サイトアイコン 残る桜も 散る桜ー膵臓がん完治の記録

知らないほうが幸せ

flickrの無料容量が1Tバイトになったそうです。フルサイズの画像も閲覧できて、200枚の閲覧制限もなくなります。実は私のflickrアカウントも200枚の制限に達したので、しかたなくPicasaに2048ピクセルの画像でアップロードしていたのですが、ふたたびflickrに戻ろうと思います。

星峠のパノラマです。DP1Merrill、28mm相当の画角です。ちょうど上に電線が通っているので上下をカットしました。


先の記事に対してこのようなコメントが来ています。

家族にBRCA1・BRCA2変異を認めた乳がんの患者さんがいる場合、遺伝子検査の有効性は否定されていないはずです。また、母親が遺伝子変異を持つ乳癌でなくなっている件の女性が乳がんになる確率が0.4%というのは家族性腫瘍の特性を理解していない計算で、誤りである

この問題、専門家の間でも賛否両論あるのだと書いた通りですので、このような考え方があることは理解できます。日本乳がん検診学会の2012年ガイドラインが『乳癌発症ハイリスクグループに対する・・・』となっているように、乳癌発症のハイリスクグループに対してさえMRCA検査の特異度は77%です。つまり、23%は変異がないのに「ある」と診断されて予防的切除をするかもしれないのです。

また、「彼女の決断が正しいかどうかは、家族のがん履歴、乳房への愛着、伴侶の考え方など、多くの条件を考慮しなくてはなりません。」と書いた通り、0.4%という数字だけでジョリーさんの決断が間違っていると主張しているわけではありません。0.4%という数字が一桁くらい違うことがあっても、話の本質は変わりません。「家族にBRCA1・BRCA2の変異を認めた乳癌の患者さんがいる場合」でも、その家族のBRCA検査の精度が信頼できるものなのかを考えるべきでしょう。『“検査万能教”の悲劇を回避する』のいう特異度の罠にはまっているのではないでしょうか。したがって、「家族性腫瘍の特性を理解していない計算で、誤りである」とのコメントは『誤りである』。

結局は最終的には本人の価値観に委ねるしかないのでしょうが、その前提として、感度と特異度、有病割合を用いて計算できる真の「陽性反応的中割合」を知っておくべきだ、というのが私の考えです。更にいえば、予防的切除をしたら長生きできるというエビデンスは存在しないのです。エビデンスの存在しない治療法は臨床試験レベルでしかない。特をするか損をするか、データがそろう将来まで分かりません。

退院しました』にもで書いたことですが、アメリカでは、乳がんの多い家系で母親が乳がんになったというので、まだ思春期の娘の乳房を「予防的に全摘」することもあるらしいです。これってどうなんでしょうか? ここまでやるのか!と感じます。確かに乳房をなくしてしまえば乳がんの心配はなくなります。BRCA変異があると卵巣がんのリスクも増加するそうですから、卵巣も切除するのでしょうか? ジョリーさんもいずれ卵巣を摘出する予定だとか報じられています。家族に膵臓がん患者がいれば膵臓を全摘するのでしょうか? インスリンさえ投与すれば膵臓がなくても生きていけます。胃を全摘すれば胃がんの心配はなくなります。酒や好きなものを食べることを我慢すれば、これもなんとか生きていけるでしょう。脳を全摘すれば脳腫瘍の心配はなくなりますが、これは生きることは無理です。

そもそも「生きていること」自体が発がんリスクなのですから、生きることを止めますか? 出生前遺伝子検査でダウン症などのリスクが分かると、今話題になっていますが、これも同じ問題を孕んでいます。

「リスク回避社会」といわれる現状では、「リスクゼロ」を追求することが目標になっている風潮ですが、リスクは常に別のリスクとのトレードオフの関係にあります。清潔すぎる環境が花粉症などのアレルギー疾患を増加させています。放射能に汚染された魚やキノコを避けようとすれば、抗がん作用のある成分の摂取が減ることで、逆に発がんリスクが高まるかもしれません。

「知らないほうが幸せ」「知りすぎたための不幸」ということもあります。ま、これも私の個人的考えですが。

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