がん患者の生成AI活用法:NotebookLMが凄い!(1)
NotebookLMはハルシネーションに強い
生成AIの進歩がすごい勢いですね。昨日の情報が今日には古くなっていると、大げさではなく感じます。
生成AI の弱点として ハルシネーション(事実とは異なる情報や存在しない情報を生成してしまう現象)が言われています。がん治療などの分野で利用するには、これは致命的な弱点です。
ところが2025年3月に、Google が NotebookLM を無料で公開しました。これが今巷で大きな話題になっています。
ChatGPTやCopilot、Geminiなどの大規模言語モデルでは、学習した全てのデータを使って答えを返してくるので、情報源の信頼性もわからず、もっともらしい嘘(ハルシネーション)が紛れ込む恐れがありました。
NotebookLM は信頼できる情報源だけを与えて、それに基づいて答えが返ってきます。従ってハルシネーションには比較的強いです。
使うのも本当に簡単です。Google のアカウント さえあればいいのです。
自分専用の情報botができます。
これから何回かにわたって実際の使い方を紹介していきます。
とりあえずはNotebookLM を使う利点などを紹介します。
がん患者さんが生成AI、特にNotebookLMを活用することには、以下のような利点があると考えられます。
生成AI全般の利点
- 情報収集の効率化: 大量の医学論文、ニュース記事、患者団体の情報などを迅速に収集し、必要な情報を効率的に見つけ出すことができます。
- 複雑な情報の理解を助ける: 専門的な医学用語や複雑な治療法について、分かりやすい言葉で説明を得たり、要約を作成してもらったりすることで、理解を深めることができます。
- 疑問点の解消: 治療や副作用、生活上の注意点など、日々の疑問をAIに質問することで、医師や看護師にすぐに相談できない場合でも、ある程度の情報を得ることができます。
- 感情的なサポート: AIによっては、患者さんの不安や悩みを傾聴し、共感的な言葉をかけてくれる場合があります(ただし、これは医療専門家の代替にはなりません)。
- 治療記録の整理: 自身の治療経過や検査結果などをAIに整理してもらうことで、振り返りや医師とのコミュニケーションに役立てることができます。
- セカンドオピニオンの検討: 複数の医療機関の情報を比較検討する際に、AIが情報を整理し、比較のポイントを提示してくれる可能性があります。
NotebookLMが特に推奨される理由
NotebookLMは、Googleが開発したAIツールで、特定のドキュメントに基づいて質問応答や要約を行うことに特化しています。がん患者さんにとって、以下の点で特に有用性が高いと考えられます。
- 信頼性の高い情報源の活用: NotebookLMに、信頼できる医学論文、ガイドライン、病院の説明資料、患者会が作成した情報などを読み込ませることで、誤った情報や不確かな情報に惑わされるリスクを減らすことができます。一般的な検索エンジンや他の生成AIと異なり、情報源が限定されているため、より専門的で正確な情報を得やすいです。
- パーソナライズされた情報: 自身の病状や治療段階に合わせて、関連性の高い情報だけを抽出できます。例えば、「私の特定の癌の種類の最新治療法について、この臨床試験の論文から要約して」といった具体的な指示を出すことができます。
- 深い理解を促進: 複数の文書を読み込ませ、それらを横断的に質問することで、異なる情報源からの情報を統合的に理解することができます。例えば、「この治療法の効果と副作用について、複数の研究論文から比較分析して」といった使い方が可能です。
- プライバシーへの配慮: NotebookLMは、アップロードしたドキュメントが他のユーザーと共有されることはありません。機密性の高い医療情報を安心して扱うことができます。
- 学習支援: 難しい医学論文や説明資料の内容について、NotebookLMに質問することで、ポイントを絞った解説や要約を得られ、効率的に学習できます。
- 医師とのコミュニケーションの準備: NotebookLMで得た情報を整理し、質問リストを作成することで、診察時間を有効活用し、より質の高い医療相談に繋げることができます。
もちろん、生成AIは万能ではなく、最終的な判断は患者や医師が行う必要があります。しかし、NotebookLMのようなツールを賢く活用することで、がん患者さんはより主体的に治療に参加し、より良い療養生活を送るための強力なサポートを得られる可能性があります。
実行例
私が作成し、膵臓がんに限定したNotebookです。1時間ほどで作成できました。
情報源(ソース)として、
- このブログのURL
- がん情報サービスのURL
- 佐藤典宏先生や押川勝太郎先生のYouTube動画
- 静岡がんセンターのPDF冊子
- 膵癌診療ガイドライン2022年版
などを読み込ませて学習させています。

下のような答えが30秒ほどで返ってきます。素晴らしいですね。(番号…は参照した情報源です)
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膵臓がんのステージ4で、もう治療法はありませんと言われました。今後どのような心構えで生き、病気に対処すればよいでしょうか。緩和ケア以外の対処法も示してください。
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ご質問ありがとうございます。膵臓がんのステージ4で、治療法はないと言われた状況で、今後の心構えや病気への対処法(緩和ケア以外の対処法も含む)についてですね。ソースには、緩和ケアを含む様々な治療選択肢や、日常生活におけるセルフケア、相談先に関する情報が含まれています。
「治療法はありません」という言葉が具体的にどのような状況を指すのかは、担当の医療者にご確認いただくのが最も適切ですが、ソースによれば、膵臓がんの治療には手術、薬物療法、放射線治療、緩和ケアがあります1。がんが切除できない場合でも、主に薬物療法や薬物療法と放射線治療を組み合わせた治療が行われることがあります1。また、切除不能な消化器がんに対して、電磁波温熱療法を含めたがん集学的治療を行うことで、抗がん剤の効果を高め、使用量を減量しながら治療を継続できる可能性が示唆されています2…。がん防災チャンネルでは、膵臓がんの標準治療や代替医療、集学的治療に関する情報が提供されています2…。Pancan Japanは、膵臓がんを諦めず、希望を持ち、より良い結果(アウトカム)をもたらすことが必要であると伝えています7。
たとえ根治を目指す治療が難しい状況であっても、病気と向き合い、可能な限り心身のつらさを和らげ、生活の質(QOL)を維持・向上させるための様々な方法があります。緩和ケアは、がんそのものによる症状や治療に伴う副作用・合併症・後遺症を軽くするために行われる予防、治療、ケアであり、がんと診断されたときからいつでも受けることができます8。痛みを和らげるためには鎮痛薬の使用や神経ブロック、放射線治療が推奨されることがあります8。
緩和ケア以外の対処法として、ソースには日常生活における様々な工夫やセルフケアについて詳しく記載されています。これらは治療の有無に関わらず、QOLを維持し、合併症を防ぐために重要です。
日常生活における病気への対処や心構え
1.体調管理と感染予防
◦早期発見・早期対応のために体調管理をしましょう9…。自分の体の状態を記録し、体調変化のパターンを把握することが役立ちます9…。決まった時間に体温を測定・記録し、熱や痛み以外の感染を疑う徴候がないか観察しましょう9…。
◦かぜやインフルエンザなど感染症にかかっている人、体調を崩している人との接触は避けてください9…。
◦インフルエンザが流行している時期は人混みを避けましょう9…。自身にせきなどの呼吸器症状があるときや、乾燥する時期、インフルエンザ流行時期はマスクを着用してください9…。
◦手洗い、うがい、口腔ケア、皮膚の保清(スキンケア)は、日常生活における感染予防対策の基本行動です9…。
◦手洗いは石鹸をよく泡立てて丁寧に洗い、石鹸が残らないようにしっかり流します15…. 帰宅時、調理や食事前、トイレや掃除の後などに手洗いを行いましょう13…. ノロウイルスなどアルコール消毒が効かない菌には石鹸と流水による手洗いが有効です17.
◦うがいには、のどを洗う「ガラガラうがい」と、口腔粘膜炎予防などで口の中をケアする「クチュクチュうがい」があります。「クチュクチュうがい」をした後に「ガラガラうがい」をするとよいでしょう9…。帰宅後はのどを洗う「ガラガラうがい」をしてください9…。
◦検査結果によっては、生水や生もの・生野菜を避けた方が良い場合があります15….
◦ペットとの接触に注意し、特に白血球や好中球が減少する時期は避けるのが望ましいですが、難しい場合は長袖、手袋、マスク着用、接触後の手洗い・うがい、口移しや顔を舐めさせない、噛まれたり引っかかれたりしない、糞尿処理時の手袋着用、金魚の水槽の水に触らないなどに注意してください20….
2.口腔ケア
◦治療中は歯と口の健康を維持することが大切です24.
◦基本は1日4回(朝食後、昼食後、夕食後、就寝前)の歯みがきです25…. 吐き気などで食事がとれない時も、口の中では細菌が増えるため歯みがきは必要です25…. 歯磨きができない場合はうがい、または糖分の入っていない水やお茶などを摂りましょう25….
◦歯みがきは、粘膜への刺激が少ない清掃用具(ブラシ部分がやわらかめのナイロン製、ヘッドが小さく平らなカットのもの)で、力を入れず優しく行います25…. 歯みがき剤は刺激の少ないものを選びましょう25….
◦治療前に歯科医院を受診し、口のチェックやクリーニング、必要な歯科処置、歯みがき指導を受けておくと、口腔粘膜炎を軽くできることがあります13….
◦飲酒や喫煙は粘膜への刺激となるため、禁酒・禁煙が推奨されています13….
3.皮膚と爪のケア
◦入浴時はやわらかいタオルで優しく体を洗いましょう32…. できるだけ毎日シャワー浴などでお風呂に入りましょう16…. 入浴後は水分をすぐに拭き取り、濡れた髪は乾かしましょう16….
◦手洗い後や入浴後には、軟膏やクリームを使用して皮膚の保湿を行ってください。皮膚は乾燥すると傷つきやすくなります15….
◦ひげ剃りや剃毛は電気カミソリを使用し、強くこすらず切り傷を作らないように注意してください23…. 電気シェーバー使用時の注意点や洗浄・消毒についても情報があります38.
◦爪を切る際にも、切り傷を作らないように注意し、適切に短く切りましょう23…. 深爪にならないように気をつけてください23…. 爪の変化や爪囲炎が起こることもあり、痛みがある場合は皮膚科を受診することも検討しましょう39. 爪の保護や保湿も大切です39.
◦指のささくれや足の皮はめくらないようにしましょう。傷口が炎症を起こす可能性があります23….
◦乾布摩擦は内出血の原因になることがあるため避けてください32….
◦虫に刺された際は、流水で洗い、赤く腫れているときは冷やし、かゆみがあるときは掻かずに痒み止めを塗りましょう20….
4.排便の管理
◦規則正しい排便を心がけましょう32…. 便が硬いと、いきんだときに肛門周囲の粘膜を傷つけ、感染の原因となることがあります35…. 便秘の場合は医療者に相談してください35….
◦いきむと鼻血が出たり下血しやすいため、いきまないように注意してください32….
◦下痢が現れた場合、自己判断で下痢止めを使用せず、医療者の指示に従ってください40…. 激しい下痢や続く場合は医療者に報告しましょう40…. お腹を温めたり、腹部の圧迫やいきみを避け、安静に過ごすことが対処法として挙げられています40…. 消化の良いものを少量ずつ食べ、食物繊維や脂肪分の多いもの、乳製品、刺激物は避けることが推奨されています40…. 脱水予防のためにこまめに水分を摂りましょう(スポーツ飲料、味噌汁、野菜スープなど)41.
5.身体活動と注意点
◦激しい運動は避け、転倒や打撲に注意してください32…. ジョギングも避けることが挙げられています32….
◦急激な動きは避け、ゆっくりと動くようにしてください42…. 起き上がるときにめまい(起立性低血圧)が起こりやすいので、ゆっくり立ち上がりましょう42…. 転倒には注意が必要です42….
◦長時間の同じ姿勢や締め付けのきつい衣類の着用は、圧迫による内出血を起こす可能性があるので避け、ベルトやタイツなどはゆるめにしてください32….
◦運動療法(筋力強化、有酸素運動、バランス運動)が手足のしびれ軽減や機能向上につながる可能性も示唆されていますが、転倒や痛みに注意が必要であり、実施にあたっては担当医に相談することが重要です44.
6.食事と栄養
◦バランスのよい食事を心がけてください42….
◦味覚が変わることがありますが、味覚に合わせて味を調整しましょう45…. すっきりした味、さっぱりした味、はっきりした味、のど越しのよいもの、口当たりの良いものが食べやすいようです45….
◦時間にとらわれず、食べられそうな時に食べてください。すぐ食べられる食品を準備しておきましょう45…. 食事を分割し、1回の量を少なくすると安心感や満足感につながります45….
◦気になるにおいがある場合は、少し冷ましてから食べるなどの工夫をしましょう45…. 食事をする雰囲気や環境を変えることも食欲改善につながることがあります51.
◦糖質系の食品が食べやすいため、タンパク質が不足することがあります。食品の摂取制限がないか医療者に確認し、タンパク質を豊富に含む食品や調理法を探しましょう45….
◦効率よく栄養を補うために、栄養補助食品を利用することも検討できます49…. 栄養補助食品について詳しくは医療者に相談してください49….
◦脱水にならないようこまめに水分を摂ってください49…. 水分も口にできない状況であれば、すぐに医療者に報告しましょう50….
7.その他の症状への対処
◦吐き気や嘔吐が起きやすい治療の際は、事前に吐き気止めを使用したり、症状が出た後でも追加したりできます52…. いつ症状が出たかを把握すると、予防策を立てやすくなります52…. 食事前にうがいをすると気分がすっきりし、口の中の細菌や不快臭が減ります52…. 食後は歯磨きとうがいを必ず行いましょう52…. 食後は楽な姿勢で過ごしたり、体を締め付けない衣服を選んだりすることも対処法として挙げられています55.
◦末梢神経障害(手足のしびれや痛みなど)は、抗がん剤の影響で起こることがあり、有効な予防法や症状緩和法は確立されていないのが現状です56…. 症状が悪化した場合は原因となる薬物の減量や中止が一般的です57. 我慢せず、早めに担当医に相談することが大切です56.
◦脱毛は全身に起こり、外見だけでなく様々な影響(まゆ毛、鼻毛、まつ毛など)があります58…. 治療前に髪を短くしたり、かつらや帽子、バンダナなどを用意したりすることが対処法として挙げられています58…. 頭皮の痒みや発疹、精神的な落ち込みがある場合は医療者に報告しましょう58.
これらの日常生活上の工夫やセルフケアは、病気と向き合いながらQOLを維持するために役立つでしょう。
相談窓口の活用
病気や治療に伴う様々な悩みや不安は、一人で抱え込まずに医療者や専門の相談窓口に相談することが非常に重要です8….
•がん診療連携拠点病院などにあるがん相談支援センターでは、医療ソーシャルワーカーや看護師が、治療に関することだけでなく、療養生活の悩み、医療費、仕事のこと、将来への不安など、様々な相談に乗ってくれます8….
•病院内の医療相談室や地域連携室、緩和ケアセンターなども相談先として挙げられています60….
•緩和ケアについては、担当医や看護師に相談することで、緩和ケア病棟や在宅緩和ケアに関する情報を提供してもらえます61. 自宅での緩和ケアを希望する場合は、訪問看護ステーションに相談することもできます61….
•味覚の変化や食欲不振、栄養に関する悩みは、病院の栄養相談室にいる管理栄養士や栄養サポートチーム、薬剤師に相談できます60.
•飲み込みがうまくできない場合は、担当医を通じて消化器内科医、摂食・嚥下障害看護認定看護師、言語聴覚士、歯科医などに相談できます60.
•体力が落ちた場合は、リハビリテーション科医、理学療法士、作業療法士がリハビリを支援してくれます60.
•転院や在宅医療については、医療相談室や地域連携室、がん相談支援センターの医療ソーシャルワーカーや看護師に相談できます60.
•仕事の調整が難しい場合や、一人暮らしで何かあった時に頼れる人が必要か確認しておきたい場合、通院手段に不安がある場合なども、医療者や病院の相談室に相談することが勧められています62.
•療養日記(副作用メモ)をつけることは、自身の体調変化を把握するのに役立ち、医療者への報告時にも重要な情報となります12.
どの対処法を実践するか、どの相談窓口を利用するかについては、ご自身の状況を一番把握している担当医や医療チームとよく相談し、指示を優先することが重要です64….
Pancan Japanが伝えているように、希望を持って病気と向き合い、より良い結果を目指すことは非常に重要です7。困難な状況であっても、利用できる医療や支援、そして日常生活での様々な工夫を活用することで、心身のつらさを和らげ、自分らしい時間を過ごすことができる可能性があります。
記載されている内容は、必ずしも常に最新かつすべての人に当てはまるわけではありませんので、参考としてご利用いただき、ご自身の状況については必ず担当医にご確認ください68….