サイトアイコン 残る桜も 散る桜ー膵臓がん完治の記録

今日の一冊(10) 『院内カフェ』

このところ、膵癌の方で亡くなったり再発したりが多いような感じです。気が滅入ります。膵癌って本当にやっかいな病気ですね。今夜あたり、ペルセウス座流星群がペピークだというから、流れ星にお願いでもしようかな。

院内カフェ (朝日文庫)

中島たい子
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最近の大病院では、院内にコンビニもあればカフェもある。がん研では有楽町にある「東京會舘」がレストランを出している。一昔前の「あるだけましだろ」とでも言いたげな「売店」とは様変わりしている。

院内カフェは、病院でもないし普通のカフェでもないという少し中途半端な異空間。そうした院内カフェを舞台にした中島たい子の書き下ろし小説『院内カフェ』。

主人公の相田○○は間りん子というペンネームを持つ売れない小説家。土日だけこの院内カフェでアルバイトをしている。

うるめいわしのような目をした”ウルメ”は「ここのコーヒーは・・・うん、カラダにいい。ビョーインだから。ここのコーヒーはカラダにいい・・・」と、いつも本日のコーヒーしか注文しない。どうやら精神科的な既往歴がありそう。袖まくりの毛深い腕をカウンターにどんと置いたレジデントは、「カプチーノ、M。ショット追加」である。こいつは”ゲジデント”。みんな「普通ではない」人ばかり。

店長の村上君、これもなんだか不思議な人物で、結構な読書家らしく、いつのまにか相田が小説家だということをかぎつけている。

病院のカフェにふさわしそうで、仲の良さそうな夫婦が入ってきた。しばらくして突然、奥さん・朝子が旦那にソイラテをぶちまける。両親の介護に疲れていた朝子は、両親が亡くなったあと、さらに旦那が潰瘍性大腸炎になったことで、「人の世話で自分の人生が費やされていくことに耐えられない」と、旦那に離縁状を書く。

最後はクリスマスのミラクルプレゼントで、暖かく終わるのだが・・・・。

「病人は残酷だ」という言葉が残っている。がん患者のパートナーもそんな想いをすることがあるに違いない。

病気はその当人が向き合うべきもの。介護する人は結局、「あなたの病にのまれないように、巻き込まれないように」することが大切。「院内カフェ」のように、治療に関わるわけでもないが、お客が患者でも健常人でも同じサービスをする。病む人がいつでも入れるように病院に寄り添ってはいるが、病院とは独立している。そんな存在で良い。

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