サイトアイコン 残る桜も 散る桜ー膵臓がん完治の記録

お節介

千鳥ヶ淵緑道での撮影の帰り、電車の中でのできごと。

優先席に若い女性が座っていたところへ、老婦人と赤ん坊を抱いた夫婦が前に立った。すると、爺さん(とは言っても私と同じ年代)が、丸めた新聞紙で、若い女性の鞄を叩きながら、「席を譲るべきだ」と強い調子で言った。その女性はいちど席を立ったのだが、老婦人は遠慮して座らなかった。若い女性は再度席に座って涙を流していた。くだんの爺さんもばつが悪いらしく、移動してしまった。

優先席だから、若い者は席を譲れって、常識には違いないが、でもね。外見では分からない病気をもった若者もいるだろうし、抗ガン剤の副作用を抱えているのかもしれない。

こんなとき、どうすべきか。難しいよね。私だったら自分が席を譲るだろうなぁ。その爺さん、相手がやくざ風の男だったとしても同じようにしただろうか。

お節介と言えば、がん患者へのお節介も困った問題です。「がんにはこれが効く」とかいって、サメの軟骨やフコイダンだのアガリクスを薦めて、親切にも宅配便で送ってくる御仁もいる。そりゃ、一応ありがたく戴きますよ。でもね。できれば治るまでずっと送り続けて欲しい。高価ながんに効くという食品を摂り始めたら、途中ではやめられなくなるんです。「もしかしたら効いているのかも」と考えたら止められない。だから、親切に代替食品を送るのであれば、死ぬまでずっと送って欲しい、と言いましょう。

ちなみに、スミソニアン研究所の記録には、サメはまちがいなく軟骨のがんになると記録されている。前提が間違っているのだから効くはずがない。

友人やそのまた友人から全国の「がんに効く」サプリメントが届く。あまりに多くて全部を摂っていると腹が一杯で食事が取れない。副作用で肝臓がやられてしまう。抗ガン剤の副作用とダブルパンチだ。

本人への確認もなしに、いきなり病室へ面会に来る。丁寧に病院では禁止の花束を持ってくる。花瓶もないのにこの花、どうするんだ。面会はこちらから「会いたい」とお願いした人だけにして欲しいものだ。

いちばん困るのは、遠い親戚が病室に突然現れて、祈祷師や霊能力者を紹介するという、果ては「こんな病院にいては死んでしまう。俺が名医を紹介してやる」とか「もっと親身になって介護をせないかん」とか勝手放題を言って、自分の知識をひけらかそうとする。挙げ句には、主治医に向かってなんだかんだと、的外れの注文を付ける。

こんな遠い親戚に限って、なんの援助もしないで、死んだあとには「俺の言うとおりにしなかったからだ」とさらに家族を責めるから堪らない。

お節介もここまでくると嫌がらせかと言いたくなる。

がんに悩んでいる暇もないほど、がん患者にはいろんなできごとが起こるものだ。

モバイルバージョンを終了