がん患者のためのインターネット活用術 (2)

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検索テクニックを駆使して、必要な情報に素早くアクセス
今では統計的にいえば、夫婦のどちらかががんになっても不思議ではないのです。ですから、がん患者といっても特別な存在ではない。腰痛や糖尿病や、いろいろな病気の一つとして「がんを持って」生きている人間と考えた方がよいのでしょう。がんとの闘いにおいて、インターネットから情報を得ることができるかどうかは、場合によっては余命を左右することもあります。例えば、がん遺伝子治療の臨床試験の情報を知っていて参加できたとすれば、治癒へのチャンスを掴むことになるのかもしれません。
しかし、人生はがんとの闘いのためだけにあるのではない。治る、あるいは延命することは切実な願いですが、いくらかの延命が果たせたとしても、その時間をインターネットの検索などに費やしてしまったとしたら、これは賢明な選択とは言えないでしょう。
信頼でき、自分に必要な情報を「効率的に」収集する。そのためにはインターネットの検索術、テクニックを上手に使いたいものです。そして浮かした時間は、人生を有意義にするために使ってもらいたい。それに少しでも役立てればということで、このシリーズをアップしています。
AND,OR,NOT検索
今回からは実際にGoogleでキーワードを入力して検索するときのテクニックです。とは言っても特別な方法ではないのですが、意外と知られていないのがAND、OR、NOT、フレーズの各検索方法です。
種類 | 目的 | 例 |
AND検索 | AとBのキーワードが含まれている | 膵がん AND 治療法 |
OR検索 | AまたはBのキーワードが含まれている | 膵がん OR 抗がん剤 |
NOT検索 | キーワードが含まれていない | 副作用 –トラックバック |
フレーズ検索 | フレーズ全体が含まれている | “がんペプチドワクチン療法” |
AND検索の場合は、スペース(半角または全角)で代用できます。AND、ORは半角の大文字にする必要があります。



最後のNOT検索の例は、「-トラックバック」とすることで、ブログを除いた検索になります。ブロク記事には「トラックバック」や「コメント」の文言がありますから、そのページを除外することができます。
組み合わせ
次は、以上を組み合わせた例です。
「膵臓癌」にはいろいろな表記があります。膵がん・膵癌・膵ガン、膵臓がん・膵臓癌・すい臓がん・すい臓癌・すい臓ガンなど、ページによって使われている言葉が違うことがあります。
これらの違いをもれなく検索するには、ANDとOR、NOTを組み合わせて次のようにキーワードを指定します。

検索結果を比較すると、「膵臓がん」で単純に検索したとき760,000件、上の組み合わせでは787,000件になります。
差があまりないように見えますが、これはGoogleには自動的に同意語を検索対象に含める機能があるためです。ある程度は表記の違いをカバーしてくれます。しかし、その機能が完璧ではないことを表わしています。重要なページが検索されないということもあり得るのです。
フレーズ検索
この方法は意外と使われていないようです。しかしその効果は強力です。
「がんペプチドワクチン療法」とキーワードを指定すると、Googleは自動的に単語に区切ってそれぞれの単語間で「OR」検索をします。「がん」「ペプチド」「ワクチン」「療法」の単語が一つでも含まれているページをすべて検索してくるのです。
キーワードの両端を「”」で囲んで指定することで、全体のフレーズを含んだページのみを検索してきます。

これらの簡単なテクニックを使うことで、目的のページを検索結果の上位に持ってくることが可能になります。
ドメイン指定検索
ドメインとは、インターネット上のパソコンやネットワークを区別するために付けられた「住所」のようなものです。「ドメイン指定検索」は、この住所を指定して、キーワードで検索しようということですから、信頼のおけるサイトを指定できるという特徴があります。
ドメイン指定検索は、キーワードの後ろにスペースを空けてから、「site:ドメインの一部」という形式で指定します。

これらから公的な機関のドメインを指定すれば、より信頼性のあると思われる情報にアクセスすることが可能になります。
膵臓がんの腹膜播種について、信頼できる情報が欲しい場合、大学や教育機関を対象にすればよいでしょう。
膵臓がん AND 腹膜播種 site:ac.jp
と検索してみましょう。

9000件もヒットしました。これからさらに「臨床試験」などのキーワードを追加して絞り込んでいきます。
もし、アメリカの政府機関で「膵臓がん」を検索したければ
pancreatic cancer site:gov
と指定して検索します。

国立がんセンターのサイトから「膵臓がん」のキーワードで検索したければ、
膵臓がん site:ncc.go.jp
とします。さらに、(膵臓 OR すい臓 OR 膵 OR すい) AND (癌 OR がん OR ガン) site:ncc.go.jp とすればより確実に検索できます。

リスト見出し引用かなこれらの検索テクニックを使って、さらにキーワードを追加するなどして絞り込んでいきましょう。検索結果を閲覧するのは上位の10件から20件程度だと言われています。丁寧に見る人でもせいぜい2ページ程度の検索結果しか見ておりません。
したがって、目的の情報に素早く適切に到達するためには、これらの検索テクニックと的確なキーワードを設定する必要があります。
ファイル形式指定検索
がんに限らず、論文や研究発表の資料はPDFファイル形式でアップされていることが圧倒的に多いのです。一部は、そのほかのファイル形式(Word、Excel、PowerPoint)でアップされていることがあります。また、医学系の雑誌、学会の出している会報などもPDFファイルでアップされていることがあります。
膵臓がん 生存率 filetype:pdf
と指定すれば、PDFファイルのみを検索の対象とすることができます。
この例では、国立がんセンターの膵臓がんを含む各種がんの治療成績や、日本膵臓学会が出している「膵臓」という雑誌の記事を検索することができました。
「膵臓」のVol. 22(2007) No.1 には「膵癌登録報告2007」のすべてがPDFファイルとしてアップされて、その巻頭には次のように紹介されています。
2001 年から2004 年の症例をまとめて、年次ごとのデータとして報告するとともに、長期生存例、2cm 以内の膵癌についてまとめ、前回報告されなかった膵管内腫瘍、粘液性嚢胞腫瘍、内分泌腫瘍、その他の腫瘍についても詳細に報告する。報告図表の量が膨大であるため、冊子体ではなく、J-STAGE の電子媒体としてインターネット上に公開されるのも今回がはじめてである。
このような、きわめて多数の症例を母数とした集計例の解析は世界に類を見ず、貴重な資料となるものである。多くの方に利用していただきたいと念じている。
この資料は、膵臓がん患者なら一度は目を通しておきたいデータでしょう。
タイトル検索
キーワードがWeb上の記事本文だけではなく、タイトルにも含まれていれば、その記事は重要な情報を含んでいる確率が高いと考えられます。
allintitle:膵臓がん
で検索してみましょう。
2930件のヒットがあり、大阪国際がんセンター(元の大阪府立成人病センター)の膵臓がんの治療成績などが検索されました。大阪国際がんセンターは切除できた膵臓がんの5年生存率が50%という、世界的にも優れた成績を出している病院です。