がんのオリゴメタ説

膵臓がんのオリゴメタ

膵臓がんにもオリゴメタ説は考えられるのでしょうか。考えられるとすれば、転移・再発した膵臓がんでも治癒の可能性があります。

オリゴメタ説(少数転移説)正確には(オリゴメタスタシス(oligometastasis)、少数転移するタイプの腫瘍をオリゴ転移型と言います。

膵がんは予後が悪いがんの筆頭だ。しかし中には遠隔転移しにくいがんがいる可能性が強まった。こうしたタイプの膵がんには「その生物学的な特性に応じた独自の治療法が必要」という声があがり始めた。「非手術適応症例には化学療法」だけでよいのか。

と述べる、国立がん研究センター研究所難治がんユニットの谷内田真一氏も岡田医師と同じ問題意識を持っています。

************以後、日経メディカルからの要約**************

谷内田氏が米国留学の経験から学んだのは、一つには膵臓がんで亡くなった患者を死亡直後に解剖すると、15%には転移が認められないという。

2つ目は、膵臓がんの終末像は「局所破壊型」と「全身転移型」の2つに分類できるというものだ。全体の約30%を構成する局所破壊型の多くは遠隔転移の総数が10個以下。一方で残り70%を占める「全身転移型」では、その多くで遠隔転移の総
数が100個以上と桁違いに多い(図1)。

 

3つ目は、たとえ手術ができたとしても75%は再発してしまうという。つまり手術が有効な症例は極めて少ないことを示唆している。

「膵がんは必ずしも1種類の単純ながんではなく、少なくとも2つのタイプに分けることができる。その特性に応じた治療法を考案すべきときに来ている」と谷内田氏は結論づけている。

オリゴメタ説の仮説の傍証となるような報告が日本から出された。東京都健康長寿医療センターの病理診断科のグループがストックしてあった8339の生物検サンプルを解析したところ178の膵がんを発見した。そのうちの8%の膵がんが無症候のうちに進展していることが明らかになった。

第53回日本癌治療学会学術集会のシンポジウム「膵がん治療の個別化による予後向上」では、山口大学医学部放射線治療学教授の澁谷景子氏が「膵がんの非手術適応の患者でも経過をみていて転移が出てこない方がおられ、そのような患者には化学療法ではなく放射線化学療法を選択すべきだと思うが、その選別が難しい」と講演している。

全身転移型と局所破壊型(オリゴ転移型)を分けるのは、膵癌特有の遺伝子変異である。膵癌の遺伝子変異はKRAS、P16/CDKN2A、TP53、SMAD4のわずか4つに集中していることが分かっている。そして、TP53とSMAD4、あるいはTP53に変異があると転移する傾向が強く、予後も悪い。対照的にTP53とSMAD4双方に変異がない場合は転移する傾向も弱く、また予後も比較的良好だ。

**********引用、ここまで**********

後者の場合はオリゴ転移型である可能性が高く、抗がん剤による延命治療ではなく重粒子線を含めた放射線治療、化学放射線治療、動注塞栓療法などあらゆる手法を使った個別化医療を進めることで治癒が期待できる。

これを実際に患者に適用しているのが、前回の記事で紹介した岡田直美医師なのですね。そして前回の記事にコメントをいただいた林さんも、たぶんオリゴ転移型の膵臓がんだったのでしょう。

「膵臓がんです。転移しているから手術はできません。抗がん剤治療で延命し、耐性ができ使える抗がん剤がなくなれば、あとは緩和です」と、標準治療のエビデンス(科学的な根拠)だけに乗っかると、助かる可能性のある命を捨てることになりますね。

「私のがんもオリゴメタ転移型かもしれない」と考えられるとき、どうすればよいでしょうか?

岡田医師の勤める放医研病院でセカンドオピニオンをお願いするという方法もありますね。放医研病院は重粒子線治療だけでなく、一般の放射線治療、小線源治療にも対応しています。

次にはオリゴメタ説に関心を持っている医者や病院(その多くは放射線治療)を探してみることです。主治医の先生に相談する。あるいはネットで調べて自分の足で探す。この「自分の足で」が大切です。ネットで調べても、実際に自分で電話してみる、足を使って確実な情報を入手することが必要です。

以下は私が検索して、ここならと思われるものです。大阪ですが、

オリゴメタ(Oligometastases:少数転移)の治療
医療法人新明会 都島放射線科クリニック 副院長 呉 隆進

現在のがん治療は、科学的な根拠に基づき根治を目指した初期治療や、終末期の患者さんへの対症的な緩和ケアにより、至適な医療が受けられる環境が整備されつつあります。しかし、その中間に位置する再発がんに対する放射線治療の役割は旧態依然としており、まだまだ積極的な発展が見られない状況です。

大腸・直腸がんの肝転移に対する手術の有用性については、多数の報告があります。最近では転移巣に対する手術適応の拡大などが徐々に浸透し、再発がん(転移)に対する臨床が少しずつ変貌しつつあります。放射線治療においても例外ではなく、近年急速に進化している高精度な放射線治療により、以前は照射適応外であった症例に対しても治療可能となってきました。しかし、現状はステージⅣという枠組みの中に入れられ、放射線治療のような局所治療は意味がない(生存期間が延びるという科学的根拠がない)ということで、漫然と化学療法だけに頼った治療が標準治療として行われています。

以上述べてきましたように、長期生存を目指せる条件を備えたオリゴメタであれば、潜在的な大きさの転移巣に対しては、全身療法として化学療法や分子標的療法の効果を期待し、化学療法などでは制御できない画像上明らかな転移巣に対しては、局所療法として放射線治療を補助的に施行する価値は十分にあると考えられ、当院では適応となる患者さんを積極的に受け入れています。
今後、科学的な根拠を示すには臨床データの集積が必要となりますが、まだまだがん治療医の間でもオリゴメタに対する認識は高いとは言えず、きちんと検査され当院へ紹介される患者さんは非常に少ない状況です。

オリゴメタ転移型には重粒子線が有効ですが、自費診療になると数百万円の医療費を負担しなければなりません。しかし、サイバーナイフやIMRT(強度変調放射線治療)などの定位放射線治療でも同等の効果が見込まれると考えられます。

このまま死んでる場合じゃない!』に登場する患者の善本さんも、岡田医師からはIMRTを勧められてのですが、先方の病院が「できません」となって、しかたなく重粒子線治療を選択したのでした。

サイバーナイフはほとんどのがんに保険適用となっているので、導入する民間の医療機関がどんどん増えていますから、東京や大阪でなくても治療の敷居は高くないと思われます。しかし、機器は導入しても使う技術者が経験を積んでいるか、医師がオリゴメタ説を理解して適格な放射線治療計画を立てることができるのかどうかは、わかりません。ここでも「自分の足で」情報を集めることが重要ですね。

IMRT(強度変調放射線治療)は、前立腺がんと頭頸部がんだけが対象でしたが、平成28年度の診療報酬改定で、限局性(散らばっていない)の固形悪性腫瘍が対象となり、ほとんどのがんについて適用となりました。

Ⅳ期の患者でも長期生存を目指せるオリゴメタ説に対する放射線治療や手術への認識は、患者のみならず医師でも認識度は非常に低いが、オリゴメタ説に対する認識を深めた治療を積極的に受け入れてくれるクリニックもポツポツ存在します。

しかし、緻密な臨床データーの解析が個々の患者に対して必要となるので、くれぐれも胡散臭いところは排除し、注意する必要があります。大病院でも主治医によっては、患者の可能性を的確に判断し、このような医療機関へ紹介されるケースもあるようですので、主治医との良好な信頼関係を築いているかどうかが鍵となるでしょう。


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