がん研有明病院で、先週の細胞診の結果を聞いてきました。
結果は「良性」。二つの献体ともにがん細胞はありませんでした。これで一件落着。ただ、大きくなってこないかを1年ごとに経過観察することになりました。ま、超音波で診るだけですのであまり負担にはなりません。
結果的には今回は「過剰診断」だと思います。でも見つかると精密検査するしかないですよね。
「がんは早期発見、早期治療」が第一だと言われますが、常にそうとは限りません。症状もないのに検査をすることには、メリットもあればデメリットもある。早期の小さながんを見つけることによって、何人かは助かるかもしれないが、がんではない人をがんと診断する(擬陽性)がある割合で生じることは避けられません。
擬陽性が多いのは、老人の前立腺がんが典型的です。70歳を過ぎた人なら、前立腺がんが見つかっても治療をせずに天寿を迎えることも可能ですから、なまじ検査などしない方が良い。
検査の「感度」と「特異度」も考慮しなければならない。
感度:疾患罹患者中の検査陽性者の割合
特異度:疾患非罹患者中の検査陰性者の割合
- 感度が高いということは、その疾患の患者の大部分が検査陽性になることを意味する
- 感度が高ければ、疾患罹患者のなかで検査陰性になるもの、すなわち偽陰性者が少ない
- 特異度が高いということはその疾患に罹患していないものの大部分が検査陰性になることを意味する
- 特異度が高ければ偽陽性者が少ない
- 感度が高い検査で検査陰性となれば、その疾患に罹患している確率は低い
- 特異度が高い検査で検査陽性となれば、その疾患に罹患している確率が高い
- 感度、特異度がともに高い(1に近い)検査では、その検査を行うだけで疾患の有無を判定できる←こんな検査はあり得ない。
で、アンドレイカ少年の例のように、膵臓がんの早期発見のための検査手法がいくつか報道されていますが、感度が高く特異度が低い検査なら、擬陽性が多くなり、過剰診断になりかねない。
今回の私の例のように、個人レベルでは、がんと診断された時点で過剰診断かどうかを判断することは困難です。無治療で経過を見ていて別の病気で死ねば過剰診断だと確定はします。しかしこの方法は実際には役にたたない。現実にはさまざまな情報から確率的に判断するしかありません。
膵臓がんの可能性がないかどうかを、自覚症状もない人を対象に、3ヶ月毎に検査することは不可能です。膵臓がんではないのに膵臓がんとの結果が出たら、その後の精密検査などに多くの損失を覚悟せねばならない。1万人を検査して5人の膵臓がんのうち2人を早期に発見したとします。しかし、擬陽性が1000人であった場合、この検査は推奨されないわけです。アミノインデックスなんて、感度も特異度も高くない検査なわけで、高額な費用を出してまで受ける必要はないと思います。
膵臓がんは症状が出たときには既に手術不可能な場合が多いから、なおさらこの問題、悩みますね。家族性膵がんの場合とか、急に血糖値が上昇したなどのときに、「先生、膵臓も診てください」と言うのが、現実的な方法ではないでしょうか。