帰宅すると、Amazonに予約してあった中村祐輔著『がんワクチン治療革命
がんもどき理論を整理すれば、
- がんは転移のあるがんか、転移のないがんのどちらか
- 転移のないがんは、今後も転移することはない(転移は初期の段階に既に起きているから)
- 転移のあるがん(本物のがん)は治療をしても治らない
- したがって早期発見は無意味である。トータルの生存期間は変わらない。
となります。これに対して、中村教授は「がんもどき」がそもそも存在しない。彼の理論の前提が間違っているのだから、すべてが破綻する、と断定します。
がんの多段階発がん説を引いて「がんもどき」が存在しない理由を説明しています。正常な細胞の遺伝子に2個から10個の傷がつくことにより、がん細胞となります。しかし、これらの遺伝子の傷は一度に誘発されるのではなく、長期間に徐々に誘発されます。正常細胞から次第にがん細胞に進むことから「多段階発がん説」と言われています。必要でないときにアクセルを踏むような「がん遺伝子の活性化」とブレーキが必要な場合に細胞増殖を止める遺伝子が働かなくなる「がん抑制遺伝子の不活化」があります。がん情報サービスの「細胞ががん化する仕組み」にはより詳しく解説されています。
つまり、中間にはがん細胞とも正常細胞とも断定できない「グレーゾーン」が存在するのです。膵臓がんの場合では、KRAS、CDKN2A、
TP53、SMAD4の順に遺伝子異常が起こるとされ、それにともない前癌病変である膵管内腫瘍の異型度が増し、最終的に浸潤癌に至ると考えられていま
す。KRAS遺伝子に異常が起きたら膵がんだ、というわけではないのです。
中村教授は、次のような疑問をあげています。
- 「がんもどき」理論が正しいのなら、近藤氏の専門である放射線治療も無意味なはず
- 進行した大腸がん患者の生存期間が格段に延びているのをどう説明するのか
- 近藤氏が「例外的に抗がん剤が効く」と言っている白血病は、数十年前には「死の病」であったが、化学療法で治るようになったことはどう説明するのか
そして、『今やがんの世界では常識となっている、「多段階発がん」の正確なプロセスモデルを、近藤氏が、まさか知らないわけではないと思います」と指摘します。
甲状腺がんの場合でも、非常におとなしいがんで、経過もよかったのに、P53遺伝子の変異が起こったとたん、たちの悪いがんに変化したということが
あります。「転移したがんは治らない」と断言することもおかしい。肝臓に転移したがんは、切除可能な場合もあり、手術で治ることもあります。身近に転移し
たがんが治った(寛解した)人を知っている例もたくさんあります。
私は、近藤氏の「がん細胞ができた時点で、本物の癌化がんもどきかは決まっている」とするのは「運命論」だと、以前に批判したことがあります。多段
階発がんの中間段階において、代替療法などで「がんを育てない体内環境」を作ることは可能です。「種と畑」に例えれば、がんの「種」がこれ以上育たない
「畑」にすることは可能です。そのための方法は、シュレベールの『がんに効く生活』や『葬られた「第二のマクガバン報告」(上巻)
「がんもどき」理論は、患者のこのような「希望」をも、無駄な行為として一蹴するのです。