NHKがICRP基準の欺瞞性を検証!
昨夜の、NHK 追跡!真相ファイル「低線量被ばく揺らぐ国際基準ICRP」は見応えがありました。28分の番組という制約の中で、核心にズバッと切り込んでいました。
ICRP勧告では100mSv以下の低線量被ばくにおけるがん死リスクを半分にしている。それに根拠のないことが元ICRP委員が取材に応じて証言したのです。このこと自体は、ECRR勧告でも、小出裕章氏らのかねてからの主張でも論じられていたことです。線量・線量率効果係数(DDREF)という係数を導入しているのですが、私のブログでも「中川恵一 × 近藤誠 (2)」で言及しています。
DDREF(線量・線量率効果係数)は、ICRPが根拠もなしに「低線量域ではがんになる確率は半分で良いだろう」と持ち出した仮定である。無理矢理値切っているのであり直線仮説を採用するという趣旨に反する
番組は低線量被ばくでも、特に内部被ばくにおいてはICRPがいうがん死リスクよりもはるかに高い確率で発がん、がん死するとの主張が貫かれています。チェルノブイリ事故の放射能降下物による汚染が起きたスウェーデンの例ではトンデル博士の研究を紹介していました。そしてトナカイの肉などを通じた内部汚染により、ICRP基準では説明できないような大きながんの発症が起きているのです。これなどもECRR勧告やクリス・バズビー氏らによって主張されてきたことです。
ECRR は2003年に報告書を出した。あくる年の 2004年、スウェーデンのトンデル博士が新たなモデルを発表した。チェルノブイリにより、スウェーデン北部の町で1キロ平方メートルあたりのセシウムのベクレル数が百キロベクレルの場所で、11%のガンの増加があったというのである。
この数値を見ると、ICRPは600倍もの過小評価を行っていたことがわかる。この数値とほぼ同等のものが、前年に出されたECRRの2003年報告によっても言明されていたのである。
欧州では小児白血病も観察されている。そのデータからも、ICRPはリスクを500-2000倍も過小評価しているのがわかる
神戸大学大学院・山内知也教授の「ECRRとICRPそれぞれの勧告について」では次のように言及しています。
いくつかの切り口はあると思うが、最も分かりやすいのがスウェーデン北部で取り組まれたチェルノブイル原発事故後の疫学調査に対する対応において両者の違いが端的に現れている。
その疫学調査はマーチン・トンデル氏によるもので、1988年から1996年までの期間に小さな地域コミュニティー毎のガン発症率をセシウムCs-137の汚染の測定レベルとの関係において調べたものであった。それは、同国だからこそ出来た調査でもある。結果は100 kBq/m^2の汚染当り11%増のガン発症率が検出されている。このレベルの土壌汚染がもたらす年間の被ばく線量は3.4 mSv程度であり、ICRPのいう0.05 /Svというガンのリスク係数では到底説明のつく結果ではなかった。ECRRはこの疫学調査が自らの被ばくモデルの正しさを支持する証拠だと主張している一方で、ICRPではこの論文を検討した形跡が認められない。おそらく、結果に対して被ばく線量が低すぎるという理由で、チェルノブイル原発事故による放射性降下物の影響ではあり得ないと考えていると思われる。
結果に対して線量が低すぎるので被ばくの影響ではないという議論は、セラフィールド再処理工場周辺の小児白血病の多発や、ベラルーシにおけるガン発生率の増加に対しても、劣化ウラン弾が退役軍人や周辺の住民にもたらしている影響に対しても行われてきているものである。すなわち、ICRPの理論によれば低線量被ばく後にある疾患が発症すると、その原因は放射線によるものではないと結論される。その一方で、ECRRの理論によれば新しい結果が出るたびにそれは自らの理論の正しさを示す証拠になる。
「被ばく線量(実効線量)は20mSv以下だから、将来もがんの増加はないだろう」これはこの前の記事で書いたように、中川恵一氏らの思考方法です。多くの放医研や放影協に属する御用学者らの言っていることも「ICRP基準ではがんが増加するはずがない。だから福島でもがんは増えない」と、逆立ちした主張です。
日本ではICRPは科学者の自主的な中立的組織であり、その勧告は科学的であり信頼できる、との認識が一般的です。しかし、番組に登場した元ICRP委員らの証言は「ICRPは政策的決定をする機関である」と断定していました。さらに、低線量被ばくのリスクは上げるべきであるとの主張を抑えるために、あえて低線量ではリスクが低くなると主張したのだと証言しています。つまり、現在の直線仮説すらも政治的な妥協の産物であり、更にその上、DDREFを持ち出してリスクを半分に値切っているのです。この根拠について彼らは「科学的な根拠はないが、まぁこんなものでいいだろう」と言い切っています。
番組での論点を整理すると、
- 低線量被ばくのリスクは根拠なしに半分にされている
- 更に放射線作業に従事する場合のリスクは20%小さくされている
- なぜなら、原発作業員の安全を考慮すると原発の運転はできないからだ
- スウェーデン北部はチェルノブイリ事故によるセシウムで年間0.2mSv。事故前に比べ年34%がんリスクが上昇。食品基準は日本の暫定規制値よりも低い300Bq/kgだった
- アメリカイリノイ州の原発周辺で脳腫瘍・白血病他の州に比べて30%増。小児がんは2倍に。放射性トリチウムによる地下水汚染。
- 福島の現状を受けて、ICRPが低線量被ばくリスクの見直しを始めている。多くの委員から現状への疑問が出されている。
放射線影響協会、放射線医学総合研究所、国立がん研究センター、これらをはじめとする医学関係の原子力ムラの先生方よ。ICRP勧告なんぞは、所詮はICRPに資金を出している原発推進団体の意向を受けて作成されているだけであり、「科学的」とは無縁のものなのです。
「放射線を正しく怖がりましょう」と放医研の理事長は言いますが、ICRPの委員だった人物が「根拠なく決めた」と証言している基準を後生大事にしていて、どうして正しく怖がることができるのでしょうか。
もうそろそろICRP勧告の呪縛から抜け出すべき時ではないのかね。
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スウェーデン北部ではチェルノブイリ事故による放射性セシウムによる年間被ばく線量が0.2mSvとされる地域でがんの発症率が34%以上増加している。
食品の規制値を300Bq/kgに制限しても、この結果である。日本の暫定規制値500Bq/kgが安全なはずがない。
被ばく線量10mSv以下でもがん発症のリスクが増加しているとトンデル博士。
イリノイ州にある3つの原発周辺では水道水へのトリチウム汚染が深刻。もちろん日本の原発も日常的にトリチウムなどの核種を放出している。
脳腫瘍・白血病が30%以上増加、特に小児がんは2倍になった
これがICRP委員の本音。科学低根拠はない。原発推進のために「どれだけの人に死んでいただくか」を決定する機関だからだ。
10月のICRP国際会議は紛糾したようだ。さすがに福島原発事故に置ける日本政府の対応を見ていれば、彼らなりに今後の原発推進に悪影響が出ると心配したのだろう。
広島・長崎の非学者の線量が実際は少ないことが明らかになり、その結果がんのリスクは2倍になった。しかし、低線量ではそのままに据え置かれた。
そうしなければ核兵器開発・原発運転に市況が出るからだ。さらに放射線に従事する労働者の被ばくによるリスクは20%引き下げられた。
科学的根拠はなかったと明言(ICRP名誉委員 チャールズ・マインホールドド氏)
下のように、ICRPに資金を出しているパトロンの要求に忠実に従っているだけの組織
脳腫瘍になって奇跡的に生き延びたセーラさんの言葉は重い。福島・日本の子どもたちの未来の姿にならないことを願うばかりだ。