死を前にして人は何を思うのだろう?

転移したがんの多くは標準治療では治らない。抗がん剤治療も、生活の質(QOL)の維持と延命効果を期待して投与される。しかし、中には例外的に治癒あるいはがんとの共存が長く続く患者がいる。そして彼らの多くは代替療法をおこなっている。

このブログで書いている基本的な方向も、標準治療+代替療法(=統合医療)である。ピンキリの代替療法ならなんでも良いわけではない。そこには私なりの基準がある。

大腸がんステージ4、余命一年

Eテレで放映されている道徳教育番組「オンマイウェイ」。小学高学年から中学生向けの番組である。以前に放送された『死を前にして人は何を思うのだろう?』(オンデマンドで視聴できます)に登場したのは、2014年6月に「大腸がんのステージⅣ、余命1年」の宣告を受けた野中秀訓さん。

医師から告げられた言葉に野中さんは耳をうたがいました。余命は、わずか一年。「いきなり『12か月』といわれたときは、そんなわけはないだろうと。処方箋(しょほうせん)をもらって、部屋をあとにして…。そしたらいきなりなみだが出ましたね。ここで人生終わってしまうのかというくやしさ…」。

腹腔鏡による摘出手術を受けたが、その後のPET検査で多臓器への転移が確認される。肝臓、ウィルヒョーリンパ節、大動脈リンパ節転移していた。手の施しようのない末期がんである。5年生存率は20%弱。

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野中さんが真っ先に考えたのは、残される家族の生活のこと。

私も同じでした。手術できても膵臓がんで長生きしている例は稀であるから。

自分が死ぬことの悩みよりも、妻や子の生活をどうするかが心の多くを占めていた。一家の稼ぎ頭が治らないがんになったときに、皆こう考えるのではないでしょうか。

がんになって、止めたこと、やったこと

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野中 秀訓
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しかし、野中さんのがんは(この本を出版した時点では)、小さくなり治癒に向かっているようだ。もちろんまだ術後2年だから、完治したとか奇跡的に治癒したと言えるわけではない。代替療法だけで効果が出たとも断定できない。抗がん剤は2クールで止めているが、それが劇的に効いたのかもしれない。いずれにしろ、ひとつの例では何も断定はできない。できないが、無視することも正しくはない。

野中さんが実施してきた代替療法。

  1. お祓い(ま、それもいいよね)
  2. ヨガ
  3. 禁酒、早寝
  4. 岩盤浴とマッサージと針
  5. 食事療法
    マクロビ、玄米菜食、ゲルソン療法、星野式、やったがなんか違う。結局は東洋医療の先生の指導で自然食ベースの糖質制限
  6. 水素水(今では効果がないことがはっきりしている)
  7. オーソモレキュラー療法(これも怪しいが・・・)
  8. 低GI(低糖質)食と、大量の栄養剤(サプリメント)摂取、超高濃度ビタミンC点滴

鳥越俊太郎の『がん患者』で、鳥越さんも大腸癌からの他臓器転移だったことをしり、標準治療と並行して、東洋医療の代替療法を受けることにしたそうです。

どれが効果があったのかも、もちろん分かりません。多くの医師は、「代替療法には統計的なエビデンスがない」と言って頭から否定します。『がんに効く生活』のシュレベールも「効果が証明された代替療法は一つもない」と言っています。しかし、シュレベールは、最悪の脳腫瘍から、代替療法と標準治療で25年も生存したのです。

「統計的有意差がない」は「効かない」とは違う

エビデンスがない=統計的有意差がないことは、効果がないのとは違います。標準治療は100人のうち51人に効果がなければならず、49人では駄目なんです。しかしがん患者から見れば、100人で10人に効果があるのなら、希望が持てるのです。この説明は正確ではなく比喩です。より詳しくは、

の記事内で、1978年 New England Journal of Medicine (NEJM) 特別論文に関する部分をご覧ください。

P値と統計的有意差があるなしだけを判断の基準とすることに対して、世界的権威のある医学誌が論文で注意を促しているのです。

野中さんのとった治療法が、他のがん患者にも有効という保証はありません。しかし、転移したがんでも、まだ希望はあるのです。たとえ膵臓がんであっても。

野中さんのブログ「がんになって、止めたこと、やったこと」とSTORYS.JPの「ちょうど1年前に余命12か月宣告を受けた話」を紹介しておきます。彼の病気と闘病の経緯が詳しく書かれています。

(ブログは2018年で更新が止まっていますね。しかし4年は確実に生存していたのでしょう。)

野中さんの著作の紹介文から抜粋。

NHK番組に「死を前にして人は何を思うのだろう?」をテーマに出演した著者・野中秀訓氏。2014年6月 ガン発覚。46歳、サラリーマンを辞めて独立後9年。紆余曲折を経て、会社も軌道に乗り始め、事務所を移転した矢先に突然の腹痛・・・大腸がん、さらには肝臓、ウィルヒョーリンパ節、大動脈リンパ節転移も見つかり「ステージ4」と告知され余命12か月宣告を受ける。

「自分でがんになった責任は、自分で取らなければならない」。

それからわずか328日で劇的に「寛解」したがん生還者(サバイバー)が実践したのは、遺伝子のスイッチを切り替えるための生活習慣の根本的な改善、すなわち超シンプルな「7つの習慣」だった。

がん細胞は増殖する一方だというのが、現在のがん医療の認識ですが、新しいがんのエピジェネティクス理論では、がんが増殖する遺伝子のスイッチをOffすることで、腫瘍が縮小に向かうことはあたりまえに起こりうるという。

 
 

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死を前にして人は何を思うのだろう?” に対して3件のコメントがあります。

  1. キノシタ より:

    foxさん。
    代替医療を否定していた医者が、自分や家族ががんになると、いそいそと代替医療に走る。代替医療のクリニックの前には外車が並んでいる光景。どこかで聞いたことがありますね。
    「絶望の裏には希望がある。」
    いいですね。
    「神は乗り越えられる試練しか与えない」もいい言葉でしょ。私は無神論者ですけど。

  2. Fox より:

    追伸。・・・
    「絶望の裏には希望がある。」、ボクの好きな言葉です。

  3. Fox より:

    こんにちわ。・・
    いつも、とても考えさせられるいいトピックをありがとうございます。
    多くの医師の言うエビデンスがないという言葉は都合のいい詭弁です。なぜなら、病院には代替治療で何が効果があるのかなどというデーターを取る気はない。これから先、何十年たってもそう言い続けるでしょう。しかし、最前線に立っている医師には確かに、ターミナル・ケア(見放した患者)にあったガンが消えている。そういう経験をし、必要は感じている。しかし、病院の方針には合わない。その患者に聞いてもいっぱいやったので何が功を奏したのか分からないといいます。原因は今の医療制度にあると自信は思っています。会社としての病院は国の診療報酬によって成り立っているので、そちらを向いて仕事をします。代替医療とか、まして、免疫療法などはしませんし、関心は持ちません。医師によってはバカにします。医師は日々多忙で一人当たりの患者にかける時間はごくわずかですから、もし、患者が医師からさじを投げられた時は、もしかするとチャンスなのかもしれません。

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