サイトアイコン 残る桜も 散る桜ー膵臓がん完治の記録

ピリオド法とは?

先日の記事「サバイバー5年相対生存率」でピリオド法なるものに言及した。「ピリオド法(period analysis)」とは、大阪府立成人病センターの伊東ゆり氏らが近年積極的に紹介している”最近の治療成績を反映した生存率を推計する方法”である。

【2014 年10 月21 日】 大阪府立成人病センターの伊藤ゆり研究員らのグループは、我が国を代表する大規模がん患者データベースである 6 府県の地域がん登録資料を用いて、最新のがん患者の 10 年生存率およびがんサバイバーのための生存率を発表しました。これまでがん患者の治療成績は5 年生存率として報告されてきましたが、がん患者はより長期に生存が可能となり、がんサバイバーのための情報が求められています。これを受けて、最新の医療の状況を反映したがん患者の長期生存率が、23 種類のがんについて、性別・年齢階級別・進行度別に網羅的に報告されました(Cancer Science、2014 年 10 月 18 日)。

医学の進歩や分子標的薬などの新しい抗がん剤の登場によって、がん患者の生存率が向上し、診断されてからの経過年数に応じた生存率(がんサバイバー生存率)が重要な指標になりつつあるが、これまでの「がんと診断されてからの5年生存率」は、こうした患者や医療者のニーズを満たすものではなかった。

10年生存率を算出するには、10年以上前にがんと診断された患者を、10年以上にわたって追跡する必要があり、その間の医学の進歩を考えると古いデータと新しいデータが混在することは致し方なかった。

「ピリオド法」はこうした弱点を克服し、より最近の情報に基づいた生存率を推計するための方法としてドイツのBrennerらにより1996年に発表され、2000年頃から普及し始め、今や国際標準と位置づけられている(らしい)。


従来の方法(コホート法)では、3年分のデータをプールして10年生存率を算出するためには、図1の実線部分のデータを使って算出していた。地域がん登録では従来この方法で算出していた。10年以上前の古いデータも含まれることになる。

全データ(図の三角形の点線部分)を用いて算出する方法はコンプリート法と呼ばれ、臨床試験では多くがこの方法をとっている。これも古いデータを含まざるを得ない。ピリオド法は図1の太い点線で囲まれた直近の3年分のデータを使って(1~10年生存の患者が含まれている)算出する。

こうして最新のデータを使って10年の長期生存データを求めることが可能になる。

それぞれの手法による生存率の違いが図2である。ピリオド法の生存率が一番高くなっている。つまり、医学の進歩によって生存率は上昇しているということになる。先日の記事「サバイバー5年相対生存率」で紹介した図は、ともに2002~2006年のデータからピリオド法で算出した10年相対生存率およびサバイバー5年相対生存率である。私が膵臓がんと診断された2007年以前のデータであるから、現在ではもう少し成績が良くなっていることが予想される。

今後は「生存率グラフ」を見たときに、どの手法で算出されたものなのかという視点で考えることも必要になろう。

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