長い正月休みですが、今年はどこにも出かける予定がない。今年もいろいろあったが、可もなく不可もなし。大掃除も終わったし、あとはのんびりとチェロを弾き、音楽を聴いて酒でも飲んで過ごすだけ。唐の詩人には大酒飲みが多い。李白に杜甫、陶淵明とみな酒を詠んだ漢詩がある。李白の「将進酒」は酒飲みには嬉しい詩だ。この一部を抜粋した、
人生得意須尽歡 人生意を得れば すべからく歓を尽くすべし
古來聖賢皆寂寞 古来 聖賢は皆寂寞(せきばく)
惟有飮者留其名 惟(た)だ飮者のみ 其の名を留むる有り
呼兒將出換美酒 児を呼び将き出だして 美酒に換えしめ
與爾同銷萬古愁 なんじとともに銷(け)さん 万古の愁いを
が、鹿児島県甑(こしき)島の芋焼酎「六代目百合」のラベルに書かれている。
現代語訳にすれば、こんな感じだろうか。
人生ってものは、楽しめるあいだに楽しむものなんだよ。
昔から賢者や聖人と云われた人もたくさんいたよ。でもね、死んでしまえばおしまいなんだよ。
ただ、大酒飲みだけがその名を残しているじゃあないか。
名馬や高価な衣装に値打ちなんぞがあるものか。使いの童に持って行かせて質草にし、美酒に換えてしまえ。
そうして諸君らと一緒に消そうではないか、遙か昔から変わらぬこの世の憂いを・・・。
五花の馬 千金の裘(かわごろも) 「名馬や高価な衣装に値打ちなんぞがあるものか」はラベルにはないのだが、現代語訳には付け加えてみた。
「六代目百合」は最近人気の焼酎だそうです。ストレートとロックで飲んだが、芳醇な香りと素直なのど越しに溜息をつきました。ちょうど「森伊蔵」が手に入って飲み始めたときで、さすがにこれも旨い焼酎だと正月用に残しておいた。しかし、「森伊蔵」なんかよりは「六代目百合」の方がはるかに高級でしかも素朴な味がする。のどに入った瞬間、芋の旨みと香りが広がって鼻から抜けてくる。酒は、甘味、酸味、辛味、苦味、渋味の五つの味を持つという。五味の調和が良い酒が銘酒といわれる。「森伊蔵」の足元を見るような高値に比べたら、こちらは良心的な価格だ。(両方とももらい物です!)
古代中国から現代まで、為政者や政治は本当に馬鹿げたことをする。福島原発事故からまだ2年も経っていないというのに、再稼働だの原発の新設だのと、学習能力の欠如した人物が国の頭になったのだから、来年は更に憂いが増しそうだ。科学は進歩しても人間の欲と性は変わっていない。普通のつましい生活ができればそれで良いだろうに、まだ経済成長の夢を見ている。3.11を境に日本は変わったのだ。戦前・戦後と言われてきたように、これからは「震災前・震災後」といわれるようになる。それほど歴史に残る出来事だということだ。
漢詩をつぶやきながら旨い焼酎で三が日を過ごすのも良いだろう。
みなさん、来年こそはよい年でありますように。政治には期待できないけど。
五味じまん 貴様か俺か 除夜の鐘
衣着て 年越し蕎麦に 嫁入りす