朝日新聞アピタルの大野智先生の記事「なぜ代替療法に頼る? がん患者の不安、医師の理解は」
がん患者さんには「健康食品のことを主治医に相談できず悩んでいる」
これは確かにありますね。「止めろ」と言われるのではないか、あるいは「どうせ相談したって、医者は代替医療のことは勉強していないだろう」とも考えるのです。
患者が補完代替医療を選択するのは、
- 自分でも何かできないかと思って
- 免疫力をアップすれば、がんが治るかもしれない
- 抗がん剤治療の副作用を少しでも減らしたくて
等の動機ですが、底には患者の不安感があります。その不安感を、医者はくみ取れていないのでしょう。
大野先生は、
筆者からは、補完代替療法に関しても、「通常の診療と同じように『科学的根拠に基づいた医療(Evidence-based medicine:EBM)』を参考に、患者さんとともに『利用する・しない』の意思決定をしてはどうか」とお話ししています。
と言われていますが、その通りです。補完代替医療ですから、当然確たるエビデンスはないわけですが(あれば標準医療になっている)、それでもある程度の科学的根拠を持つものもあるのです。
補完代替医療に対するランダム化比較試験も、近年急激に増加しています。
こうした情報を上手く活用するには、『「健康食品」の安全性・有効性情報』にある「素材情報データベース」を活用することです。
メラトニンを例に取れば、「免疫・がん・炎症」の項にはこのように書かれています。
もちろん否定的な研究が多いのですが、なかには、少数でも効果が期待でそうな研究を見つけることができます。
あるいは、国立がん研究センターのサイトには、代替医療の研究結果がニュースとして載っています。
国立がん研究センターの多目的コホート研究で、緑茶・コーヒーと死亡率の関係が明らかにされました。緑茶を習慣的に摂取する群において、男女の全死亡リスクが低い緑茶は、日本で広く飲まれています。これまでに循環器疾患やがんとの関連について研究が行われてきましたが、健康の指標となる全死亡や主要な死因との関連についてはあまりよく分かっていません。そこで、多目的コホートの40~69歳の男女約9万人を研究開始(1990年または1993年)から2011年まで追跡した調査結果をもとに、緑茶の習慣的摂取と全死亡・主要死因死亡リスクと... 緑茶で死亡率減少:がん研究センター - 残る桜も 散る桜ー膵臓がんサバイバーの記録 |
こうした情報を活用してはいかがでしょうか。
大野先生は、医者に相談しづらければ、がん相談支援センターや看護師、薬剤師、栄養士に相談しなさいとも書かれています。
しかし、実際に私も相談したこともあるのですが、あまり頼りにはなりませんでした。
というのは、市販のEPA/DHAを服用しても良いかとの疑問に対して、「抗がん剤の治療中は駄目です」との回答でした。その一方で、「プロシュア」を勧めてくるのです。
「中身は同じでしょ」と言いたくなります。ま、この程度です。
看護師や栄養士が、最新の情報を持っていると期待することは無理でしょう。
ピアサポートや患者会も利用しなさいと推奨していますが、むしろ患者の体験談を聞くほうが役立つに違いありません。
しかし、患者会と言っても千差万別、中には怪しげな治療法を勧めるクリニックと連携しているところもあると聞きますから、活動資金の出所など、十分な確認が必要でしょう。
『膵臓がん患者と家族の集い』では、次々回あたりに、こうした情報の探し方をテーマに講演を開催することも考えています。