サイトアイコン 残る桜も 散る桜ー膵臓がん完治の記録

白衣を着た詐欺師

がんセンターで、ステージⅣの膵臓がんが見つかり、余命は半年と言われた50代の男性の例です。

標準治療では長生きができないとわかり、セカンドオピニオンを申し出て、免疫細胞療法のクリニックを受診しました。

そこのクリニックの先生はこう言ったそうです。

こんな言葉にコロッと騙されてしまいました。

そして、免疫療法と抗がん剤を同時にやると免疫力が下がってしまうから効果が出なくなる。抗がん剤は止めるようにという指示に従って、がんセンターでの抗がん剤治療を中止しました。

がんが見つかった時点で肝臓にも多発転移をしており、CA19-9は20,000(U/mL)を超えていました。

免疫細胞療法を始めてしばらくしてお腹の痛みがひどくなってきましたが、それを訴えても「気のせいだ」「がん細胞はそんなに早く大きくはならない」と相手にしてくれません。

「膵臓がんは足が速い」とがんセンターで聞かされていた患者は、不安になったといいます。

しかしCT検査はおろか、腫瘍マーカーの検査すらやってくれません。「まだその時期ではない」と言うばかりです。

彼は、私の助言に従って、がんセンターで血液検査と CT を撮ることにしました。CA19-9の値は何と30,000を超えていました。抗がん剤を止めたから当然と言えば当然の検査結果です。

その結果をクリニックの医師に報告をしたら、「腫瘍マーカーが3万を超えてもうちの治療で1000まで下がった患者もいる」そんな返事が返ってきました。

そして5年から10年の人生をプレゼントすると言ってたその医師の口から、「年を越せるのは五分五分だ」と言う呆れるような答えが返ってきたのです。

がんを告知されて頭の中が真っ白になっている状態では、何か特別な助かる治療法を探す患者の気持ちは十分に理解できます。

免疫細胞療法も標準治療と併用するのであればやめろとは言えません。科学的な根拠もなく、効果も期待できない免疫細胞療法ですが、経済的な毒性を除外すれば、副作用の少ない治療法ですから、藁をも掴む気持ちでやってみる患者もいるでしょう。

しかし標準治療まで止めてははいけません。だいたいにおいて、免疫細胞療法クリニックは標準治療と併用できるということを売りにしているんです。

なぜならば標準治療によって効果が出ても、自分の治療法が効いたのだということができるからです。

このクリニックのように、抗がん剤は止めてしまうというのは非常にリスクの高い選択肢です。

がんに対する知識がほんの少しでもあれば、奏効率80%と言われた時に「インチキかもしれない」と気が付くでしょう。

奏功率が80%などという治療法は存在しません。あったとすれば、既に標準治療になっています。ノーベル賞も受賞しているでしょう。

膵臓がんは足が速いと焦る気持ちは分かりますが、経験者に聞くとか患者会に参加するとかして、基本的な知識をできるだけ早く身につけることが、こうしたインチキクリニックのカモにならないための方法です。

セカンドオピニオンは確かに患者の権利です。しかし、がんセンターの医師が情報提供書を出す時に免疫療法について語った助言もよく考えてみるべきでしょう。がんセンターの主治医は、どんな気持ちでこの方を送り出したのでしょうか。

この先生は「いつでも帰ってきていいですよ」と言ってくれたそうです。「何で俺がインチキクリニックの尻拭いをしなけばいけないんだ」。そう考える医師も多い中で、患者思いの優しい先生に違いありません。

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白衣を着た詐欺師に300万円を貢いだ彼はがんセンターの標準治療に戻るのですが、症状は相当進んだ状態でした。残された人生の貴重な時間の多くを無駄にしてしまったのです。

がんとの戦いは情報戦です。インターネットで色々な情報を得ることもできます。しかし、検索をすれば検索の上位にはこうしたインチキ免疫クリニックの広告が表示されるのです。Googleさんにもなんとか対策を考えて貰いたいものです。

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