諦めないで!膵臓がんでも長期生存できた4つの実例〜日本膵臓学会の最新報告より〜

「膵臓(すいぞう)がん」と診断されたとき、ネットやSNSで検索しても厳しい情報ばかりが目につき、不安でいっぱいになってしまう方は少なくありません。

確かに膵臓がんは治療が難しい病気のひとつですが、医療の現場では、医師たちが知恵を絞り、患者さんとともにあきらめない治療を続けています。そして実際に、何年も元気に過ごされている患者さんがたくさんいらっしゃいます。

今回は、2026年7月24日(金)-25日(土)に福岡国際会議場で開催された第57回日本膵臓学会で報告された実際の治療データの中から、5年・9年といった長期生存を果たした4つの実例をご紹介します。

こうした症例の内容は、日本膵臓学会の機関誌を講読するか、実際の患者さんがブログでも書かない限り知ることが難しいものです。

専門用語も分かりやすく解説していますので、ご自身やご家族の今後の治療のヒントとしてください。ステージ4の膵臓がん患者さんであっても、希望が持てる内容ですので、ぜひ参考にしてください。

これだけは知っておきたい!記事に出てくる基本用語

事例を読む前に、知っておくと理解がグッと深まる4つのキーポイントを整理しておきましょう。

  1. コンバージョン手術(Conversion Surgery)
    最初は「手術でがんを取りきれない(切除不能)」状態だった患者さんに対して、抗がん剤などでがんを小さくしてから、根治(完全に切り取ること)を目指して行う手術のことです。
  2. がん遺伝子パネル検査(CGP)
    がん細胞の遺伝子変異を一度に調べる検査です。自分のタイプにぴったり合う「狙い撃ちの薬」がないかを探すために行われます。
  3. MSI-High(マイクロサテライト不安定性ハイ)
    遺伝子の修復機能の特徴を表す言葉です。この特徴があると、がんの免疫治療薬(キイトルーダなど)が非常に効きやすくなります。
  4. 病理学的完全奏効(pCR / かんぜんそうこう)
    抗がん剤などの治療を行った後、手術で摘出した組織を精密に調べた結果、がん細胞が全く残っていなかった(完全に消失していた)状態のことです。

事例で知る「長期生存」へのアプローチ

学会で報告された、具体的な4つのエピソードをご紹介します。

事例①:薬の変更と工夫で「コンバージョン手術」へ(9年以上生存)

  • 治療スタート時の状態:肝臓への転移や、お腹の中全体への広がり(腹膜播種)が見られる厳しい状態(ステージ4)。
  • 実際の治療の流れ
  1. 初期の抗がん剤治療(FOLFIRINOX)を開始したものの、強い食欲不振が出たため、別の抗がん剤(GnP療法)へ変更。
  2. 手足の「しびれ」の副作用が出たため、無理をせず薬を1種類(ゲムシタビン)に絞って継続。すると、がんが目視できないレベルまで劇的に縮小!
  3. がんが小さくなったタイミングで「コンバージョン手術」を実施。
  4. その後、肺への転移が見つかりましたが、それも手術で摘出し、飲み薬(TS-1)による治療を継続。
  • 【ポイント】
    手術後の生存期間は9年以上を超えています。副作用の強さに合わせて抗がん剤の量や種類を上手に調整し治療を「継続できたこと」、そして転移が出ても諦めずに局所治療(手術)を組み合わせたことが結実した素晴らしい例です。

事例②:遺伝子パネル検査が見つけた「劇的に効く薬」(5年以上無増悪)

  • 治療スタート時の状態:手術で取りきれない進行膵臓がん。
  • 実際の治療の流れ
  1. 複数の抗がん剤治療(GnP療法からFOLFIRINOXへ変更)を継続。
  2. 治療の途中で「がん遺伝子パネル検査」を実施したところ、ご自身のがんが「MSI-High」という特定の特徴を持っていることが判明。
  3. 効く可能性が高いとされる免疫治療薬「ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)」に変更。
  • 【ポイント】
    免疫治療薬に変更してから、がんが大きくならず進行を抑えた状態(無増悪)が5年以上続いています。従来の抗がん剤の効果が弱まっても、遺伝子検査によって「特効薬」のような治療に出会える可能性があることを示しています。

事例③:抗がん剤が著効し、手術時にはがんが完全消失

  • 治療スタート時の状態:腫瘍マーカー(CA19-9)が1000を超える高値で、お腹の中への広がり(腹膜播種)も疑われる状態。
  • 実際の治療の流れ
  1. 強力な抗がん剤治療(GnP療法)を開始。
  2. 治療が非常に良く効き、高い数値だった腫瘍マーカーや疑わしい病変がきれいに消失。
  3. その後、切除手術を行ったところ、切り取った組織からがん細胞が一切見つからない「病理学的完全奏効(pCR)」が確認された。
  • 【ポイント】
    「膵臓がんには抗がん剤が効きにくい」と言われることもありますが、患者さんによっては抗がん剤が驚くほど効き、完全にがんを消し去ってしまうケースが存在する実証例です。

事例④:手術をしなくても「放射線+お腹への投薬」で5年以上無再発

  • 治療スタート時の状態:お腹の中にがんが散らばる「腹膜転移」を伴う膵臓がん。
  • 実際の治療の流れ
  1. 全身への点滴治療(FOLFIRINOX)に加えて、お腹の中に直接抗がん剤を届ける「腹腔内投与(パクリタキセル)」を実施。
  2. さらに、元々のがん(原発巣)に対してピンポイントで強力な放射線治療(SBRT)を組み合わせる。
  3. 手術を行わないまま治療を継続。
  • 【ポイント】
    コンバージョン手術を行わなかったにもかかわらず、5年以上再発なしで過ごされています。点滴だけでなく「お腹への直接投与」や「高精度な放射線」など、多彩な治療法を組み合わせる(集学的治療)アプローチの可能性を感じさせる例です。

「抗がん剤・治療法」ミニ辞典

本文に登場したお薬や治療法の名前をまとめました。治療の選択肢として覚えておくと便利です。

  • FOLFIRINOX(フォルフィリノックス)療法:4種類の薬を組み合わせた、膵臓がんの標準的な抗がん剤治療です。
  • GnP(ジーエヌピー)療法:ゲムシタビンとナブパクリタキセル(アブラキサン)という2つの抗がん剤を組み合わせた治療法です。
  • TS-1(エスワン):持ち帰って服用できる、飲み薬タイプの抗がん剤です。再発予防や進行がんの治療で広く使われます。
  • SBRT(ピンポイント放射線治療):がん病変に対して周囲の正常な組織を避けつつ、多方向から放射線を集中させて叩く高度な技術です。

主治医と向き合い、納得のいく治療を選ぶために

今回ご紹介した学会での報告例は、決して「一部の限られた人だけに起きる奇跡」ではありません。医療の進化と、患者さん・医療陣による諦めない選択の積み重ねが生み出した現実の成果です。

もちろん、治療の効果や副作用の出方には個人差があり、全員に同じ結果が出るとは限りません。しかし、「副作用が辛い」「今使っている薬が効かなくなってきた」と感じた時でも、薬の変更や調整、遺伝子検査、放射線、腹腔内投与など、試せる選択肢や工夫はまだ残されている可能性があります。

もし今の治療に行き詰まりを感じたり、別の可能性を知りたいと思ったりしたときは、ぜひ主治医に思いを伝えてみてください。また、セカンドオピニオンを利用して別の専門医の意見を聞くことも、自分に合った最適な治療法を見つける大きな一歩になります。

あきらめず、ご自身が納得できる治療選択をひとつずつ進めていきましょう。

セカンドオピニオンの申し出など、 主治医に伝えるのが難しいと感じることはありませんか?

そうした場合には、 このブログの連載記事を確認してみてください。スマホの生成AIに質問を投げかけてみてください。

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