ECRR2010年勧告の概要・和訳完成

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放射線被ばくによる健康影響とリスク評価
ECRR(欧州放射線リスク委員会)2010年勧告の翻訳は、こちらの美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会にアップされているが、このほど山内和也氏の監修の元、書籍としても出版された。ただ、専門用語も多く一般に理解することが難しいとの指摘もあり、勧告の概要を矢ヶ崎克馬氏の解説・監訳でQ&A方式で翻訳し直したものが公表された。

市民版ECRR2010勧告の概要―矢ヶ崎克馬解説・監訳

26日の毎日新聞福井版には、福井県チェルノブイリ調査団の視察報告として「調査団によると、現場周辺では毎時数マイクロシーベルトの高い放射線量を記録。1歳未満の乳児のがん罹患(りかん)率は現在も高く、出産を避ける女性が増えたため子どもの数が激減しているという。」と報道されている。また、同じく広島版には、飯舘村・川俣町の調査をした広島原爆被爆者援護事業団・鎌田七男理事長の話として、

当時4~77歳の15人に、何を食べたかや、事故後にどのような建物で過ごしたかなどを聞き取りし、尿を測定した。事故後54日までの外部被ばくの積算線量の平均は、大人が8・4ミリシーベルト、子どもが5・1ミリシーベルト。尿から放射性ヨウ素が検出されたのは5人、キノコや自家製野菜を食べた人だ。呼吸を通して空気中から取り込んだなら全員から出るはずだから、特に食べ物から入ったと言える。セシウムは微量だが全員から検出された。

とある。国民全員が多かれ少なかれ内部被ばくに曝されている。しかし、あいかわらず政府や御用学者らは内部被ばくを過小に評価して、影響を無視しようとしている。こうしたとき、その理論的根拠となっているICRP勧告の非科学性、欺瞞性を明らかにし、多くの市民に知識を共有することは重要な課題である。「配信にあたって」から一部を抜粋する。

放射線防護にかんする政府の諸施策の矛盾点、電力会社やマスコミの虚偽や虚構を見抜くためにも、このECRRの考え方とリスクモデルを、「市民の立場に立った放射線防護の基本」として理解することが非常に大切だと考えます。

昨年7月来日したECRRのクリス・バズビー博士は、羽田で次のように述べていました。
『先ず最初に知ってほしいのは、ICRPの基準は役に立たないということです。内部被曝によるガン発症数について誤った予測をだすでしょう。ICRPのモデルは1952年に作られました。DNAが発見されたのは、翌1953年です。

ICRPは、原子爆弾による健康への影響を調べるために設立されました。第二次世界大戦後、大量の核兵器が作られプルトニウムやウランなど、自然界にはないものを世界中に撒き散らしました。このためICRPは、すぐ対策を考えなければなりませんでした。そこで彼らは、物理学に基づいたアプローチをとりました。物理学者は、数学的方程式を使ってシンプルな形にまとめるのが得意です。しかし、人間について方程式で解くのは複雑すぎます。

せっかくだから、解説本文から(5)-質問⑦を取り上げて、御用学者らの見解と比較してみよう。

5、本委員会は、放射線被曝の放射線源について考察する。新たな同位体の被曝影響を自然放射線による被曝と比較して規格化する試みには注意するよう勧告する。新たな同位体の被曝とは、ストロンチウム90 やプルトニウム239 のような人工核種による内部被曝だけではなく、核種のマイクロメートルの範囲への凝集(ホットパーティクル)も含まれており、これらはすべて人工核種(プルトニウムなど)および自然核種の形態変化したもの(劣化ウランなど)で構成されている。こうした(註:自然放射能との)比較が、現在は「吸収線量」というICRPの考え方を根拠として行われている。この ICRP の吸収線量概念は、細胞レベルの傷害をもたらす結果を厳密に評価してはいないのである。放射線による外部被曝と内部被曝との比較についても、細胞レベルでの影響が量的に全く異なる(註:内部被曝の線量が桁違いに大きい)可能性があるため、リスクを過小評価する結果を招くと考えられる。

質問⑦:自然放射線と比較してはならないと言っているようですが、ここでは何を勧告しているのですか?ホットパーティクルや吸収線量というコトバも分からないのですが?

矢ヶ崎:自然放射線の線源は、決して多くの放射性原子が集合して放射性微粒子になっている点線源ではありません。例えば、放射性カリウム原子は、自然状態では決して微粒子を構成せず、カリウム原子1 万個を集めるとその中の1 個だけが放射性原子なのです。放射性原子が同じ場所にかたまっていることは決してないのです。
  これは、いわゆる人工放射性原子の状態とは全く異なります。原子炉でつくられる放射性原子や劣化ウラン弾でつくられる酸化物エアロゾールは、ほとんどが微粒子を形成しています。 従って、自然放射性原子(K40 等)から放射される放射線は、他の自然放射性原子(K40 等)から放出される放射線が打撃した同じ場所を、打撃するようなことは無いのです。
  この場合の被曝状況は臓器全体で平均化したものとさほど変わりはないのです。ICRP で算出する方式によって推算が可能なのです。ところが人工の放射性核種はほとんどが集合体(微粒子)を形成し、この微粒子(点線源)から継続して密集した放射線が放出され、この微粒子の周囲には大変高い被曝領域(電離あるいは分子切断が密集している)状態が出現します。散漫な被曝を行う場合とは危険度が全く異なるのです。ICRP では、吸収線量は臓器ごとの単位(あるいは全身)というマクロな単位で、その中に放射線が与えたエネルギーの量だけを計算し、それをその質量で割る(シーベルト単位で与えられる)ものです。繰り返しになりますが、ICRP では局所(ベータ線の場合は半径1センチメートル程度の球内)のリスクは推定できない(無視する)のです。

中川恵一准教授のteam nakagawaのホームページや日本核医学会のサイトでも、人体には常に4000Bqほどのカリウム40があり、自然放射線による内部被ばくの3分の1を占めており、これによる年間の内部被ばくは0.17mSvである。それに比較して食品による内部被ばくは問題にするほどではない、などと主張している。

本当か? カリウム40と比較することは科学的なのか?

4000Bqのカリウム40とは、人体内にはカリウム40の放射性原子が1.6×10^20個存在するということで、人体はおおよそ60兆個(6.0×10^13)の細胞でできているから、細胞1個あたり263万個の放射性カリウム原子がある。すごい数のように見える。しかし、細胞の寿命を平均して30日(260万秒)とすると、1秒で崩壊するカリウム原子が4000個であるので、260万×4000=100億回の崩壊が起きる。

つまり、60兆個の細胞のうち、その寿命の間にカリウム40からの放射線を受ける確率は100億÷60兆=0.00018=0.018%なのである。カリウム40からのベータ線をたまたま受けて細胞のDNAが切断されたとしても、短時間に同じ細胞に次のベータ線が照射されることはほとんどない。二重鎖切断も起きないからDNAは修復される。

一方でハットパーティクルといわれる100ミクロン程度の放射性物質(仮にストロンチウム90としておく)にはやはり100億個ほどの放射性原子が存在する。その放射能が仮に1Bqだとしても、毎秒毎秒1回のベータ線が照射され、それがごく近傍の細胞だけを攻撃する。細胞の寿命ないでは100億回の攻撃を受けるのである。DNAが切断されて、修復する暇もなく次のベータ線が飛んでくる。違いは明かだろう。全身にほぼ均等に分布しているカリウム40と、食物や呼気から吸収された”放射能の塊”を、シーベルトという単位で同じ値になるからといって、同じ影響であるはずがない。

ICRPが臓器全体で平均化することで内部被ばくを小さく見せかけている、というのはこういうことだ。

「内部被ばくを考える市民研究会」のサイトには、他にも多くの参考資料があるので、これもあわせて活用されたい。


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