ペプチドワクチンのまとめ

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NHKのあさイチで紹介されるなど、ペプチドワクチンが話題になっています。しかし、オンコセラピー・サイエンスのワクチンだけでもいくつもの種類があり、混乱します。自分用にと現時点でもまとめをしてみました。

まず、下記にがんペプチドワクチンに関する参考記事をリンクしておきます。
ロハス・メディカルの、がん研有明病院消化器内科ペプチドワクチン療法担当副部長の石井浩先生が監修された「がん⑨ がんワクチンなぜ効くのか」はがんワクチン一般の知識をわかりやすく、問題点も指摘した上で解説しています。まずはこれを読んで全体像を把握します。

など、免疫療法に関する情報が網羅されています。

中村祐輔教授が登場している

も参考になります。

WT1ワクチンに関しては久留米大学がんワクチンセンターのサイトがあります。ここの

がんワクチンに否定的な見解

以上は(がん)ペプチドワクチン療法に好意的な評価をしているサイトですが、(たぶん)唯一がんワクチンに否定的な見解を述べているのが、NK細胞によるがん治療を行なっているリンパ球バンク(株)の代表取締役社長 藤井真則さんのブログ「がん治療と免疫」でしょう。

藤井さんのブログにもたくさんの情報があるので、検索の手間を省くために「がんワクチン、WT1、樹状細胞療法」のキーワードで検索した結果をリンクしておきます。このような批判的意見も知っておくことが役にたちます。

藤井さんのブログを読む際には、「WT1または東大(OTS)のがんペプチドワクチン療法=樹状細胞療法の一種」(樹状細胞を体外に取り出さないだけの違い)であることを理解しておけば、より分かりやすいはずです。樹状細胞は次のような役割を果たしています。

体に侵入した病原体などの抗原は、樹状細胞等の免疫細胞によって発見されます。樹状細胞は抗原に出くわすと、食いついて丸呑みにし、小さく分解します。細菌などの病原体も人間の体と同じで、要はタンパク質でできていますが、タンパク質はもともとアミノが数百~数千個、長くつながったもの。それが細かく断片化されると、アミノ酸8~10個の短い鎖(=ペプチド)ができます。
そのペプチドを、樹状細胞は自身の表面上に提示します。するとようやく、細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)等のリンパ球が抗原の存在に気づき、その抗原特異的に攻撃を始める、というのが一連の流れです。

がんペプチドワクチン療法では、体に注射したがん抗原ペプチドをうまいこと樹状細胞が見つけて食べ、抗原提示するかどうかは、出たとこ勝負でした。
それに対し、樹状細胞ワクチン療法では、まず、患者自身の樹状細胞を血液中からいったん取り出して、患者自身のがん組織や、がん細胞から調製したがん抗原タンパク質と混ぜ、取り込ませます。そうしてがん抗原ペプチドを提示させた状態で、その樹状細胞を再び体の中に戻すのです。

藤井さんは、原理的に樹状細胞療法なんて驚くような効果があるはずがないよ、と一刀両断にしています。

がん細胞が増殖しているんですから、がんの情報を体に教える意味は、やっぱりないのです。 がん細胞は沢山いるんですから。沢山いるから、困っているんですから。がん細胞情報は、ゴロゴロ転がってるのです。

問題は、がん細胞を攻撃すべき免疫力が、がんの勢いに押されている、ことにあります。がん細胞が沢山いても攻撃しない免疫システムに、がん細胞の情報を教えて、何になるのでしょうか。
がん患者さんの体内では、NK細胞も、がん細胞を攻撃するパワーが落ちている状態、活性が下がった状態にあります。

ANK療法は、活性を高めたNK細胞が直接がんを攻撃する第一段と、体内の免疫システムを活性化する第二段と、二段階の作用をもっています。 第二段の作用で、免疫を強く刺激するからこそ、熱が出るのです。
樹状細胞も、がんワクチンも、「他の物を混ぜない限り」熱は出ません。免疫刺激が弱い、ということです。

このあたりの考えは、中村祐輔教授もよく知っていて、だからがんペプチドワクチンは手術後の再発予防などの方が効果があるはずだ、と言っているわけです。ペプチドワクチンと同時に免疫抑制を抑えるアジュバントを投与します。このアジュバントの選択もペプチドワクチンの効果を左右する大きな要因です。

膵臓がんのペプチドワクチン

ともあれ、いやが上にも期待の膨らむペプチドワクチンですが、現状での膵臓がんのペプチドワクチンの開発状況、ワクチンの種類などを、オンコセラピー・サイエンスの「開発パイプライン」ページを参考にしてまとめておきます。

201202_2

OTS102(エルパモチド)
あさイチで取り上げられたのはこのペプチドワクチンです。主要評価項目、副次評価項目などの最終解析を実施中で、今年の秋頃には認証されるだろうと言われています。予定よりも遅れたのは、予想以上に患者の生存期間が延びてしまった結果、治験実施計画書(プロトコール)で定めた全ての患者の観察期間が終了しなかったからだと、株式関連のサイトでは噂になっていました。新生血管阻害作用を期待したがんワクチンです。

腫瘍の継続的な増殖や転移には,血管新生が重要な役割を果たしています。その血管新生を促進する最も強力な物質のひとつが血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)であり,その主要なシグナル伝達を担う主要な受容体は血管内皮増殖因子受容体(vascular endothelial growth factor receptor:VEGFR)-2/キナーゼドメイン受容体(kinase domain receptor:KDR)であることが知られています。 KDRを特異的に認識する細胞傷害性T細胞(cytotoxic Tlymphocyte:CTL)を誘導できる数種類のHLA-A*2402拘束性エピトープペプチドのうち,最も強いCTL誘導能をもつペプチドがKDR169です。

本治験で用いるOTS102は有効成分としてKDR169を含有する注射剤です。OTS102をHLA-A*2402を有する癌患者に皮下投与することにより,有効成分であるKDR169が抗原提示細胞のHLAに結合しCD8陽性細胞に提示され,これを認識したT細胞が活性化されてKDR特異的CTLが誘導されます。誘導されたCTLはKDRを発現している腫瘍新生血管内皮細胞を特異的に傷害し,これにより抗腫瘍効果を示します。

OCV-101(旧OTS11101、第Ⅱ相臨床試験より治験薬コード名変更)
腫瘍新生血管内皮細胞を標的とするがんワクチンです。第Ⅱ相試験は既に終了しています。

OCV-C01
複数のペプチドを混合して用いています。米国では10種類以上のペプチドを混ぜたワクチンの研究も行われているそうですから、日本が進んでいるわけではありません。先頃第Ⅲ相試験を開始するとニュースになりました。国内40施設で4月から臨床試験が開始されます。実施施設については現段階では明らかにされておりません。

OCV-C01は、ゲノム包括的解析などにより見出された、正常組織にはほとんど発現せず、膵臓がんに高頻度に高発現する腫瘍抗原と腫瘍新生血管内皮細胞を標的とするものです。
OCV-C01は、膵臓がん細胞や腫瘍新生血管を障害することにより膵臓がんの増殖・進展を抑制することが期待される複数のペプチドワクチンを含む製剤です。

OCV-105  (OCV-C01に変更?)
Ocv105
このペプチドワクチンは上の図には見当たりません。しかし、2011年10月の開発パイプライン(右図)には第Ⅰ相試験中とでておりました。現在でも、UMIN(臨床試験登録情報)のサイトには「参加者募集終了-試験継続中」となっています。2011年8月には千葉徳州会病院など4施設で臨床試験をすると発表されていたはずです。

昨年12月5日付でオンコセラピー・サイエンスから「がんワクチン療法剤 OCV-105 第Ⅰ相臨床試験(治験)の進捗に関するお知らせ」が出されており、

がんワクチン療法剤 OCV-105 第Ⅰ相臨床試験(治験)の進捗に関するお知らせ

当社が大塚製薬株式会社と契約を締結し、共同で開発を進めておりますがんワクチン療法剤OCV-105の膵臓がんに対する第Ⅰ相臨床試験(治験)において、治験実施計画書で定める安全性に関する評価が終了し、安全性が確認できましたのでお知らせいたします。
OCV-105は、正常組織ではほとんど発現せず、膵臓がんに高頻度に高発現しております腫瘍抗原を標的とするがんワクチン療法剤です。膵臓がん細胞を直接的に障害する細胞障害性T細胞を誘導・活性化することにより膵臓がんの増殖・進展を抑制することが期待されます。

最新の開発パイプラインから漏れている理由がわかりません。しかし、二つの図を見比べると、どうやら腫瘍抗原ペプチドだけだったOCV-105に、腫瘍新生血管を阻害するペプチドを混合してOCV-C01としたのではないでしょうか。インターネット上では情報を見つけることができませんでしたし、そのようなニュースが流れた記憶もありませんが、OCV-C01に関しては第Ⅰ相、第Ⅱ相臨床試験の情報がなくて、いきなり第Ⅲ相試験の発表だったこともこの予想を裏付けているようです。

 

結局、オンコセラピー・サイエンスの膵臓がん用ペプチドワクチンは、標的の種類によって次の3種類になります。

  1. OTS102(エルパモチド):新生血管に特異的なタンパク質を標的とする。
  2. OCV-101:腫瘍新生血管内皮細胞を標的とする。
  3. OCV-C01:腫瘍抗原と腫瘍新生血管内皮細胞および新生血管に特異的なタンパク質を標的とする。OTS102,OCV-101+OCV-105の三種混合らしい。

これらの情報だけからは、OCV-C01が最も期待できそうな気がしてきますが、さてどういう結果になるでしょうか。


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ペプチドワクチンのまとめ” に対して1件のコメントがあります。

  1. キノシタ より:

    んぱぱん様
    例えば久留米大学のペプチドワクチン事務局の「参加基準」を見ましても、
    2.日常生活の中で家事や軽い仕事を行うことが可能であり、当院まで通院可能な体調であること
    4. 3ヶ月以上の生存が期待できること
    となっています。他の医療機関でもほとんど同じ基準が要求されています。
    残念ながら通院ができなければ治験を受けることはできないと思います。
    家族が代わってワクチンを投与することなど、もちろんできません。
    念のために、主治医に相談されたら如何でしょうか。

  2. んぱぱん より:

    はじめて投稿させていただきます。
    私の父が1ヶ月前に膵癌stageⅣと診断されました。
    現在、大学病院で化学療法と放射線治療を行なっているのですが、ペプチドワクチンを是非受けさせたいと考えています。
    しかし、父は主にベット上で横になっている事が多く、ましてや遠くの病院への外来受診などできません。そのような場合、家族が代わりに受診して治療がうけられるような事をやっている施設はありますでしょうか?教えていただければ幸いです。
    よろしくお願い致します

  3. キノシタ より:

    匿名希望さん。情報ありがとうございました。コメントに沿って訂正しました。
    ご家族のカクテルワクチンの効果は如何ですか? 良い方向に向かわれることを願っております。
    治療成績に関して、差し障りのない範囲でコメントをいただければ嬉しいです。参考にさせていただきます。

  4. 匿名希望 より:

    前略、いつも拝見しています。
    家族が東大系ペプチドワクチン療法治験を受けております。
    その関係で東大医科学研究所の関係者の方とお話を
    させていただく機会があり、以下の様に言われました。
    『すい臓がんに関する自分たちのペプチドワクチンは三種。
    あなたの御家族のは、その三種全てを混合したものです』
    すなわち、『OTS-102, OCV-101, OCV-105』の三種を
    混合したものがOCV-C01と思われます。
    ので、家族が受けているこの混合(カクテル)ワクチンの某大学病院の治験は第二相治験(この治験はもう数年前より実施していたようです)ですので、
    その混合ワクチンをOCV-C01と名称を新たにし春より第三相治験に進むのだと推測します。

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