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ウクライナ侵攻に思う

ロシアのプーチンによる国際法上でも違法で、残虐なウクライナ侵攻に対しては断固として糾弾するが、しかし、ロシアが「悪」で欧米の側が「正義」であるという歴史を無視した世論には異を唱えてきた。

またアメリカとしては、この戦争が長引いて、結果としてロシアが弱体化することを望んでいるのではないのかとも書いてきた。

同じような論調やコメントが増えてきているように思う。

トルコ外相は、「いくつかのNATO国がウクライナ戦争継続を望んでいる」と語っている。

4月20日、停戦交渉を仲介しているトルコの外相が「いくつかのNATO加盟国が、ウクライナ戦争が続くことを望んでいる」と表明した。その国名は明示していないが、アメリカであることは歴然としているだろう。
「いくつかのNATO国がウクライナ戦争継続を望んでいる」と、停戦仲介国トルコ外相... - Yahoo!ニュース

以下のように語ったという。

――しかし、NATO外相会談を通して、私はある印象を抱くに至りました・・・つまり、いくつかのNATOメンバー国は、戦争が長引くことを望んでおり、戦争を長引かせることによってロシアを弱体化させようと思っている(=ロシアを弱体化させるためにウクライナ戦争を長引かせようとしている)ということです。

Yahooニュース 2022/4/24

東京新聞「本音のコラム」を執筆中の師岡カリーマさんが、雑誌『世界』臨時増刊『ウクライナ侵略戦争—世界秩序の危機』(岩波書店)に寄せた巻頭文が話題になっている。

それを要約したものが、東京新聞「こちら特報部」に掲載された。

 特報面で「本音のコラム」を執筆中の師岡カリーマさんが、雑誌『世界』臨時増刊『ウクライナ侵略戦争—世界秩序の危機』(岩波書店)に寄せ...
師岡カリーマさん ウクライナ侵攻に思う:東京新聞 TOKYO Web - 東京新聞 TOKYO Web

 でも、これほど周到な戦争報道に始終触れていても当初から抱いていた疑問への答えはひとつも出てこない。むしろ困惑は募るばかりである。最大の問いかけはこれだろう—本当に避けられない戦争だったか。 ウクライナ支持だから嫌ロシア。逆に反米だからロシア擁護。ネット上の戦争談議を見ていると、白か黒かではない文脈には拒否反応を示すニュースの受け手が自信を増しているように思う。100パーセント同意できない意見を自動的に「悪」と見なして徹底的にやっつける権利を「善」である自分に与える。そのような風潮を、戦争がより鮮明にあぶり出す。特に今回は、そういう反応を引き起こしやすい、いやそういう反応を奨励する戦争になっているように思える。

 誰が加害者で、誰が被害者か、白黒のつけやすさゆえに、世界は自ら考えるという労を要さない安易な勧善懲悪の悦に浸りすぎてはいないか。加害者ロシアは独裁国家でプロパガンダ常習犯だからその言い分はすべて虚偽であり、被害者ウクライナとその支援国が言うことはすべて信じられるという安易な確信に甘んじ、安全な距離から感傷と独善に浸っていないか。これほど簡単に正しい側につける紛争はめずらしい。それをいいことに、メディアも政治も私たち市民も、考えることを放棄していないか。これが癖になって、次の戦争まで引きずりはしないかという不安も、強まるばかりだ。

 気がつくと、いつもは大国同士の利害をめぐる複雑な対立構造を紐解ひもといてみせるジャーナリズムがなりをひそめ、「自由と民主主義」対「強権政治」の戦いという、わかりやすい単純化が一流メディアでも定着している。この気安さは、今後私たちの価値観にどういう影響をもたらすのか。 繰り返すが、ロシアによる侵攻と非人道的な攻撃は言語道断だ。ウクライナの人々の悲劇には同情と憤りしかない。だからこそ思うのだ、この戦争を避ける努力は、本当になされたか。

ロシアのミサイル攻撃によって破壊された建物や遺体が散乱する現場から、即座に一般市民がSNS で動画をアップする時代である。

だからわかりやすい戦争である。しかし現場からの生の報道だけを見ていては、この戦争の歴史的な背景や、大国間の駆け引きなどは見えてこない。

クラウゼヴィッツの『戦争論』によれば、「戦争は政治の継続であり、外交の失敗によって起きる」のだ。

昨年12月、ロシア政府は、NATO東方への不拡大を定める条約案を作成し、米国とNATOに申入れたが、米国やNATOはこの要求を拒否した。ここでロシアは、外交交渉の余地なしと判断して、強制的にウクライナを非武装中立化させる方向に切り替え、侵攻に踏み切った。

ロシアがそのように判断したのは、旧ソ連崩壊後、ワルシャワ条約機構は崩壊したがNATOは引き続きロシアを敵国とみなして圧力を加えてきた歴史がある。

外交の失敗によって起きた戦争であり、双方が政治目的としての戦争を継続している。

そして一般市民は後ろ手に縛られて後頭部を撃ち抜かれ、地下室に避難した子供が手を縛られたまま焼き殺され、女性はレイプされた後に撃ち殺されているのである。

この戦争は避けることのできた戦争ではなかったのか。

シリアやイエメンでの内戦、ミャンマーにおける内線とその犠牲者に対して、どれほどの関心を向けてきたのだろうかも問われなくてはならない。

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