今日の一冊(136)『やってはいけないがん治療』

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ジャーナリストの岩澤倫彦さんの著作です。

やってはいけない がん治療 医者は絶対書けないがん医療の真実

やってはいけない がん治療 医者は絶対書けないがん医療の真実

岩澤 倫彦
1,320円(05/27 21:02時点)
発売日: 2020/04/11
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「医者は絶対書けないがん医療の真実」が副題ですが、そのとおりです。

情報があなたの命を左右するのです。

岩澤さんの取材経験を通して、痛切に感じると言います。だから、一般の方がどのようにがんと向き合うべきか。自分なりの答えを出す前に、是非知っておいてほしいことが書かれています。

がん放置療法を信じてはいけない

医者の一部には、カネのために平気で患者をだます(殺す)人間が存在します。その代表格として「がん放置療法」の近藤誠医師をあげています。肺に影が見つかった岩澤さん自身が、ひとりの患者として、近藤医師への覆面取材です。

面白いやり取りが続きますが、例を上げると、

「オプジーボは効かない」という近藤氏の説明に使われた臨床試験の生存率曲線ですが、この臨床試験はクロスオーバー試験なのです。

クロスオーバー試験となると、グラフの右側は当然接近してきます。近藤氏はそれを指して「効かない」と言うのですが、都合の悪いデータには触れずに情報操作を繰り返しているのです。

岩澤さんの近藤氏への結論は、とにかく「がん治療にネガティブな印象と恐怖心を煽る」のが近藤誠流だと断定します。

近藤理論に興味を惹かれている方にはぜひ読んでいただきたい。

自分の理論が正しければ論文を書いて発表すればよいのですが、それはしないでベストセラー本を次々と出してきている。一冊で印税が1億円を超えるものもある。

こう書くと、思い起こすもう一人の人物がいます。そうです。安保徹氏です。

安保徹氏は近藤氏のを上を行く人物で、共著あるいは監修本を含めると80冊ぐらいは出版しているのではないでしょうか。

結局は、近藤氏は典型的な不安ビジネスで金を稼いでいるのです。がん放置療法とは錬金術だったのです。

長期生存がんサバイバーの共通点

第2章いかにも興味深い内容が書かれています。

進行がんで長期に生存しているがんサバイバーと呼ばれる患者に共通している点は、

  1. 診療ガイドラインを読み込み、治療方針について医者と議論できるほど精通している
  2. 主治医との強い信頼関係を築いてる
  3. 「海外がん医療情報リファレンス」などの欧米のがん学会や政府機関の最新情報をいち早く入手して活用している
  4. これらの情報を活用するには基礎知識が必要です。基礎知識は「がん情報サービス」が一番適している
他にもたくさん参考になる記述

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があるのですが、ピックアップして紹介します。

  • 外科手術が一番は日本特有の考え方です。しかし、放射線治療が正解のこともあります。小線源治療はセシウム針の供給がストップしたため現在では「高線量率リモートアフターローディングシステム(RALS)」と呼ばれる装置を使って照射する方式に変わっている
  • 高額な自由診療セレブクリニックは一般病院よりも質が低い
  • 先進医療は本当は実験的医療です。重粒子線治療も骨軟部腫瘍などに保険適用になっていますが、大半のがんで標準治療と大きな差はない
  • テレビのがん関連番組を信用しない

これの典型は、BSチャンネルで免疫細胞療法の自由診療クリニックが単独スポンサーになっている番組です。

この番組には免疫細胞療法を受けたという大学教授の患者が登場して、素晴らしい治療法として描かれています。また金沢大学付属病院などの名前も登場します。

これは実質的なコマーシャル番組であり、インフォマーシャル(インフォメーションとコマーシャルをくっつけた造語)です。

法律の抜け穴を利用した巧妙な宣伝番組です。

  • 米国のがん治療ではビタミン C が広く使われていると日本で宣伝されていますが、実際は米国で実施中のビタミン C の臨床試験を一つしかありませんし、過去の研究は全て否定的な結果でした。
  • ハイパーサーミアではがんは消えない
    日本ハイパーサーミア学会では温熱療法だけでがんが根治できるのは稀と考えられています。放射線治療や抗がん剤治療と組み合わせるのが一般的ですと書かれています。
  • 丸山ワクチンに対する岩澤さんのスタンスも特徴的です。
    丸山ワクチンは免疫療法の一種と考えてよろしいのですが、多額のお金がかかるわけでもないし副作用がほとんどゼロです。
  • 丸山ワクチンの有償治験というのは歴史的に紆余曲折があったわけですけども、岩澤さんの結論は、「エビデンスがなくても必要とされる薬」「これからも不思議な存在としてあり続けるのかもしれません」
  • 玉川温泉に関しても、私がこのブログで書いてきたこととほぼ同じ論調ですね。放射線ホルミシス効果についても、電力中央研究所が、日本の電力産業に関係が深いこの組織が推進してきたのだと述べています 。
  • ゲルソン療法によってがんが消えたと癌が消えたという呆れた正体
  • リビングウィルがあっても決定権は家族にあるのが日本の現実です
  • 話題の「人生会議」は余計なお世話です。これの目的は現場の負担軽減と医療費削減ではないのか(私もそう思います)。病院での「人生会議」など患者も家族もそっちのけです

がんとの共存ができる時代になったとは言っても、回復が困難な時期がやがてやってきます。

しかしこの段階でも治る(完治する)と希望を持つ患者が多いのです。

叶わない希望を追い続けてしまうと、その先にはより深い絶望しか待っていません。

現実は厳しいですが、がんが進行したら最期の日に向けた一歩を踏み出しましょう。

その時には、支えてなってくれる存在が絶対に必要です。

「人生会議」の理想形は医療従事者を中心にしたサポート体制ですが、診療報酬をつけて推し進める政府の背策は、往々にして患者ファーストでないことがあります。

それぞれ患者なりの方法論があるはずです。

残された貴重な時間をどう生きるのか。そのような場面を迎えた時、相談相手に最もふさわしいのは同じがん患者だ。

と岩澤さんは言います。患者会としての役割があるのです。

  • 終末期の点滴や栄養補給は感情を苦しめるだだけ
    これは長尾和宏医師らも口を酸っぱくして言っていますけども、がん悪液質になったとしても無理な点滴、栄養補給をしなければ、枯れるように痩せていき、穏やかな最期の時を迎えることができるのです。
  • 抗がん剤のやめどき

これも判断の難しい問題ですが、大腸がんがリンパ節転移をした森下さんの例を取り上げながら、

抗がん剤のやめどきは医者にも分からない。あなたがやばいと思ったらそのときがやめときです

と萬田医師の言葉を紹介しています。

がん研有明病院の漢方外来で人気のあった星野惠津夫医師が突然退職した事情なども初めて知りました。

たくさんの患者と医者を取材したジャーナリストならではの、実際に役立ち、はっと気付かされる内容が詰まった一冊です。


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今日の一冊(136)『やってはいけないがん治療』” に対して2件のコメントがあります。

  1. がぶらってぃ1世 より:

    まとめてくださり、ありがとうございます。

    近藤医師の一番の問題は、何の希望も与えない話を
    セカンドオピニオンと称して 患者側にぶつけてくるところですよね。
    今は、だまされる方も余り多くないのかもしれませんが、
    どういう信念でいらっしゃるのか、よくわかりません。

    有用な方として、
    迷いが生じたら、早い段階でまともなオンコサイコロジスト(精神腫瘍科医)に
    かかるというのも加えたいです。
    時には治療前、時には家族と共に関わりを持つことで、
    予後が違うとされているようです。

    同じ院内でも、腫瘍内科から精神腫瘍科に紹介して
    もらえなかったというケースを知らされました。
    患者が、自ら勝ち取って行かねばなりません。

    それから、外せないのはリハビリ。
    がんリハビリが保険収載されているのにも関わらず、
    がんセンター中央病院などでは、通院患者に提供できる体制になっていません。

    術後にも「運動は まぁ適当に」位にしか指導されないようですが、
    患者としては、意識して生活に運動を取り入れる努力を!ですね。
    よく書かれている「歩け・歩け・歩け」ということで。

    1. キノシタ より:

      がぶらってぃ1世さん。いつもコメントありがとうございます。
      精神腫瘍科医への受信も要点ですね。ただ全国的に少ないのが残念です。
      膵臓がん患者ではさすがに近藤理論を信じている方は少ないようです。

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