サイトアイコン 残る桜も 散る桜ー膵臓がん完治の記録

がんと霊(スピリット)、奇跡的治癒

確か長尾先生の『抗がん剤 10の「やめどき」』だったと思うが、余命2ヵ月と言われた患者が、抗がん剤が劇的に効いて6年後もピンピンしている。スーパーで会うたびに「先生は余命2ヵ月と言ったけど、この通り、元気です」とからかわれるのだと書かれていた。希だがこうした例もあるから、医者も効果のある抗がん剤を探して、何種類も試そうとするし、患者も「もしかしたら次の抗がん剤で・・・」と希望を持つ。そして「希望」が「執着」となり、死ぬ寸前まで抗がん剤を止められない。

ステージⅣbの末期の膵臓がんでも16年も生き続けている人もいるのだし、中にはがんが消えてしまうこともあるから、癌患者としては「自分にももしかしたら」と考えるのは人情だろう。

癌が消えた―驚くべき自己治癒力』には多くの驚異的回復・奇跡的治癒・自然寛解例が紹介されているが、それが起こる状況は人によりさまざまである。

驚異的回復について調べれば調べるほど、信念ーそれが治療に対してであれ、人、周囲の状況に対してであれ、システムに対してであれーが心(マインド)ー体(ボディ)ー霊(スピリット)の方程式の鍵となる変数であるように思われる。けれども精神的領域についての話は、しばしば不規則で抽象的で、科学的測定のしようがない。

ただ、一つのことは確かだ。霊(スピリット)は、実際に私たちが出会う中で明らかにされる、ということだ。一つの分子神経ペプチドが、同じ基本的メッセージを持ってからだの異なった場所に現れるのと同じように、霊(スピリット)も一つに限定されることなく、多種多様な局面で、自らを感知させる。

1910年の『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』誌にオスラー博士は、「目を見張るような、いわゆる奇跡といえるものですら、それほどめずらしくはない。私は、聖堂を造ったり、巡礼の起源となるほどの価値を持つような奇跡をたくさん知っている」と述べている。

ただしかし、これらの奇跡的治癒例を統計学のフィルターを通して測定すると、例外的症例、雑音として排除されるか、あるいはその他の多くの通常の症例に埋もれてしまうのであろう。

がんの統合医療』でも、

「こころと体」の療法が、患者の生存期間に影響を与えるかどうかは解明されていない。しかし、このアプローチが患者の生活の質(quality of life: 生活の質(QOL))を改善することが、一貫して数多くの研究で明確に示されいる。

しかし、

「こころと体」の療法は、リスクが最小限であり、十分なベネフィット(恵)があり、コストが低いので、あらゆるがん患者のケアの標準とすべきである。

われわれは、「こころと体」の療法をできるだけ診断直後に導入することが重要であると考える。その理由は、この療法が、1)患者に肯定的な視点と参加しているという自覚を与える、2)心配と過度の恐怖感から患者の意識をそらす、 3)患者に、希望をもつ理由があるというメッセージを伝える、4)患者の集中力が化学療法や放射線療法の影響を受ける前に、患者がこれらのスキルを学習し実践できる、からである。

としている。100に一つ、1000に一つの奇跡があったとしても、それは統計学では扱うことが難しい。

続いて、以下の療法に関しての効用を詳細に記述している。

  1. リラクセーション技法
  2. 誘導イメージ療法
  3. ソーシャルサポートと心理教育グループ療法
  4. 瞑想
  5. バイオフィードバック法
  6. 催眠
  7. 相互作用的イメージ訓練

「瞑想」に関して、ジョン・カバットジンの『マインドフルネスストレス低減法』では、次のように注意を喚起している。

「自分のストレスをコントロールし、病気と闘うために免疫システムを向上させたい」という期待をもって、多くの癌やエイズの患者たちが瞑想を始めようとしています。

しかし、私たちは、「瞑想で自分の免疫システムを強化できる」という強い期待をもつことは、実際には自分のもっている癒やしの力を十分に引き出すうえでの障害になる、と考えています。なぜならば瞑想は、ゴールをめざすものではないからです。あまりにも期待感や目的意識が強すぎると、瞑想の精神が損なわれ、効果どころか逆に障害になってしまうのです。瞑想の本質は”何もしない”ということです。何もしないで、あるがままに受け入れ、解き放つことによって、”全体性”を体験するのです。そして、これが治癒力の基礎となるわけです。

何が何でも治りたい、という気持ちは理解できます。しかし、それが強すぎると治ることは希である、ということになりかねません。奇跡的治癒は、それを目的にしている人には決して訪れることがないのでしょう。

12カ所の多重癌を経験した、東京新聞の元編集委員、村串栄一さんは『がんと明け暮れ―記者が綴る10年の記録』でこう達観している。

がんと明け暮れ―記者が綴る10年の記録

村串栄一
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なるようになるなら、なるようにする。

なるようにならないなら、成り行きにまかす。(こちらの記事)

治るか治らないかは、「成り行き」なのです。やるべきとことやったら、成り行きを受け入れる。こうした心(マインド)で、”今ここに”ある瞬間を大切に生きる手法が瞑想なのでしょう。

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