サイトアイコン 残る桜も 散る桜ー膵臓がん完治の記録

中村祐輔教授の近藤誠氏「がんもどき」批判


帰宅すると、Amazonに予約してあった中村祐輔著『がんワクチン治療革命』が届いていました。がんワクチンに関する部分は、臨床試験にも動きがあったので別に書きます。この本の第3章では、中村教授の近藤誠批判が展開されています。こちらも興味深い内容です。第3章は『近藤誠氏の「がんもどき・がん放置療法」への疑問ー医学は科学であり医は仁術である』となっています。

がんもどき理論を整理すれば、

  1. がんは転移のあるがんか、転移のないがんのどちらか
  2. 転移のないがんは、今後も転移することはない(転移は初期の段階に既に起きているから)
  3. 転移のあるがん(本物のがん)は治療をしても治らない
  4. したがって早期発見は無意味である。トータルの生存期間は変わらない。

となります。これに対して、中村教授は「がんもどき」がそもそも存在しない。彼の理論の前提が間違っているのだから、すべてが破綻する、と断定します。

がんの多段階発がん説を引いて「がんもどき」が存在しない理由を説明しています。正常な細胞の遺伝子に2個から10個の傷がつくことにより、がん細胞となります。しかし、これらの遺伝子の傷は一度に誘発されるのではなく、長期間に徐々に誘発されます。正常細胞から次第にがん細胞に進むことから「多段階発がん説」と言われています。必要でないときにアクセルを踏むような「がん遺伝子の活性化」とブレーキが必要な場合に細胞増殖を止める遺伝子が働かなくなる「がん抑制遺伝子の不活化」があります。がん情報サービスの「細胞ががん化する仕組み」にはより詳しく解説されています。

つまり、中間にはがん細胞とも正常細胞とも断定できない「グレーゾーン」が存在するのです。膵臓がんの場合では、KRAS、CDKN2A、
TP53、SMAD4の順に遺伝子異常が起こるとされ、それにともない前癌病変である膵管内腫瘍の異型度が増し、最終的に浸潤癌に至ると考えられていま
す。KRAS遺伝子に異常が起きたら膵がんだ、というわけではないのです。

中村教授は、次のような疑問をあげています。

そして、『今やがんの世界では常識となっている、「多段階発がん」の正確なプロセスモデルを、近藤氏が、まさか知らないわけではないと思います」と指摘します。

甲状腺がんの場合でも、非常におとなしいがんで、経過もよかったのに、P53遺伝子の変異が起こったとたん、たちの悪いがんに変化したということが
あります。「転移したがんは治らない」と断言することもおかしい。肝臓に転移したがんは、切除可能な場合もあり、手術で治ることもあります。身近に転移し
たがんが治った(寛解した)人を知っている例もたくさんあります。

私は、近藤氏の「がん細胞ができた時点で、本物の癌化がんもどきかは決まっている」とするのは「運命論」だと、以前に批判したことがあります。多段
階発がんの中間段階において、代替療法などで「がんを育てない体内環境」を作ることは可能です。「種と畑」に例えれば、がんの「種」がこれ以上育たない
「畑」にすることは可能です。そのための方法は、シュレベールの『がんに効く生活』や『葬られた「第二のマクガバン報告」(上巻)』で詳しく書かれています。

「がんもどき」理論は、患者のこのような「希望」をも、無駄な行為として一蹴するのです。

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