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「がんと闘う」が駄目な理由(わけ)

ついつい私も「がんと闘う」と書いてしまうことが多いです。しかしこれにはいくつかの問題があります。

患者はがんと闘い、あるいは副作用とも闘います。しかし「闘い」という言葉から必然的に導かれるのは「勝つ」か「負ける」かです。

相手の勢いをほどほどに弱めて、こちらの兵力も温存しながら長く付き合う。こうした視点が抜け落ちてしまいます。

がんは私たちの一部であり、それは私たちが多細胞生物になった時から、今に至るまで変わらない事実です。

単細胞生物から多細胞生物に進化した時に、必然的にがん細胞の存在を許すことになりました。なぜならがんは「進化」そのものだからです。

がんをどうにかなる問題として捉えるのではなく、避けて通れない現象として受け止めることもたいせつです。

確かに「闘い」と言う比喩は、家族の協力を得ることに有効かもしれません。あるいは主治医と協力して共通の敵に立ち向かうという意味で団結する効果は期待できるかもしれません。

しかし実際はどうか。がん細胞も一様ではありません。多様な構成員なからなる細胞集団です。これが私たちが行うあらゆる治療法に抗して「進化」をしているのです。

「進化」と言うと、長い時間をかけて、何世代もにわたって環境に適応することを思い浮かべるでしょう。

細胞が分裂し子孫を残すのには2~3日あれば十分です。私達人間は子孫を残すのには20から30年必要です。

細胞から見ると、私たちの生きている時間の中で「進化」を続けることは十分に可能なわけです。

私たちの細胞も、あるいはがん細胞も、私達の体の中で「進化」をしているのです。

抗がん剤の大量投与でがん治療を続けると、がん細胞はそれに抵抗性のある細胞となり、環境に適用すべく「進化」をします。

ですから長い目で見ると、腫瘍の制御がうまくいかなくなる可能性が高いわけです。

特に末期がんの場合は、最大用量の抗がん剤で攻撃する戦略は決して望ましいとは言えないケースが多いのです。

私たちのイメージとしては、がんは同質な細胞のよく組織された軍団が、宿主を破壊すべく一致団結している様子を思い浮かべます。

実際は、統制の取れていない雑多な細胞の集団が、私たちの行う治療法に激しく反応しているのです。

そして、抗がん剤に抵抗性を持つように遺伝子が変異したがん細胞が生き残り、子孫を増やします。抗がん剤に耐性がつくとはこういうことです。

細胞の進化のプロセスですから、人間の手ではコントロール不可能なプロセスです。

遅らせたり道筋を少し変えることはできるかもしれませんが、「進化」自体を止めるのは不可能です。

ですから、「がんの撲滅」などというのは、進化生物学の視点から見れば、不可能な願いなのです。

がんを殲滅すべき敵というふうに捉えると、相手の弱点を捉えて、最小限の力で、しかも他の正常な細胞に無駄な被害が及ばないようにしながら、共存することによって勝利をする、そういった視点が抜け落ちてしまいます。


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