サイトアイコン 残る桜も 散る桜ー膵臓がん完治の記録

長谷川豊の社会保障バッシング

「自業自得の透析患者は殺せ!」という過激なブログで大炎上した長谷川豊氏。過激な一部の言葉は削除したようですが、キャスターを務めていた大阪のテレビ番組と読売系の番組を降板させられたとのこと。それらへの恨みつらみをまたブログに書いていますが、まぁ、当然ですね。

私は日本の最大の闇は「社会保障給付費」だと思っています。無駄は山ほどあるけれど、これほどのムダだらけの世界はないと。ここにメスを入れなければ、日本は早晩厳しい展開になると信じています。
が、そこにメスを入れるということは、一見すると「弱者切り捨て」と言われかねない状況になります。
でも、そこに「本当に弱者なのか?」「本当は弱者のふりをした卑怯者は混じっていないのか?」と訴えたかった。人様から預かっている税金。もっともっとしっかりしなければ、私はおかしいと信じています。
テレビ大阪『ニュースリアル』降板を受けて : 長谷川豊 公式ブログ 『本気論 本音論』

彼は人工透析患者を例に出して激しく叩いていますが、上の文章にもあるように、本音は「社会保障」全体をムダだと言っているのです。

本当は弱者のふりをした卑怯者は混じっていないのか?」って? そりゃいますよ。どんな制度であれ、不正受給者は数%存在しますよ。それを見越して制度設計をするのです。世の中、上手に立ち回って旨い汁を吸う人間は必ずいます。なくすことはできません。これは愚問です。

「卑怯者を見つけるためには、公務員を増やせば良い」確かにそうですね。でも彼らにかかる経費はどうしますか。どこから捻出する? 社会保障費を削りますか? 100%の管理をしようとすると膨大な費用が必要です。そこそこの不正には目をつむって管理費を抑えた方が、結果的に効率の良い運営ができるのですよ。不正をなくす努力は必要ですが。

適当な例かどうか分かりませんが、デジカメのCMOSセンサーには欠けたドットがあります。これを完全に無くそうとすると、一桁以上の高い価格になるのです。歩留まりが悪くなる。だから少しくらいのドット欠けは受入れて、ソフトウェア的に解決すれば、廉価なセンサーを使ったデジカメを多くの人が購入することができるのです。

企業だって、社員の一挙手一投足を全て管理してもっと利益を上げようとすると、多くの、利益を生まない中間管理職が必要です。巧く立ち回る人間はいつでもいるのだからと、ほどほどの管理で収めておけば、結果的に企業利益が大きくなる。それを賞与として社員に配分すれば良いのです。(内部留保に回す企業が多いけど)

一部の不良分子の存在を前提に制度設計をするとは、そういうことです。

「弱者のふりをした卑怯者」と「本当の弱者」をどうやって見分けるのでしょう。誰が見分けるのですか。長谷川豊氏ですか。医者の指示や忠告も聞かずに好き放題に食べて糖尿病、あげくは人工透析になる、とのことですが、しかし「生活保護の男性、3割超がメタボ」との記事があるように、生活保護受給者や非正規労働者のエンゲル係数は低い。空腹を満たすために取りあえずコンビニ弁当、牛丼、ハンバーガーなどの糖質の多い食事になりがちで、肉や野菜は少なくなるのです。糖尿病になりやすい生活をせざるを得ない。

一方で富裕層は、ランチはボールにいっぱいのサラダとチーズ、夜はステーキと、エンゲル係数の高い食事が可能です。

中には、ブラック企業に就職し、残業代ももらえず死ぬほど働かされても「自分で選んだのだから」と「本当の弱者」だと勘違いしている人もいる。非正規雇用が増えたのは自然現象ではなく、政策の選択の結果でしょ。ま、それを支持して選挙で勝たせたのだから、その意味では「自己責任」だけどね。

こんな意見が幅をきかせるようになると、生活保護バッシングと同じで、「社会保障を利用することは恥」という本末転倒な話になる。その結果、貧困は苛烈になり、経済は停滞し、社会は劣化していくわけです。

がんの危険因子はいくつかありますが、その中でも

  1. 過体重
  2. 運動不足
  3. 喫煙

は確実にがんのリスクをあげるといわれています。これって、長谷川氏の言う人工透析患者のダメなところと同じです。

糖尿病から膵臓がんになることも多いですよ。医者の忠告に耳を傾けず、運動もせず、不摂生をしたから、全員が確実に膵臓がんになるのですか?同じ生活をしていても糖尿病にも膵臓がんにもならない人は、どこが違うのですか。遺伝的に糖尿病になりやすい人はどうですか。

癌になったのも「自己責任」であって「弱者のふりをした卑怯者」なのですか。「本当の弱者」であり、がんにならないための生活をしてきた人とどのように区別するのですか。

他人が決めることなどできないのですよ。自分自身だって分からないのだから。

あっ、それから医者の忠告を聞かないで・・・と長谷川氏は言うが、糖尿病専門医が、これまでずっと「カロリー制限食」の糖尿病食を勧めてきた結果が、毎年、新たに16000人が糖尿病腎症から透析となり、3000人が糖尿病網膜症から失明、3000人が糖尿病足病変から下肢切断です。これらは患者は、ほとんどが日本糖尿病学会推奨の従来のカロリー制限で糖質の多い糖尿病食を食べている方々です。

医師の忠告が、日本糖尿病学会の推薦する食事なら、忠実に実行するとこのようなことになる。

米国では糖質制限食も治療の選択肢になっているにも関わらず、日本糖尿病学会は、いまだに「カロリー制限食」オンリーです。これって、そのような医者を選んだ患者の自己責任ですか?

やくざが生活保護を受給していると話題になったことがありますよね。その後、生活保護の受給要件は格段に厳しくなった。本当に必要な人に届いていない。

「隠れ貧困層」推計2千万人 生活保護が届かぬ生活

「社会保障制度を利用することは恥」という風潮で二千万人が生活保護を受給しない、できないという現状になってしまった。

「得をしないと損だ」とか、「あいつが得をしていることはけしからん」という考えを捨てることですね。そういうけしからん奴も含めて、制度全体として弱者を救済していく。そうでなければ経済も発展しないし、社会は閉塞感で下降に向かいます。

曾野綾子も介護バッシングを続けているけど、夫の三浦朱門が看護老人になって老老介護だとか。(それをネタにして稼いでいるけど)

寝たきりの老人が生きることには「なぜ、そんなに生かすのだ」「眠り続けているだけの老人を生かす費用は一体誰が出したのだ」と否定的意見が出るこの社会では、高齢者のジェノサイドが当然のように起こる。〈老人を抹殺することには、一種の社会的必然ができている。或いはそれは暗黙の社会的正義だと感じる層さえ出るようになった〉のだ。

ま、これ小説の中の言葉だけど、老老介護でホームヘルパーを利用することになったらしいが、ご自身の過去の発言とどのように折り合いを付けるのでしょうね。

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