がんは複雑系だから、奇跡が起きる(3)

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【日 時】2018年12月23日(天皇誕生日) 13:10~16:30(開場・受付:12:50ごろ)
【場 所】JR京浜東北根岸線 大森駅東口から徒歩4分 Luz大森 4階 入新井集会室
【参加資格】膵臓がん患者とその家族、遺族
【参 加 費】500円(会場使用料及び資料代)
【定 員】 130名
【内 容】
●講演「私が手術、抗がん剤をやめたわけ」:待夢さん、SAKUさん
●患者さんどうしの情報交換会
●二次会(希望者だけ)

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がん患者にとっての複雑系

前回からすこし間が空いてしまいました。最終回です。

がんを複雑系と考えるとき、いまがんと闘い治癒を願っているがん患者は、どのように自分の治癒へとつなげればよいのでしょうか。私は次のように考えます。

がんの成長を抑制するための方法をすべて文字通りに実践しない限り自分の身を守れない、というわけではない。人間の体は、それ自体、各機能が他の機能と相互作用を起こすような、均整のとれた巨大システムである。その機能のうちたったひとつにでも変化があると、必ず全体に影響が及ぶ。

だからこそ、食事療法、運動、精神面の訓練、もしくは人生にこれまで以上の意味や意識をもたらしてくれる何らかのアプローチ法のうち、自分が実践しやすいものから始めればよいのである。人それぞれ状況も性格も異なるのだから、やり方もそれぞれであるべきだ。

ただし、すべてのアプローチ法に共通している重要なポイントは、生きたいという願望を強めることができるかどうかという点である。

バタフライ効果

人間は高度な複雑系であり、なかでも脳はもっとも高度な複雑系です。

この脳が免疫系とも相互作用をしており、免疫系は精神活動、「こころ」といわれるものとも相互作用しているのです。複雑系は、システムを構成している各要素間が強い相互作用をしていて、さらに部分が全体とも相互作用をしています。

複雑系の基本性質は、「ほんの少し条件が変わるだけでまったく違った結果が生み出される」ということです。これはローレンツの「バタフライ効果」ともいわれています。ローレンツが「ブラジルでの蝶の羽ばたきがテキサスの竜巻を引き起こすか?」という題で講演を行なったことが起源になっています。

ローレンツは、流体力学をもとにした単純な三つの数式により、気体の示すカオス的行動をシミュレーションして感動的な図形をつくりました。これが蝶々のような図形になっていたのです。

気象も複雑系です。複雑系は非線形系でもあり、非線形系では、ある規則性を理解しても、将来の予測は不可能だという性質があるのです。だから天気予報は当たらない。つまり、スパコンを使って温度や気圧や太陽熱や地形等のデータをすべて使って計算しても、ほんの少しの「ゆらぎ」があれば予測が外れます。ゆらぎは必ず存在しますから、明日の天気は当たる確率が高いとしても、一週間後、一ヶ月後の天気予報はほとんど当たらないのです。これがカオス理論です。

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がんを状態空間で表すと・・・

がんが増殖する要素(逆に言えば縮小する要素)がN個あったとします。今の私のがんの状態はN次元の状態空間におけるある一点で表わすことができます。N次元空間を思い浮かべることはできませんから、仮にN=3の場合を考えると、3次元空間のある点で表わすことができます。

X軸に「食物の抗がん作用」、Y軸に「運動による体質改善」、Z軸に「こころの免疫賦活作用」を考えるとすると、この3要素の現在の値をプロットした点で私のがん=健康状態を表示することができます。3要素が変化すると、この点はそれに応じた軌道を描きます。

人間にはホメオスタシス(恒常機能)といわれる、内部環境を一定の状態に保ちつづけようとする傾向=健康な状態を保とうとする性質があるので、これらの3要素に少しのゆらぎが生じても(例えば、微少ながん細胞が発生しても)、もとのあるべきところに戻ろうとするはずです。十分な時間がたったあとで、これを状態空間の軌道として描けば、いろいろな軌道を描きながらもある正常範囲の領域に落ち着いてくる様子が図示できます。

少しの変化が、全体を変えることがある

人間は治ろうとしているのだから、治る方向にちょっと肩を押してやれば、その少しの摂動が複雑系全体(体全体)に大きな影響を与えることがあるのです。

食事を変えれば体質が変わる。がん細胞の餌となる有害なものが体外に排出され、細胞内がよりよい環境になる。運動をすればリンパ液の循環が良くなり、適切な体重を維持できる。瞑想をすればストレスに強いこころが育まれて、NK細胞が活発になる。脳からも免疫活動を補強する情報伝達物質が放出され、食事によって改善された体質のなかを効果的にがん細胞まで移動する。動物性タンパク質よりも植物性タンパク質を多く摂ると積極的に運動をするようになる。瞑想やヨガは自分の体への意識を高め、バランスの悪い食事は、胃への負担や体全体への悪い影響を感じるようになり、避けたくなってくる。放射線や抗がん剤による影響を低減し、治療の効果を高めることができるようになる。このようにすべての要素が相互作用をしているのです。

複雑系のある要素に少しの摂動を与えれば、それが「ブラジルの蝶がテキサスの竜巻を起こす」ように、大きな影響を与えることがあるのです。

確実とは言えなくても、有効だと思われる対策はたくさんあります。しかし、複雑系の基本的性質からして、これをやれば確実にがんが治るという治療法やサプリメントはあるはずがないと分かります。

効果があると思われる(確かなエビデンスではなくても)ものを、いくつか実践していけば、アトラクターがある軌道に徐々に落ち着くように、治癒する可能性が格段に高くなるのです。

どの要素が変化すれば、がんが治癒に向かうのか? 多分それは一人ひとりで違うはずです。ぴったりとはまって、免疫系がフル稼働する状態になったときには「奇跡的治癒」が起きるのでしょう。

もしも2045年までにシンギュラリティ(技術的特異点)に到達するのなら、その「一人ひとりで違う何か」がAIによって分かるようになるのかもしれませんね。

一人ひとりで違うのだから、玄米菜食で必ず治るとか、体を温めればがんは消滅するとか、笑っていればそれだけでがんは逃げ出すとか、このような「これだけで」「100%治る」という言葉をもてあそんでいる者たちは信用してはならないということです。

もちろん、暖めることがいけないのではありません。玄米菜食だけで治ることもあるかもしれません。まったくウソというわけではないでしょう。しかしそれは、その人のN個のがんが治る要素のなかで、玄米菜食による要素が高かった、あるいは他の要素との相互作用でそのような結果になったということです。あなたにも同じ現象が起こるということは、まずありません。それが複雑系ですから。

「これさえやれば」という考えは、がんも人も複雑系であり、各要素が相互作用しているという事実を無視しているのです。

なかでも、標準治療は、治癒に結びつくN個の要素のうちの大きな要素に働きかけるものです。これを無視するのはナンセンスです。一方で、統計的な有意差がないからと、それ以外の小さな要素を無視することもまた、ナンセンスです。

がんと闘う多くの仲間がいます。

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