サイトアイコン 残る桜も 散る桜ー膵臓がん完治の記録

今日の一冊(136)『やってはいけないがん治療』

ジャーナリストの岩澤倫彦さんの著作です。

やってはいけない がん治療 医者は絶対書けないがん医療の真実

岩澤 倫彦
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「医者は絶対書けないがん医療の真実」が副題ですが、そのとおりです。

情報があなたの命を左右するのです。

岩澤さんの取材経験を通して、痛切に感じると言います。だから、一般の方がどのようにがんと向き合うべきか。自分なりの答えを出す前に、是非知っておいてほしいことが書かれています。

がん放置療法を信じてはいけない

医者の一部には、カネのために平気で患者をだます(殺す)人間が存在します。その代表格として「がん放置療法」の近藤誠医師をあげています。肺に影が見つかった岩澤さん自身が、ひとりの患者として、近藤医師への覆面取材です。

面白いやり取りが続きますが、例を上げると、

「オプジーボは効かない」という近藤氏の説明に使われた臨床試験の生存率曲線ですが、この臨床試験はクロスオーバー試験なのです。

クロスオーバー試験となると、グラフの右側は当然接近してきます。近藤氏はそれを指して「効かない」と言うのですが、都合の悪いデータには触れずに情報操作を繰り返しているのです。

岩澤さんの近藤氏への結論は、とにかく「がん治療にネガティブな印象と恐怖心を煽る」のが近藤誠流だと断定します。

近藤理論に興味を惹かれている方にはぜひ読んでいただきたい。

自分の理論が正しければ論文を書いて発表すればよいのですが、それはしないでベストセラー本を次々と出してきている。一冊で印税が1億円を超えるものもある。

こう書くと、思い起こすもう一人の人物がいます。そうです。安保徹氏です。

安保徹氏は近藤氏のを上を行く人物で、共著あるいは監修本を含めると80冊ぐらいは出版しているのではないでしょうか。

結局は、近藤氏は典型的な不安ビジネスで金を稼いでいるのです。がん放置療法とは錬金術だったのです。

長期生存がんサバイバーの共通点

第2章いかにも興味深い内容が書かれています。

進行がんで長期に生存しているがんサバイバーと呼ばれる患者に共通している点は、

  1. 診療ガイドラインを読み込み、治療方針について医者と議論できるほど精通している
  2. 主治医との強い信頼関係を築いてる
  3. 「海外がん医療情報リファレンス」などの欧米のがん学会や政府機関の最新情報をいち早く入手して活用している
  4. これらの情報を活用するには基礎知識が必要です。基礎知識は「がん情報サービス」が一番適している
他にもたくさん参考になる記述

があるのですが、ピックアップして紹介します。

これの典型は、BSチャンネルで免疫細胞療法の自由診療クリニックが単独スポンサーになっている番組です。

この番組には免疫細胞療法を受けたという大学教授の患者が登場して、素晴らしい治療法として描かれています。また金沢大学付属病院などの名前も登場します。

これは実質的なコマーシャル番組であり、インフォマーシャル(インフォメーションとコマーシャルをくっつけた造語)です。

法律の抜け穴を利用した巧妙な宣伝番組です。

がんとの共存ができる時代になったとは言っても、回復が困難な時期がやがてやってきます。

しかしこの段階でも治る(完治する)と希望を持つ患者が多いのです。

叶わない希望を追い続けてしまうと、その先にはより深い絶望しか待っていません。

現実は厳しいですが、がんが進行したら最期の日に向けた一歩を踏み出しましょう。

その時には、支えてなってくれる存在が絶対に必要です。

「人生会議」の理想形は医療従事者を中心にしたサポート体制ですが、診療報酬をつけて推し進める政府の背策は、往々にして患者ファーストでないことがあります。

それぞれ患者なりの方法論があるはずです。

残された貴重な時間をどう生きるのか。そのような場面を迎えた時、相談相手に最もふさわしいのは同じがん患者だ。

と岩澤さんは言います。患者会としての役割があるのです。

これも判断の難しい問題ですが、大腸がんがリンパ節転移をした森下さんの例を取り上げながら、

抗がん剤のやめどきは医者にも分からない。あなたがやばいと思ったらそのときがやめときです

と萬田医師の言葉を紹介しています。

がん研有明病院の漢方外来で人気のあった星野惠津夫医師が突然退職した事情なども初めて知りました。

たくさんの患者と医者を取材したジャーナリストならではの、実際に役立ち、はっと気付かされる内容が詰まった一冊です。

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