ストロンチウム90は膵臓がんを発症させる

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人間と環境への低レベル放射能の脅威―福島原発放射能汚染を考えるために人間と環境への低レベル放射能の脅威』には、米ソの過去の大気圏核実験の降下物、いわゆる死の灰と日本の子どものがん死亡率との相関関係を指摘しています。もちろん因果関係があるとは断言できません。

翻訳者の肥田舜太郎医師も次のように訳注を付けています。

訳注
* 1  日本における 2009年の乳児死亡数(対10万)は約2,800人であり、主な死因は先天奇形、染色体異常、呼吸障害、血管障害、乳児突然死症候群などである (2009年厚生労働省人口動態統計年報)。 自然流産は全妊娠の1O~15% とされ、その原因は胎児(受精卵)にある場合と母体にある場合とがある。大部分が胎児に問題があるとされ、流産した胎児の60~80% に染色体異常が認められているが、分娩時には0.6%程度になっている 。

*2  厚生労働省の人口動態統計によれば、小児ガン罹患率は、70年代から2000年代にいたるまで変化しておらず、すなわち戦前に比べ、6倍高い率が継続されている。5歳以上の子供の病死原因の第一位ががんであり、年間に2,000~2,500人の子供ががんと診断され、多くの幼い命が失われているが、その診断、治療の進歩の結果、治る可能性が高くなった。ただし、原因はほとんど不明なため、予防は困難である。

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この本の著者であるスターングラス博士のインタビュー記事があります。そこでストロンチウム90と膵臓がんの関係について重要な指摘をされています。

S博士「ついでに、もう一つ重大な話をしよう。ストロンチウム90から出来るのが、イットリウム90だ。これは骨じゃなくて、すい臓に集中する。すい臓というのは、糖尿をおさえるホルモン、インスリンを分泌しているから、ここに異常が出ると糖尿病になる。世界中で、糖尿病が急増しているのは知ってるね。日本は、すでに人口の割合から言えば、アメリカの二倍もいる。そのアメリカだって、イギリスより率が高いのだ。日本では、戦後から現在にかけて、すい臓がんが12倍にもふくれあがっている。50年代の終わりにドイツの動物実験で発見されたのが、ストロンチウム90が電子を放出してイットリウム90になると、骨から肺、心臓、生殖器などに移動するのだが、すい臓に最も高い集中見られたのだ。インスリンがうまく生産されないようになって、血糖値が上がってしまうのだ。今までは放射能が糖尿病と繋がっているなんてまったく認知されていないのだ。これで分かっただろう、国際放射線防護委員会(ICRP)は、当初、放射能の影響として、特定のがんと奇形児くらいしか認めなかったのだ。未熟児、乳児の死亡や、肺、心臓、すい臓、これらの部位への影響はすべて無視されてきたのだ。」

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上は国立がん研究センターのデータですが、確かに膵臓がんは突出して増加しています。1958以降のデータですが、縦軸は対数の方対数グラフです。

ストロンチウム90(Sr-90)は骨に蓄積しますが、その娘核種であるイットリウム90(Y-90)は膵臓に高濃度に蓄積されます。実は先の横浜でのストロンチウム検出騒動でも報じられたように、ストロンチウム90の測定は非常に手間がかかるものであり、イットリウム90からのベータ線が高いエネルギーを持っているので、そのエネルギーを測定してストロンチウム90の存在量を計算するのです。ストロンチウムが怖いというのは、ベータ壊変の結果できる娘核種のイットリウム90による影響も大きいのです。ストロンチウムの半減期は29年であり、1000分の1になるには300年かかります。イットリウム90の半減期は64時間ですが、ストロンチウム90から耐えず生成されるので、放射平衡、つまり常に一定量が体内に存在するのです。結局、一生涯イットリウム90による膵臓がんへの被ばくが続くことになります。

純粋なSr-90は初期にはY-90を殆ど含まないが次第に増加し1ヶ月程度で放射平衡に達し、約3900分の1のY-90を定常的に含むようになる。Y-90のβ崩壊エネルギーは2279.783±1.619 keVと、Sr-90の545.908±1.406 keVよりもかなり高く、より透過性の高いβ線を放射し危険性も高い。その透過力は1cm厚さの水を通す程度であり、体内に取り込まれると充分に細胞を損傷し得る。

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ストロンチウム90によってナチュラル・キラー細胞が非活性化されて、免疫力が弱くなったところへ、さらにイットリウム90によって膵臓がん細胞ががん化する、というメカニズムがありうるわけです。

膵臓がんが右肩上がりに増えているのは、食事の欧米化が原因だとされていますが、この主張とても確かな証拠があるわけではありません。戦前と戦後の膵臓中のイットリウムの量が分かれば傍証にはなるのでしょうが、そのようなデータはありません。ですからあくまでも「仮説」の域を出ないわけですが、疫学データの多くはそうしたものでしょう。相関関係から因果関係を証明することは、いつの場合も難しいものです。

皮肉なことに、このイットリウム90は放射線療法に用いられています。半減期が64時間と短く、モノクローナル抗体などの分子に結合させることができるので、がん細胞などの体内の標的を探し出して、それに結合させることが可能となるのです。それほど強力なイットリウム90が膵臓にあれば、膵臓がんを発症するというのも納得できるのではないでしょうか。


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