シリーズ「がんとAI、伴走録」(4):もう一人の医師に、どう話せばいいか

自分の健康データを管理する女性と、背景に描かれた手術、研究、医療検査の様子。

「セカンドオピニオンを受けてみようかな」——そう思っても、実際に行動に移すのはなかなか勇気がいるものです。「今の主治医を疑っているようで気が引ける」「何を持っていけばいいのかわからない」「限られた時間で、うまく状況を伝えられる自信がない」。そんな迷いを抱えたまま、一歩を踏み出せずにいる患者さんも多いのではないでしょうか。

「がんとAI、伴走録」第4回は、「セカンドオピニオンの準備」をテーマにお届けします。

どの診療科に意見を聞くか、という視点

準備の話に入る前に、一つ押さえておきたい考え方があります。それは「どの診療科にセカンドオピニオンを求めるか」という視点です。

がん治療には、薬物療法(抗がん剤・分子標的薬・免疫療法など)、手術、放射線治療という大きく3つのアプローチがあります。そして主治医の専門科によって、提案される治療方針には自然と偏りが生まれやすい、という側面があります。

例えば、主治医が腫瘍内科(薬物療法が専門)であれば、外科や放射線治療科の医師に意見を聞くことで、手術や放射線治療という選択肢について、より深い視点が得られる可能性があります。逆に主治医が外科であれば、腫瘍内科や放射線治療科に話を聞くことで、手術以外の選択肢についての理解が深まるかもしれません。

つまり、「同じ科の医師に、二人目の意見として聞く」のと、「異なる専門科の医師に聞く」のとでは、得られる情報の性質が変わってくるということです。この視点を持っておくと、セカンドオピニオン先を考える際の解像度が上がります。

なぜセカンドオピニオンの準備は難しいのか

面談時間が限られている セカンドオピニオンの面談は、多くの場合30分〜1時間程度と決まっています。その場でゼロから状況を説明する時間的余裕はありません。

これまでの経緯を、初対面の医師に整理して伝える必要がある 診断の経緯、検査結果、提示された治療方針、自分が感じている迷い——これらを短時間で、かつ漏れなく伝えるのは簡単ではありません。

「主治医に申し訳ない」という心理的ハードル セカンドオピニオンは主治医を否定する行為ではなく、患者の正当な権利として広く認められているものですが、それでも心理的な引っかかりを感じる方は少なくありません。

何を聞けば「再検討の材料」になるのか、わかりにくい 漠然とした「なんとなくの不安」を、具体的に確認すべき論点に変換するのは、患者自身にはハードルが高い作業です。

そもそも、どこに申し込めばいいのかわからない どの病院の、どの診療科に、どうやって申し込めばいいのか。探し方自体がわからない、というのも大きなハードルです。

生成AIでできる具体的な使い方

これまでの経緯を時系列で整理してもらう

これまでの回で作成した診察メモの要約や、診断書のかみ砕き結果があれば、それらを活用して経緯を整理します。

プロンプト例:

これまでの診断書の要約と診察メモを貼ります。診断日、検査結果、提示された治療方針を時系列に整理して、初めて会う医師にもすぐ状況が伝わるような要約文にしてください。(その後に資料を貼り付ける)

「今の治療方針について、何を確認したいのか」を言語化してもらう

プロンプト例:

今の治療方針(手術)に対して、漠然とした迷いがあります。「本当にこれでいいのか」というモヤモヤを、セカンドオピニオン先の医師に確認できる具体的な質問の形にしてください。

どの診療科・どんな病院にセカンドオピニオンを求めるべきか、探し方を整理してもらう

ここで大切なのは、AIに「この病院がいい」と名指しで決めてもらうのではなく、探し方の切り口を整理してもらう、という使い方です。

プロンプト例:

今の主治医は腫瘍内科で、薬物療法を中心に提案されています。手術や放射線治療についても意見を聞いてみたいのですが、どの診療科を探せばよいか、探し方の切り口を整理してください。「がん診療連携拠点病院」のような公的な仕組みがあれば、それも教えてください。

セカンドオピニオンを受け付けている病院を探す際、どんなキーワードで検索すればよいか、いくつか案を出してください。実際にどの病院が良いかの判断はせず、探し方だけを整理してください。

なお、実際の病院名や実績、対応可能な診療科については、AIの回答をそのまま信じるのではなく、国立がん研究センターの「がん情報サービス」が提供している、がん診療連携拠点病院の検索機能など、公的な一次情報で必ず確認するようにしましょう。ウェブ検索に対応したAIであれば、検索させたうえで公式サイトのリンクを提示してもらう、という使い方も有効です。

セカンドオピニオン先に事前提出する情報のサマリーを作ってもらう

多くの医療機関では、紹介状や検査結果と合わせて、患者側が作成する概要シートの提出を求められます。

プロンプト例:

セカンドオピニオンの事前提出用に、これまでの診断経緯・現在の治療方針・自分が確認したい点を1枚のサマリーにまとめてください。医療機関のフォーマットは決まっていないので、A4用紙1枚に収まる分量にしてください。

限られた面談時間で聞くべきことの優先順位をつけてもらう

これは第3回の「診察前の質問リスト作り」の応用編です。

プロンプト例:

セカンドオピニオンの面談は40分の予定です。ここまで整理した質問の中から、最も優先して確認すべき質問を5つに絞ってください。

主治医への伝え方を一緒に考えてもらう

プロンプト例:

セカンドオピニオンを受けたいことを、主治医に気まずくならずに伝えたいです。角の立たない伝え方の例を、3パターンほど考えてください。

ここは医師の領域——AIに求めてはいけないこと

セカンドオピニオンの場面では、特に次の点に注意が必要です。

  • 「セカンドオピニオン先の医師の意見が正しいかどうか」の判断をAIに求めること
  • 二人の医師の意見が食い違った場合に、どちらが正しいかをAIに決めてもらうこと
  • 治療方針そのものの決定
  • 特定の病院・医師を「ここが一番良い」と名指しで推薦させること

AIの役割は、あくまで情報を整理し、比較検討しやすくするところまでです。二人の医師の意見の間で迷った時こそ、AIに答えを求めるのではなく、両方の医師、あるいは主治医との三者での話し合いの場を持てないか相談してみることをおすすめします。

この場面ならではのハルシネーション対策

セカンドオピニオンの準備は、複数の情報源(診断書、検査結果、複数回の診察メモ)を統合する作業が多く、他の場面以上に情報の混同が起こりやすい局面です。

複数の書類を統合する際、存在しない経緯を作り出してしまうリスク

情報を時系列にまとめる過程で、AIが実際には受けていない検査を「受けた」ことにしてしまったり、行われていない説明を「された」ことにして要約してしまったりすることがあります。

プロンプト例:

経緯をまとめる際、私が貼った資料に書かれている事実だけを使ってください。資料に書かれていない検査や説明を、推測で補わないでください。もし経緯に空白の期間があっても、無理に埋めずそのまま空白として示してください。

一般論としての治療法を、自分に提示された選択肢であるかのように混ぜてしまうリスク

治療の選択肢を比較する際、AIががんの一般的な治療法の知識を持ち出し、あたかも自分の主治医が提示した選択肢であるかのように説明に混ぜてしまうことがあります。

プロンプト例:

治療の選択肢について整理する際、私が実際に医師から提示された選択肢だけを扱ってください。それ以外に一般的に存在する治療法がある場合は、「これは一般的な情報であり、あなたに提示された選択肢ではありません」と明確に区別して示してください。

病院・診療科の情報について、実在しない情報や古い情報を提示してしまうリスク

病院の探し方を整理してもらう際、AIが実在しない病院名や診療科名、あるいはすでに閉鎖された外来の情報を、もっともらしく提示してしまうことがあります。

プロンプト例:

病院や診療科の名前を挙げる場合は、確実な情報である場合のみ挙げてください。少しでも不確かな場合は、名前を出さずに「がん診療連携拠点病院の検索サイトで確認してください」というように、公的な情報源を案内する形にとどめてください。

対策のまとめ

  • 整理してもらった経緯やサマリーは、必ず自分自身の記憶や手元の書類と照らし合わせて事実確認をする
  • 治療の選択肢については、「これは医師から提示されたことか、一般論か」を都度区別して確認する
  • 病院や診療科の情報は、AIの回答を鵜呑みにせず、必ず国立がん研究センターの「がん情報サービス」などの公的な一次情報で裏どりをする

まとめ

セカンドオピニオンは、主治医を疑うことではありません。自分の治療への納得感を高めるための、正当な手段です。経緯の整理、質問の言語化、病院の探し方、事前提出資料の作成——これらの準備をAIと一緒に進めることで、限られた面談時間をより意味のあるものにできるはずです。

ただし、複数の情報を統合する場面だからこそ、事実と推測が混ざりやすいという落とし穴があることも忘れずに。整理された内容は必ず自分の記憶や手元の資料と照らし合わせ、病院探しは公的な情報源で裏を取る。この一手間を惜しまないことが、納得のいくセカンドオピニオンへの近道です。

次回、第5回は「体調・症状の記録整理」を取り上げます。日々の小さな変化を、どう記録し、どう医師に伝えればいいのか。一緒に考えていきましょう。