用いるべきでしょう。実際、簡易測定器で測った家の中でも大して線量率は下がらなかったと書かれているサイトもあります。まして屋根が汚染されていれば、天井方向からの放射線による被曝が多くなるはずですが、推計ではそうしたことは考慮されていません。

Capt1

推計の13,14ページのモデルケースの詳細には()内に低減係数が書かれていますが、ほとんどが0.4とされています。さいたまスーパーアリーナの0.1は納得できるとして、ビッグパレットふくしまが同じ0.1とは、どうにも不可解です。


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実効線量への換算係数

231213senryosuikei__09

周辺線量当量から実効線量への換算係数は、核種ごとのガンマ線フルエンスや放出率を考慮して、ICRP Publ.74の式にしたがって計算するとしている。そして「安全側」の換算係数として0.6を採用している。しかしこの推計では照射ジオメトリーとしてどれを採用したのかを明らかにしていない。照射ジオメトリーとは、人体にどの方向から放射線が入射したかによって臓器への影響が異なるので、それをいくつかのパターとして近似したものである。ICRP Publ.74には次のような照射ジオメトリーが記載されている。

  1. 20111216132101759
    AP:前方-後方ジオメトリー  身体の長軸と直角の方向から、放射線が体の前面に入射する
  2. PA:後方-前方ジオメトリー 身体の長軸と直角の方向から、放射線が体の背面に入射する
  3. LAT:側方ジオメトリー  同じく体の片方の側面から入射する。右⇒左(RLAT)、左⇒右(LLAT)と区別することもある
  4. ROT:回転ジオメトリー  体の長軸の周りに均等に放射線が入射する。広く広がった面線源からの照射(環境汚染)の近似と見なしうる。
  5. ISO:等方ジオメトリー  単位立体角の粒子フルエンスが方向に依存しない放射線場。放射性ガスの大きな雲中に人体が浮遊しているような場合。

光子エネルギー(ガンマ線エネルギー)と実効線量との関係をICRP74では以下のように記載しています。(これは単位空気カーマあたりであるので、数値は違うだろうが、適当な図がないので)

Img

Img_0002 例えばセシウム-137の代表的エネルギー0.6MeVを例にとれば、RLAT=0.600からAP=1.024と2倍近くも違う。換算係数もこれに対応して異なるはずである。

今回の推計にはROTジオメトリーが適当であろうと考えられるが、放医研の資料にはどのジオメトリーを採用したかの記載がありません。仮にISOジオメトリーを採用していたのであれば、ROTジオメトリーとでは0.6MeV付近では約1.2倍違うので、0.72程度の換算係数となると思われます。

いずれにしろ、どのジオメトリーで推計したのかを明らかにしてもらいたい。

このように、いくつかの係数がいずれも被ばく線量をより小さくするように採用しているのではないかという疑問がつきません。

  • 難しげな式を持ち出してガンマ線のエネルギーごとの寄与を詳細に計算しています。
    (マイクロメータで測って)
  • 建物による線量低減係数をちょっと小さめにして、3/15~3.21のプルームは過小評価
    (チョークで線を引き)
  • 換算係数が小さくなるようなジオメトリーを採用する
    (斧でぶった切る)

マーフィーの法則どおりに推計をしているのではないかと、疑っています。

被ばく線量の正確な計算は所詮は不可能なのです。何らかの推定、仮定を設けて計算せざるを得ません。外部被ばくですらこのようですから、内部被ばくの評価などもっといい加減なものです。しかし、いったん数値として公にされると、その数値が一人歩きします。相当幅のある推定値だということが忘れ去られます。今回の推計も、0.5~2.0倍の範囲で考えておくべき値であろうと思います。つまり19mSvは9.5~38mSvまでの範囲での、ある仮定に基づいた計算値である。このように考えておくべきものでしょう。

広島・長崎の被爆者の被ばく線量を計算した計算推定方式が、T65D、DS86、DS02と変更されてきました。しかし、この推定式が被爆者認定の裁判でも有力な証拠として、入市被爆者や遠距離被爆者に被爆者手帳を交付しない根拠とされたのです。放医研のアルゴリズムによるこの推計が、福島原発事故による被ばく線量評価として公のものとされるならば、福島県民の健康への影響とその補償に関して広島・長崎の原爆被爆者と同じ事態にならないとも限りません。

放医研のこの推計やアルゴリズムの詳細な内容をオープンにさせる必要があります。


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