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高齢のがん患者は早く死ねか?

毎日や読売が報じていますが、高齢がん患者には抗がん剤治療の効果が疑わしいから、調査をするとの方針だ。

 政府は、高齢がん患者に対する抗がん剤治療の効果について大規模な調査に乗り出す方針を固めた。高齢者にとって身体的な負担の重い抗がん剤投与による延命効果を疑問視する声もあるため、大規模調査に基づく科学的分析が必要と判断した。高齢化が進む中、がん治療のあり方に一石を投じる可能性がある。【秋本裕子、岡大介
高齢がん患者:抗がん剤治療の効果調査へ 延命効果検証  - 毎日新聞 - 毎日新聞

確かにガイドラインやエビデンスの元となる臨床試験の対象者は、身体状況の良い70歳以下の患者が対象だから、高齢がん患者についてのエビデンスはない。

しかし、暦上の年齢だけで一律に治療を受ける、受けさせないと決めるのは、最近の個別化医療の考え方とも相容れない。要するに高齢者で進行がん患者には何もしないで緩和ケアを受けさせておけば良いという考えらしい。年齢ではなく、遺伝子解析など個別化されたがん医療によって、効果のあるなしが判断できる時代がすぐそこまできているというのに。

堀田知光・がん研究振興財団理事長の話「抗がん剤治療に適した高齢患者と適さない患者を見極め、それぞれに合う治療法を確立するべきだ。高齢者によく見られる、遺伝子の働き方を分析し、新治療法を開発することが重要になる。

という、国立がん研究センター 前理事長の堀田氏の指摘がもっともだ。

確かに抗がん剤で生活の質(QOL)を落として、延命どころか命を縮める患者もいるに違いない。しかし、治療への希望を奪われた高齢がん患者はどうなる。治療効果を検証するというが、治療効果とは時間の長さだけの尺度で測れない。生活の質×時間の長さではないのか。

あるいは、高齢がん患者を対象にした低用量抗がん剤治療の臨床試験か調査をするのいうのはどうだ。副作用も抑えられるし、もしも効果が確認できたならば、医療財政も削減でき、高齢がん患者にも希望を与えられる。一石二鳥だろう。

低用量抗がん剤治療にはエビデンスがない、という非難に対して、政府の予算でエビデンスを確認するわけだ。これは我ながら名案だ。

私も戦後の団塊の世代である。必死でこの国や家族を支えてきたという自負がある。そして高齢になれば、当然がんなどの病気になる。若いころに無理をしているからなおさらだろう。国民が高齢化すれば医療費が増えるのはあたりまえだ。優秀な官僚たちが、それを予測できなかったはずはあるまい。だとしたら、長期的に財政的対策を考えておくべきではなかったのか。要するに、今日の事態を招いたのは政府や厚労省の「無策」が原因である。

それを、枯れ木に水をやるのはムダとばかりに、医療費削減の思惑が透けて見える対応を押し進めようとする。厚労省の思いを忖度して旗振りをしている国立がん研究センターは、理事長が替わってからひどくなった。患者中心の医療ではなく、厚生労働省の方ばかりを向いていないか。噂では厚労省から来ている事務方のトップが理事長よりも強い権限を持っていて、逆らえないと聞く。

昔の「がん難民を作るがん研究センター」に逆戻りしてしまったようだ。

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