サイトアイコン 残る桜も 散る桜ー膵臓がん完治の記録

中村祐輔教授、国立がん研究センター研究所所長に

Biotechnology Japanにこんな記事がある。

「患者さんが絶望するがんセンターではなく、患者さんに希望を与えるようながんセンターになるように、研究所は縁の下の力持ちとなって支援する」

金曜日の夜、辞令が交付されたばかりの、国立がん研究センター研究所の中村祐輔所長とインタビューを行いました。2時間もインタビューしましたが、結論は冒頭の発現に凝集されています。NHKの朝のニュースにも登場する中村所長に本当に縁の下の力持ちとなるのか?と念押ししましたが、堅い決意を示していました。

従来の基礎研究と臨床研究が乖離していた状況を、何とか変革して、新しい抗がん剤や治療法の開発に貢献する旗を掲げました。マウスの研究に終始するのではなく、患者さんに成果を返還するトランスレーショナル創薬と、患者毎の遺伝的背景やライフスタイルに応じた個の医療を実現を目指すと、抱負を語りました。

抗体医薬や分子標的医薬で全敗(アクテムラを除き)してしまった我が国の製薬産業に、喝を入れる新しい研究の流れが、独立行政法人となった国立がん研究センターの研究所から発せられることを期待したいと思います。勿論、国立がんセンターの研究所は歴史もあり、人員も研究員100数十人、総員200 人程度の研究所が一体、新しいミッションに対して、どう心を揃えて動き出すかは、そんなに簡単なことではないでしょう。中村所長の奮闘に期待したいと思います。

ベンチャーの活用が鍵を握っています。中村所長もオンコセラピーというベンチャー企業の創業者であり、研究所長なのか?ベンチャーの役員なのか? という利益相反に巻き込まれます。ファイアウォールが絶対必要ですが、「4月1日にオンコセラピーの役員を辞任した」(中村所長)と、身辺整理も行っていました。東大教授との兼任ではありますが、大きな覚悟を持って国立がん研究センターの研究所長に就任したと考えてよいでしょう。

現在の国立がん研究センターを頂点とする標準治療では「患者さんが絶望する」というのは中村教授らしい発言ですね。少なくとも「希望を与える」ような治療法ではない。昨年3月の国立がんセンター主催の講演に招かれた中村教授は「今の標準治療によってがん難民が増えている、私がこのドワクチンを開発しようとした
動機も、標準治療では救えない、再発後はいくつかの抗がん剤が効かなくなると『後はホスピスですね』と言われがん難民になっていく。こうした状況を何とか
したいということだったのです。」と発言されたので驚いたものでした。当時の土屋院長も同席していたのですが、国立がんセンターの講演会に招かれて、そのがんセンターの運営方針を批判する勇気のある方だと思った次第です。エビデンス万能、エビデンス至上主義に陥ったら、そこには「失望の文化」が待っている。

ネットにはこんなつぶやきが載っています。

国立がんセンターの友人が研究室に来た。共同研究開始となった。嘉山理事長になり、風通しが良くなったと感じる。以前なら、「誰か反対するから出来ない」みたいな議論が多かった。中村祐輔先生が所長に就任し、これまでの国立がんセンターの研究レベルじゃ、話にならないと実感したのもあるだろう。

友人から「国立がん研究センター研究所のスタッフが、中村祐輔先生に恐々としている」と聞いた。中村先生はシンガポールと米国が招聘を画策した世界的スター。彼の赴任によって、築地が医学研究の情報交差点になる。皆さん、もっと面白くなること請け合い。何しろ、私は彼と働いて面白かった。

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