食品の新規制値

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4月1日から食品の新規制値が施行されました。一部の食品を除いて100Bq/kgとなります。正確には、放射性セシウム(Cs-134+Cs-137)による食品からの被ばくに対する年間の許容線量を1mSvとなるように新規制値(Bq/kg)を算出したものです。ですから、放射性セシウム以外の核種による被ばくも外部被ばくも考慮されていない数字です。(詳細は「食品中の放射性物質の新たな基準値について」を参照)

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マスコミなどでは「暫定規制値に比べて相当厳しくなった」との論調が主ですが、しかし考えて欲しい。3.11以前は食品の放射線量は0.05Bq/kgのオーダーであったのだから、2000倍に汚染された食物を食べなければならないのです。

この新規制値は「現存被ばく状況」における基準であり、「計画被ばく状況」におけるものではないとしています。原発が順調に稼働しているときの「計画被ばく」ではなく、事故が起きてしかたがないから設けた「現存被ばく状況」だということですが、放射線審議会の議事録を読んでみても、厚生労働省の担当官も委員たちも混乱している様子が分かります。放射線審議会の議事録と参考資料で、121回から126回のものが該当します。その中から121回の部分を抜き出してみると

【下委員】  資料第121-3-2号の8ページについて、「(2)緊急事態における措置」と「(3)適用時期」の説明があった。今回の諮問事項は、いわゆる通常時に適用する基準であるのか。
【尾川(厚生労働省)】  そうである。
【下委員】  そうすると、これまでの暫定規制値は一体どのような位置づけであったのか。それは、緊急時に相当するものと考えてよいのか。
【尾川(厚生労働省)】  そのように考えている。
【下委員】  法律が緊急時を想定していなかったために暫定規制値が出たと思うが、ここで言っている改正というのは、従前は通常時において放射性物質の考慮がなかったから今回の改正で放射性物質を新たに考慮するという解釈で良いか。
【尾川(厚生労働省)】  これまで無かったものを新たに定めるということである。
【下委員】  現行の暫定規制値というのは一体どのような位置づけなのか、そこが明快になっていない状況で、このような議論はできるのか。
【甲斐委員】  下委員の質問に対する回答に、「通常時」という回答があった。しかしながら、今の説明は明らかに現在の事故後の対応のための考え方である。これは緊急事後の対応であり、放射線防護分野では現存被ばく状況としているが、これは事故後の復旧に向けた対応がベースになっているものである。
 従来の暫定基準は、モニタリングのための基準であったので事故時の基準であったわけであり、事故時の目安だった。そういう意味では、万が一今般の事故以外の事故が発生した場合には、そういったものが全く無効になるのか。
【森口(厚生労働省)】  報告書の中にも記述されているが、今般の事故の対応を受け、事故後1年目以後における管理のために策定された食品の規制値である。例えば別の事故が起きて、違う汚染が起こったということになれば、管理対象とすべき核種からもう一度考え直さないといけないと思う。
【甲斐委員】  その場合、今後の事故に対応する場合に、これまでの暫定基準が有効というわけではなくて、ゼロから考え直すということか。
【森口(厚生労働省)】  また暫定規制値に戻すこともあると思うが、原子力安全委員会が現在の飲食物摂取制限の指標を今後どうしていくのかといった点について、正確に把握していない。
【丹羽会長】  今回の状況は、放射線防護の考え方で言う現存被ばく状況であり、計画被ばく状況ではないという認識で良いか。
【森口(厚生労働省)】  現存被ばく状況であり、計画被ばく状況ではない。

事務方の担当官が「通常時」と言ったかと思うと、別の担当官(森口)が「現存被ばく状況」だと言い直しています。しかも、新たに事故が起きれば見直して、国民には際限なく被ばくしてもらうという考えのようですが、もう一度事故が起きれば「暫定規制値」などと言うよりも、日本は”おしまい”です。丹羽会長のマスコミに対する八つ当たりもおもしろい。

内部被曝をシーベルトで表して、がんのリスクを計算することには、科学的根拠は乏しいのです。石炭ストーブで暖をとるときに受け取るエネルギーと、その石炭を口に入れて受け取るエネルギーが同じだといっても、人体に対するダメージは決定的に違います。指に20ミリの裂傷を負って血がどくどくと流れ出しているとき、20本の指で平均すれば傷の長さは2mmだというバカな計算は誰もしません。しかしICRPが内部被曝において放射線から受けたエネルギーを臓器の重さで平均化しているのは、まさにこのばかげたことをやっているのです。

100Bq/kgの食品で1mSvという彼らの説明を信用してはいけません。内部被曝ではシーベルトはまやかしであり、無意味です。

実際にはICRP勧告に基づいて施行された「平成十二年科学技術庁告示第五号(放射線を放出する同位元素の数量等)」の別表第一の核種ごとの第3欄「経口摂取した場合の実効線量係数(mSv/Bq)」に従って計算するのですが、Cs-137では1.3×10^-5であり、Cs-134では1.9×10^-5を更に臓器の重さで割って平均する。このような数値を、アルファ線やベータ線のように細胞のごく近くにしかエネルギーを与えない放射線に適用しても意味がないのです。

ICRPの許容線量の基本原則は次のように変遷しています。

  • 1954年:可能な限り低く(TO THE LOWEST REVEL AS POSSIBLE)
  • 1956年:実現可能な限り低く(AS LOW AS PRACTICABLE)
  • 1965年:「経済的、社会的考慮を計算に入れ」現実的に達成できる範囲で低く(AS LOW AS READILY ACHIEVABLE)
  • 1973年:合理的に達成できる範囲で低く(AS LOW AS REASONABLY ACHIEVABLE)

初期には被ばくをできるだけ避けるという、ICRPとしての本来の役割を果たそうという原則でしたが、ご覧のように後退の一途です。この次は「可能な限り安上がりに」となる以外にはないでしょう。現実に、原発はその方向でやってきて事故を起こしたのです。

リスク・ベネフィット論を導入してこのような変遷してきたのですが、福島原発事故が示しているように、利益を受ける者と被害を受ける人とは別なのだから、リスク・ベネフィット論は破綻しているのです。

すべての食品にベクレル表示をして、消費者が自分の価値観で選択できるようにするべきでしょう。子どもたちには検出限界以下の食べ物を与えるべきです。


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