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がんペプチドワクチン:効果示せず

初の市民寄付による臨床研究

「市民のためのがんペプチドワクチンの会」は一般寄付を募って、食道がんと膵臓がんに対するがんペプチドワクチンの臨床研究がスタートしたのは、2013年9月でした。

しかし、寄付の目標額3000万円に達せず、「市民支援型寄付講座」は休止となりましたが、臨床研究は和歌山医科大学外科学第2講座の研究として継続され、2017年9月に終了しました。

その臨床研究の結果総括が「市民のためのがんペプチドワクチンの会」のサイトにアップされています。

臨床研究論文に匹敵する詳細な内容です。

この講座では3つの臨床研究が施行されました。

  1. 食道がんを対象に多施設共同研究として施行した「標準療法不応または不耐の進行・再発食道がんに対する新規腫瘍抗原URLC10およびKIF20Aと腫瘍新生血管関連遺伝子VEGFR-1およびVEGFR-2由来ペプチドを用いた新規ペプチドワクチン療法」
  2. 膵がんに対して多施設共同で施行した「初期治療としてGemcitabineで治療する膵臓がん患者に6種類のmulti-peptides cocktailを併用する第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験」
  3. 膵がんに対して単施設で施行した「S-1の隔日投与療法を併用するペプチドワクチン療法の第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験」

です。

がんペプチドワクチンの効果は証明されず

研究の結果は、食道がん、膵癌ともにがんペプチドワクチンの効果は証明されないという結果になりました。

という、ある程度は予想されていたとは言え、残念な結果でした。

免疫細胞療法クリニックは生き残れるか?

免疫療法はネオアンチゲンへ

今後の方向として、免疫寛容による耐性を生じにくく、がん細胞においてのみ発現し免疫系によって認識される抗原=ネオアンチゲンを利用することです。

欧米を中心にして(日本はまったく遅れているが)、全エクソン解析による、患者個人の腫瘍に会わせたネオアンチゲンを特定し、治療用のがんワクチンを作成する開発が急ピッチで進んでいます。

今回の研究でも、びらんや潰瘍が生じる皮膚反応が生じた患者の生存期間延長が示唆されていますが、遺伝子解析により、より有効な対象患者、患者に会わせたワクチンの開発が現実のものになれば、有効な治療法となる可能性があります。

免疫細胞療法クリニックは治療データの公開を

効果が証明できなかったとはいえ、県立和歌山医大のチームが詳細な報告書を出したことは評価できます。

わずか20症例程度の第Ⅰ、Ⅱ相試験でしたが、きちんと解析して発表することは、命を賭けて研究に参加した患者への責務でしょう。

一方で、巷の20世紀の免疫細胞療法を続けているクリニックは、詳細な治療データを出そうとはしません。

腫瘍が一時的に縮小した症例は紹介していますが、がん患者が知りたいのはその分母です。

何人の患者に治療をして、そのうちの何人に効果があったのか、完治した例は何パーセントなのか、生存期間は抗がん剤治療に比べてどのくらい延びるのか、これががん患者の知りたいことです。

この程度のデータなら、すぐにでも出せるはずです。数百人規模のランダム化比較試験をしろなどという無理な要求ではありません。

出せるデータも出さずに、高額な治療費を請求するのは、医療詐欺といわれても致し方がないでしょう。

全国紙に全面広告を出したり、BS12 トゥエルビで持ち込み企画の番組を放映する資金があるのなら、少しは研究データをまとめて公表する方に回してはいかがなものか。

遺伝子解析やネオアンチゲンを取り入れて研究し、結果を査読のある雑誌に発表する姿勢を持てなければ、患者の信頼も得られず、免疫細胞療法クリニックは10年後には存続できないだろう。

  • 免疫細胞療法に延命効果はありません。(瀬田クリニックが認めている)
  • 免疫細胞療法は、延命効果を追求せず、QOLを維持するのが目的です。(リンパ球バンクが言及している)
  • もしかするとQOLの維持に有効かもしれない。

こちらの記事も参考に。

あちこちで免疫細胞療法が話題になっていますね。きっかけはITmediaビジネスのこの記事です。ここでは記事の中身にはあまり触れませんが、ITmediaビジネスはソフトバンクの子会社です。代表取締役社長兼CEOは、孫正義社長の戦略秘書、社長室長を務めた大槻利樹氏。確かに、「免疫療法」をうたって、科学的根拠のない治療を提供している悪徳クリニックが存在しているのは事実だ。そのおかげで、日本では「免疫療法=怪しい治療」という認識が社会にすっかりと定着しているわけだが、世界を見渡せば、この認識はかなり時代遅れというか、...
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免疫細胞療法を受けずに、抗がん剤治療だけで5年、10年と元気でいる膵臓がん患者は、旧『すい臓がんカフェ』(現在は『膵臓がん患者と家族の集い』)に参加したことのある方だけでも、4人以上います。抗がん剤と免疫細胞療法を受けて5年以上生存している患者よりもはるかに多いのです。

この程度の治療法に数百万円もかけるのは馬鹿げているし、その金で温泉旅行にでも行った方が、よほどQOLが維持できます。白衣を着た詐欺師たちに騙されないようにしましょう。

「私にはお金がないから免疫細胞療法を受けられない」と、悲観する必要はまったくありません。

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