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がん診療拠点病院で免疫療法をやってはいけない、は誤解

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がん拠点病院で保険適用外の免疫療法が行われているのは問題だ、という報道がありました。例えば10月3日付の毎日新聞では、

    全国に約430あるがん拠点病院のうち、5病院が有効性の確立していない保険適用外のがん免疫療法を臨床研究ではなく、自由診療として行っていたことが、厚生労働省の調査で分かった。
拠点病院は、地域の中核として質の高い医療を行う病院として位置づけられ、有効性が確認されている標準治療の提供が求められている。厚労省は、拠点病院で有効性の確立していない治療を実施する場合は、原則臨床研究として行うよう指定要件を見直す方針。

と報じられています。

ところが、この記事の元となった厚生労働大臣の定例記者会見の詳報を見ると、
厚生労働省 公報「H29.10.3 加藤大臣会見概要」

(記者)
がんの拠点病院について伺います。一部の病院で、国で確認されていない治療法を実施しているところがあるということですが、今日の検討会で議論されるとのことですが、まず事実関係と大臣の所見をお願いします。
(大臣)
一部のがん診療連携拠点病院において、有効性などが確認されていないがんの免疫療法がされているとの報道があったわけですが、一般論としてがんの免疫療法はがん患者自身の免疫力を高めることで、がん細胞を排除する新しい治療法ということであります。しかし中には、未だ十分に科学的根拠が蓄積されていないものもあります。

がん診療連携拠点病院では、臨床研究・治験の枠組みで免疫療法を行う、また、標準治療を行った後に、自由診療として免疫療法を行うことは否定されていません。厚生労働省としては、まずはがん診療連携拠点病院等は、全部で434ありますが、これらについて免疫療法を実施しているのか、どういう形で実施しているのか、これについて速やかにまず調査をしたいと思っております。

いまご指摘ありましたがん診療連携拠点病院における免疫療法の取扱いについては、本年8月に開催された「がん診療連携拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ」において、検討すべき課題として指摘をされておりました。明日、更にご議論をいただきたいと考えており、そうした議論と調査結果を踏まえて、対応を考えてきたいと思っております。

がん拠点病院は全国どこでも均質ながん治療を提供することが目的(均てん化)であり、基本は標準治療を行います。これは当然のことです。それ以外の新しい治療は、臨床研究として行うべきです。これも当然のことです。

しかし、読売の記事

「有効性や安全性が確立していない保険適用外のがん免疫療法について、厚生労働省は、国指定のがん診療連携拠点病院では臨床研究としての実施を原則とする方針を決めた。」

は、怪しい免疫療法を行っているがん拠点病院があるともとれ、厚生労働省が免疫療法を否定しているかのようにもとれます。厚生労働省は、けっして免疫療法全体を否定しているのではないのですが。

「がん患者に最後まで寄り添う、けっして見放さない」とスローガンにあげるが、標準治療が終わったら「あとは緩和で・・・」という医者と、「免疫療法ならうちでもできるから」という医者のどちらが患者にとって救いになるか、言わずもがなだろう。

なかには病院の片隅で培養キットを使って免疫細胞を培養しているような、怪しげなクリニックも存在しますから、悪貨が良貨を駆逐することになるのでしょう。

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