サイトアイコン 残る桜も 散る桜ー膵臓がん完治の記録

『からだの知恵』-W・B・キャノン

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権現堂堤の桜(4) 一面の菜の花畑


身体におけるホメオステーシス(生態における恒常維持)の概念を確立したことでよく知られている生命学者キャノンの『からだの知恵-この不思議なはたらき』にこんな記述がある。

スペアのない器官の安全度
膵臓は、からだが糖を適切に利用するために必要な内分泌物インシュリンを作る。前に述べたように、膵臓を完全に取り除くと、ひどい糖尿病がたちまちに起こる。しかし、膵臓の五分の四を切り取っても、糖尿病にはならない。すなわち、からだに必要なインシュリンを供給するには、わずか五分の一があればよいのである。

キャノンのこの著作は、初版が1932年で、70年も昔のものである。その後の生物学の進歩は著しいが、キャノンの業績は決して古くさくなってはいない。

私の膵臓も残っているのは五分の一程度であるが、インシュリンを分泌するにはこれで十分だということである。「ランゲルハンス島は膵体部と膵尾部に多く存在しているから、膵頭部だけではインシュリンは分泌されない」という一般的な解釈は誤りだということだ。(70年も前に分かっていたことじゃないか!!) いや、確かにランゲルハンス島の分布はそのようになっているかもしれないが、失われた臓器の部分になりかわって、残された部分で役割を果たそうとする機能が備わっている。これは肝臓や胃などの臓器でもよく知られていることである。

しかし、これは考えてみれば非常に不思議なことだ。残された細胞は、「同じ臓器の同種の細胞が失われたことを知ることができる」ということである。「部分が全体を知る」ことができるということである。細胞相互間に何らかの情報伝達回路があるということになる。キャノンはそれを「ホメオステーシス」の一部だといったのだが、その機序はまだ十分に明らかになっているとは言い難い。しかし、免疫学ではその仕組みが徐々に解き明かされようとしている。

アンドルー・ワイルは『心身自在』のなかで、「治癒系」としてその機能を説明している。DNAの自己修復システムから、損傷を受けた細胞膜のリソソームによる認識と除去・置換(治療)、けがの治癒(創傷治癒)にみられる組織の再生。これらは人体では頻繁に起きていることであり、生物が生きのびるために獲得した仕組みである。リアリティの任意のレベルで観察された真実のパターンは、あらゆるレベルにおいても真実である。「上なるものは下なるものの如く、下なるものは上なるものの如し」である。DNA、細胞、組織レベルでの真実のパターン=自然治癒力あるいは治癒系は、からだ全体でも真実のパターンとして存在するはずである。

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