サイトアイコン 残る桜も 散る桜ー膵臓がん完治の記録

ラフマニノフ 『ある愛の調べ』

19日に封切られた映画、ラフマニノフ 『ある愛の調べ』を観ました。それでここ数日はラフマニノフ のピアノ協奏曲を聴き続けています。

映画を観た余韻が冷めないうちにと、持っているラフマニノフのCDを探したら、4枚もあり、ピアノ協奏曲第2番が3枚に収まっていました。①ラフマニノフ自身のピアノ演奏で、1929年の公演、これはSPレコードからの復刻版なので音は良くない。②アシュケナージがコンセルトヘボウ管弦楽団と競演したもの。③リヒテルがワルシャワフィルと競演したもの。

気がついたら第一番を3枚も集めていた訳です。このなかではやはり③のリヒテルの演奏がぴか一でしょうか。リヒテルについて宇野功芳は、『頑健な田舎の名士といった感じで、・・・健康的にすぎ、骨太にすぎ、デリケートな情感や寂寥感など、クスリにしたくもなかった』と散々にこき下ろしていますが、リヒテルのラフマニノフピアノ協奏曲第一番は別格で、『このもってりとした暗い情緒やムードはリヒテル以外のピアニストからは聴けない』と絶賛しています。『壮年時の彼は、往年のラフマニノフを偲ばせる、巨大としか表現のしようがないテクニックで聴く者すべてを興奮の渦に引きずり込んだ』とも。

中野雄も晩年のリヒテルについて、『なぜああいう歳のとり方をしてしまったのか–私にはまったく理解ができない。』と突き放しています。しかし宇野と同じく壮年期のラフマニノフを弾いた演奏はすばらしいと評価。そのCDが③で、これにはチャイコフスキーの第一番もカップリングされています。この世紀の名演奏が二つもそろって1800円だから、いい世の中になったものです。巨匠ホロヴィッツの演奏(これはピアノ協奏曲第3番ですが)もダイナミックですが、ロシア的情感はリヒテルにかなわないのかもしれません。

そうでした。映画の話題を書くつもりだったのですね。キーワードはライラックの花です。少年期をライラックの咲く庭を持つ家ですごし、歳上の女性アンナに恋したときにライラックの花束をいつも捧げていました。亡命したアメリカで作曲に行き詰まったとき、知らない女性からライラックの花束が送り続けられます。するとライラックが「魔法の花」であるかのように、ラフマニノフは元気を取り戻して演奏会をやり遂げることができるのです。

ロシア革命のことも、亡命の理由もはっきりとは描かれてはいませんが、カーネギーホールでのコンサートにソ連大使が来ていることを知ると、演奏をその場で中止しようとするのです。「彼は私のたくさんの友人を殺した人物だ」舞台から告発します。

女性革命家で、彼のピアノの生徒でもあるマリアンナ(?)と逢引きをしていて、チャイコフスキーとの夕食をすっぽかしてしまいます。そして恩師の家から追い出されて・・・。このチャイコフスキーの第一番とラフマニノフの第二番のピアノ協奏曲が一枚のCDにドッキングしているのも何かの縁でしょうか。

映画にはきれいな旋律の曲がたくさん出てきます。彼のパガニーニの主題による狂詩曲・ショパンの練習曲など。

天才の繊細な神経と悩みの内面を巧みに映像化しています。最後のシーンはすばらしいです。ヒロインはライラックの花です。ライラックの花束を贈り続けた女性は・・・・・・? この映画の原題も「LILACS」となっています。

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