がん患者は不安だから補完代替医療に頼る?
朝日新聞アピタルの大野智先生の記事「なぜ代替療法に頼る? がん患者の不安、医師の理解は」
がん患者さんには「健康食品のことを主治医に相談できず悩んでいる」
これは確かにありますね。「止めろ」と言われるのではないか、あるいは「どうせ相談したって、医者は代替医療のことは勉強していないだろう」とも考えるのです。
患者が補完代替医療を選択するのは、
- 自分でも何かできないかと思って
- 免疫力をアップすれば、がんが治るかもしれない
- 抗がん剤治療の副作用を少しでも減らしたくて
等の動機ですが、底には患者の不安感があります。その不安感を、医者はくみ取れていないのでしょう。
大野先生は、
筆者からは、補完代替療法に関しても、「通常の診療と同じように『科学的根拠に基づいた医療(Evidence-based medicine:EBM)』を参考に、患者さんとともに『利用する・しない』の意思決定をしてはどうか」とお話ししています。
と言われていますが、その通りです。補完代替医療ですから、当然確たるエビデンスはないわけですが(あれば標準医療になっている)、それでもある程度の科学的根拠を持つものもあるのです。
補完代替医療に対するランダム化比較試験も、近年急激に増加しています。

アピタルのページから引用
こうした情報を上手く活用するには、『「健康食品」の安全性・有効性情報』にある「素材情報データベース」を活用することです。
メラトニンを例に取れば、「免疫・がん・炎症」の項にはこのように書かれています。
もちろん否定的な研究が多いのですが、なかには、少数でも効果が期待でそうな研究を見つけることができます。
あるいは、国立がん研究センターのサイトには、代替医療の研究結果がニュースとして載っています。
こうした情報を活用してはいかがでしょうか。
大野先生は、医者に相談しづらければ、がん相談支援センターや看護師、薬剤師、栄養士に相談しなさいとも書かれています。
しかし、実際に私も相談したこともあるのですが、あまり頼りにはなりませんでした。
というのは、市販のEPA/DHAを服用しても良いかとの疑問に対して、「抗がん剤の治療中は駄目です」との回答でした。その一方で、「プロシュア」を勧めてくるのです。
「中身は同じでしょ」と言いたくなります。ま、この程度です。
看護師や栄養士が、最新の情報を持っていると期待することは無理でしょう。
ピアサポートや患者会も利用しなさいと推奨していますが、むしろ患者の体験談を聞くほうが役立つに違いありません。
しかし、患者会と言っても千差万別、中には怪しげな治療法を勧めるクリニックと連携しているところもあると聞きますから、活動資金の出所など、十分な確認が必要でしょう。
『膵臓がん患者と家族の集い』では、次々回あたりに、こうした情報の探し方をテーマに講演を開催することも考えています。
記事中の
「これは裏を返せば今の医療現場は、患者さんの不安に対して十分な対応ができていないことを意味していることにもなります。患者さんが補完代替療法を利用してみようと考える原因は、突き詰めていくと、医療者側にあるのかもしれないのです。」
これは大きく頷けます。
病気を治すのは一番大事なことかも知れないけれども、それを抱えてしまった不安や、生活の不安、さらには治療効果が上がらない場合の不安・不満。
これらは、闘病中すごく重大なことですからね。
「私も治療チームの一員として、自分ができることをしたい」、私の場合はこうした意識が強かったですね。もちろん再発の不安はありましたが、しかし自分のできることをした結果、それでも再発するのならしかたがないと受け止めていました。
自分でも出来ることをやっているって、患者には大切なことだと思います。
たとえそれがインチキ治療であってもですが、できるなら、少しでもエビデンスのあるものを試して欲しいものです。
このブログをそうした思いで書いています。