長生きは良いことか?『健康第一はまちがっている』


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日本は世界一の長寿国です。医療のおかげで長生きをするようになり、健康寿命もどんどん伸びています。しかし、百歳あたりが限界という現実は変わりません。

ということは、60、70歳を過ぎる当たりから、急激に死ぬ人が増えてきます。

健康な老人が増えれば、グラフの平坦な部分が右に移動しますが、右の端が決まっているのでグラフの急降下がより一層激しくなるのです。

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だとすれば、

寿命×人生の満足度=生きた価値

と考えたとき、ぼけても寝たきりになってでも長生きしたいというのと、美味しい物を食ってタバコもやめないで、5年10年早死にしてもいいから病院などには行かずに楽しく暮らしたい、という考えは、生きた価値では等価ではなかろうか。

しかし世の中は長生き指向、健康指向で、がんも早期発見早期治療が唯一「正しい」選択だという風潮が蔓延しすぎている。何らかの自覚症状が出るまでは放っておき、がんが見つかってもQOL重視で、場合によっては治療をしないという選択もありではなかろうか。

世界一の長寿国になっても、まだ健康第一、昼間のテレビは健康番組ばかりやっています。これ、おかしくないですか?

「健康第一」は間違っている (筑摩選書)と言っているのが名郷直樹医師の『「健康第一」は間違っている』です。

タイトルだけをみると「医療否定本」のようですが、名郷医師は『EBM実践ワークブック』などの医師向けの著作もあり、EBMに基づく医療を先進的に行ってきた方です。

世の中が「健康第一」「長生き第一」「医療は万能」にぶれすぎているから、真逆の考えをあえて打ち出そうというのです。

二人に一人はがんになる時代で、分子標的薬などの高額な薬がどんどん開発されていった先には、医療財政の破綻は避けがたい。その薬を使ったとしても、強烈な副作用と引き替えに、わずかに余命が伸びるだけだとしたら、70、80歳なら、もう十分に生きたから治療はしない、そのお金は若い世代のために使ってくれ、というのも一つの選択だと思うのです。「譲る」という考えがあっても良いのではないか。40代前後のまだ子供を養育している世代が、安心して治療に専念し、治して社会復帰できるような施策のために医療資源を使った方が良いとは考えられませんか。

もちろん、何が何でも死ぬのは嫌だ、もっと生きたいというのも「等価」ですから選択は自由です。しかし、全員が100、120歳まで生きたらどんな世になるのか。医学が、遺伝子治療も進んで究極の「不死」を得たとしたら、それはおぞましいことです。この地球が養うことができる人口をはるかに超えてしまい、結局は人類の種を保全できなくなる。人類は滅亡することになるでしょう。「死」を獲得することによって、それと引き替えにヒトという種は繁栄してこれたのです。

百歳まで生きて癌で死ぬのが理想としても、妻も子も孫も死んで、自分だけ生きているというのは、たとえ健康だとしても幸せなことだろうか、これはこれでおぞましいことかもしれません。

人間に寿命があり、医療や薬では老化は防げないのだから、「いつまでも元気で長生き」は無理だと誰もが分かっている。しかし、寝たきりで家族に迷惑をかけたくないから、無理に運動し、塩分を控え、甘いものも我慢している。どこか少し調子が悪いといっては病院で薬を出してもらって安心する。

子どもが独立して、定年を迎えたら「健康第一」はやめて「今の時間を楽しむ」、高血圧や血糖値なんぞは気にしないで「おいしいものを食べる」のが得策だ。

薬を飲んだからといって、長生きできるわけではない、むしろ副作用で寿命を縮めることもある。65歳を過ぎたらがん検診もしない方が良い。早く見つけたからといって長生きできるとは限らないし、抗がん剤の副作用で返って余命が短くなる。

「ピンピンコロリ」が理想だというが、がんで死ぬのは「ピンピンコロリ」に近いのではないだろうか。ある日気づいたら膵臓がんの末期だった、というのは高齢者にとっては「ピンピンコロリ」の理想的な最期かもしれない。苦しいのは最期の数日からせいぜい1ヶ月程度だし、がんでも最期の日までほとんど痛みのない人もいる。

80歳になろうかという末期がんの親を、あちらこちらの病院や先進医療にと奔走している家族や子どももいる。熱意や愛情は充分に理解できるのだが、それは果たして高齢者の親にとって幸せなことなんだろうか。本人の意思を尊重してのことなのだろうか。実は「息子が、もっと長生きしてと熱心に勧めるから、仕方なく抗がん剤を打っている」という患者は意外と多いのだ。

『老後破産』『下流老人』の言葉が目につくが、長生きしたあげくに、がんになってもなかなか死なせてもらえない。医療費ばかりがかかり『老後破産』にまっしぐら・・・現実に多いです。

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