サイトアイコン 残る桜も 散る桜ー膵臓がん完治の記録

膵臓がんの粒子線治療

「市民のためのがん治療の会」に『粒子線治療の現状と将来展望』と題して兵庫県立粒子線医療センター 院長 沖本智昭先生が寄稿しています。

膵臓がんの粒子線治療に関して、注目すべき内容もあるので紹介します。

他にも巨大な肝細胞癌や肺癌、局所進行膵癌で粒子線治療が標準治療成績を上回る可能性を示す事は出来たが、粒子線治療施設で治療方法に違いがある事などからエビデンスが高いデータとは言えないと判断し、粒子線治療が標準治療より優れた効果があると予測できる悪性腫瘍に対して前向き臨床試験を行う事となった。

私が所属する兵庫県立粒子線医療センターでは6~7千万円を自施設で負担して局所進行膵癌に対するゲムシタビン併用陽子線治療を行う事を決めた。粒子線治療施設は適応のない多発転移症例などにも照射を行い金儲けしているという声を耳にする事もあるが、厳格に適応症例を決め粒子線治療を行っている当院では赤字経営が続いている。それでも多額の自己負担で臨床試験を行う理由はただ一つ、当院で施行している粒子線治療を局所進行膵癌の多くの患者さんに届けたいからである。

切除、ラジオ波焼灼、X線治療、肝動脈化学塞栓療法のどれも不可能でこのままでは数か月の余命という患者さんが当院で粒子線治療を受け、何年も元気で過ごされているのを何度も経験している。このような粒子線治療でしか救えないごく少数の症例に対する粒子線治療を保険収載する事でどれ程の国民医療費が増加するというのであろうか?

10の前向き臨床試験が進んでいるようですが、残念ながら膵癌は含まれていません。エビデンスが出て保険収載されるまでには10年はかかるでしょう。

製薬会社が関わらない臨床試験は、自前で赤字覚悟でやるしかないのです。エビデンス至上主義では救える患者も救えない。

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