「膵臓がん患者と家族の集い」のご案内


【日 時】2026年5月30日(土) 13:15~16:00(開場:13:00)
【会 場】大田区立消費者生活センター 2階大集会室
【参加費】1,000円
【対 象】膵臓がん患者とその家族、ご遺族
【定 員】60名
【内 容】第1部:講演「膵臓がん治療の今とこれから」
         浜本 康夫 先生(東京科学大学 臨床腫瘍学分野 主任教授)
     第2部:交流会(テーマ別の情報交換とおしゃべり会)

申込締切は5月26日(火)19:00です。
詳しくはオフィシャルサイトで


生存率1.2%を「希望」に変えて。福積光一郎さんの物語と、私たちが掴むべき「複雑系」の力

2025年10月、29歳の若さで「膵臓がん」ステージ4と診断された、広島県在住の福積光一郎さん。妻と息子がおり、そして妻のお腹には新しい命が宿っていて、多忙ながらも幸せな日々を送っていたのに――。「5年生存率、約1.2%」という、かつてない試練と向き合う日々。その苛酷な闘病生活を「note」やSNSで発信する理由とは…。

参照記事(集英社オンライン):

旅先での家族写真、愛犬のハナビも一緒に(写真/本人提供)

「膵臓がん、ステージ4です。他への転移もあり、手術はできません」

この非情な告知を医師から受けたとき、足元が崩れ落ちるような感覚に陥らない人はいないでしょう。特に膵臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、初期症状がほとんど出ないため、発見されたときにはすでに進行しているケースが圧倒的に多いのが現実です。突きつけられる「ステージ4」というラベルと、統計上の厳しい数字。多くの患者さんは、その重圧に押しつぶされ、自らの未来を「数字」の中に閉じ込めてしまいます。

しかし、ここにご紹介する一人の若き男性は、その絶望的な状況を独自の感性と哲学によって「希望」へと鮮やかに書き換えました。

今回取り上げるのは、集英社オンラインで公開された広島県在住、29歳の福積光一郎(ふくずみ・こういちろう)さんの物語です。彼は2025年10月に告知を受けながらも、「生存率1.2%」という数字を「100人中1人は生き残れる。なら、自分はその1人になるための努力をすればいい」と定義し直し、前向きな発信を続けています。

私自身、膵臓がんを経験してから18年以上が経過したサバイバーです。福積さんの若く力強い言葉を読み解きながら、私が長年大切にしてきた「複雑系としての身体」や「執着の手放し」という考え方を交え、この病とどう向き合うべきか、その本質をさらに深く探ってみたいと思います。

福積さんの「1.2%」と私の「複雑系・バタフライ効果」

病院へ足を運んでくれた友人と福積さん(写真/本人提供)

福積さんの生き方において最も特筆すべき点は、統計データを「死の宣告」として受動的に受け取るのではなく、自らの意志で「挑戦の指標」へと能動的に変換したことです。

記事の後編(「生存率1.2%はむしろ希望」29歳で膵臓がんステージ4…男性がSNSを駆使して“笑って闘う”理由)で彼が語る「1.2%を希望と呼ぶ」マインド。これは、私がブログで繰り返し述べてきた「複雑系(コンプレックス・システム)」という科学的・哲学的概念に驚くほど合致しています。

私たちの身体は、単なるパーツの集合体ではありません。数兆個の細胞が、神経系、免疫系、内分泌系を通じて絶え間なく情報を交換し合い、動的にバランスを保っている高度な複雑系です。この複雑系の最大の特徴は、「初期値のわずかな違いが、時間とともに予測不能な巨大な結果の差を生む」という「バタフライ効果」にあります。

福積さんの「笑って闘う」という決意や、「家族へのサプライズを企画する」といった前向きな心の揺らぎは、身体というシステムにおける「初期値の変更」に相当します。一見、精神的な心がけに過ぎないように思えるかもしれませんが、複雑系においては、この小さな意識の変化が自律神経を整え、免疫細胞の活性化を引き起こし、やがて癌細胞の微小環境を激変させるトリガーになり得るのです。統計上の「1.2%」は、あくまで過去の数多くのデータの平均値に過ぎません。しかし、個別の「人生という物語」においては、現在の心の状態が未来の分岐点を変え、奇跡的な治癒を現実のものとする可能性を常に秘めているのです。

「生きるために、死を受け入れる」という逆説的な解放

福積さんは入院中という、心身ともに最も苦しい時期に奥様へプロポーズをされました(前編記事)。「いつ死ぬかわからないからこそ、今を最高の瞬間として生き切る」ために死を直視するその姿勢は、私がチェロの演奏や自身の闘病から学んだ「執着の手放し」という境地に深く通じています。

私たちは、「何が何でも治さねばならない」「死んではいけない」という強い執着に囚われると、心に過度な緊張を生んでしまいます。これは、チェロの演奏において「正しい音を出そう」と指先に力を入れすぎるほど、逆に音が濁り、理想の響きから遠ざかってしまう現象に似ています。身体が硬直すれば、循環は滞り、本来持っている自然治癒力もその働きを制限されてしまいます。

死ぬときには死ぬのが、災難を逃れる妙法」という禅僧・良寛の言葉があります。これは諦めではありません。状況を「あるがまま」に受け入れ、未来への過度な不安(執着)を手放したとき、初めて人間は「今、この瞬間(イマココ)」に全てのエネルギーを注ぎ込めるようになります。福積さんがSNSで家族との笑顔を発信し続けることは、まさにこの「執着の手放し」を実践し、病気というフィルターを通さない「生」そのものを堪能する姿であり、それが結果として身体に最高の調和をもたらしているのです。

がんと「闘う」のではなく、「幸せを感じる」ために時間を使い切る

福積さんは「笑って闘う」という言葉を使われますが、その根底にあるのは「闘病そのもの」への没入ではありません。私がこれまで大切にしてきたのは、「人生はがんと闘うためにあるのではない。幸福を味わうためにある」という視点です。

闘病を「敵との戦争」と捉えすぎると、生活の全てががん中心(がん・セントリック)になり、本来の自分を見失ってしまいます。福積さんの発信を見ていると、彼は治療を目的化せず、あくまで「家族との時間」や「誰かの希望になること」を主目的に置き、そのための手段として治療というプロセスを冷静に歩んでいます。これは、私が提唱する「黄金のループ(心と体の良好な循環)」を維持するための極めて高度な戦略です。

また、福積さんはSNSという「デジタル・アドバンテージ」を最大限に活用しています。私も最新のAIを「病を監視する道具」ではなく「豊かな未来を共創するパートナー」として活用していますが、孤独になりがちな闘病において、SNSを通じた「繋がりの可視化」や「情報の共有」は、孤独感を癒やし、精神的なレジリエンス(復元力)を劇的に高めます。自分が誰かの役に立っているという実感が、生きる意欲という最強の免疫を育むのです。

私たちが今日から実践できる「貯筋」と「身体のSOS」

福積さんのマインドに学びつつ、私たちが日々の生活で実践すべき具体的な「がん活」についても、改めて整理しておきましょう。

  • 「貯筋」は最高の薬(筋肉の重要性):
    石井直方氏の『いのちのスクワット』などで示されている通り、筋肉から分泌されるマイオカインという物質には、免疫機能を調整し、がん細胞の増殖を抑制する働きがあることが解明されつつあります。「筋肉は裏切らない」というのは闘病においても真実です。体調が良いときに歩き、スクワットをして「貯金」ならぬ「貯筋」を励行すること。これは福積さんのような若い世代からシニア世代まで、複雑系としての身体を強化する最も確実な投資です。
  • 「血糖値の急変」という警告:
    福積さんも初期には「疲れ」だと見過ごしていました。私の経験では、境界型の糖尿病であったにもかかわらず、急激に血糖値が上昇したことが発見の決め手となりました。急な食欲不振や倦怠感、あるいは糖尿病の急激な悪化を「年のせい」で片付けず、MRIや超音波内視鏡(EUS)といった高度な検査を受ける勇気を持つこと。膵臓がんは「0期」に近い段階で発見できれば、生存率は劇的に向上します。

おわりに:1.2%の先にある、新しい景色を信じて

福積光一郎さんの歩みは、膵臓がんという病に対する世の中の固定概念——「宣告=終わり」という冷徹な定義——を根底から覆してくれます。

私たちは、生存率1.2%という記号に怯える必要はありません。複雑系である私たちの人生と身体には、あらかじめ決められた結末など存在しないからです。福積さんのように「前向きな初期値」を日々入力し、執着を手放して「今」という時間を愛する人との幸せで満たしていくこと。その小さな「ゆらぎ」の積み重ねが、やがてバタフライ効果となって、統計さえも超える新しい未来を形作っていくのだと、私は18年の歳月をかけて確信しています。

「がんと共に、それでも笑って生きる」。福積さんの勇気ある物語と、私のこれまでの経験が、今この瞬間も病と向き合っている仲間の心に、希望という名の新しい「ゆらぎ」を起こすきっかけになれば幸いです。

生存率1.2%を「希望」に変えて。福積光一郎さんの物語と、私たちが掴むべき「複雑系」の力” に対して3件のコメントがあります。

  1. withmycats より:

    でも1.2は高齢者まで含む全体の生存率であって、40歳以下の若い人に限ればステージ4でも20パーセント前後の5年生存率というのが癌研のレポートだったと記憶しています。若者の症例が少ないから明確ではないとはいえ、その傾向からすると20歳代ともなれば、もしかするともう少し上振れするのかもしれません。

    1. キノシタ より:

      withmycatsさん。コメントありがと言うございます。
      ただ、私が改めて調べて限りでは、
      膵臓がんステージ4の5年生存率は、年代を問わず全体で 約1.5%〜1.6% 程度と報告されています。
      年代別の詳細なデータは公表されている範囲が限られていますが、一般的にがんは若年層ほど進行が早く、高齢層ほど身体への治療負担が大きいといった傾向があります。
      国立がん研究センターが運営する がん情報サービス において、膵臓がんステージ4(遠隔転移あり)の「年代別」5年生存率は、個別の数値としては一般向けに詳しく公開されていないのが現状です。これは、ステージ4の生存率が全年代を通して一律に低く(1.6%程度)、統計上の有意な差が出にくいためと考えられます。

      とのことでした。

    2. キノシタ より:

      withmycatsさん。
      全国がん登録 5年生存率(2016年) https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/001630334.pdf
      の29ページ目で、年齢階層別の5年純生存率が出されています。これによると、膵臓がんの15~44歳では40.3%、45~54歳が24.5%等となっており、若いほど生存率が良いのですが、これは全ステージでの合計です。ステージ4のデータは見当たりませんでした。
      5年純生存率はがん以外の要因を取り除いた生存率ですが、高年齢で低くなるのは、高齢者特有の身体的・社会的な背景が、がんの治療結果(予後)に直接影響を与えるためです。
      高齢者は若年層に比べ、標準的な強い治療を最後まで完遂するのが難しい場合があります。副作用への耐性、持病が合ったり、最期まで治療を続けることが困難。などが影響しているようです。
      これは膵臓癌以外のがんでも同様であり、若ければがんそのものの生存率が良いとは必ずしも言えないようです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です