サイトアイコン 残る桜も 散る桜ー膵臓がん完治の記録

イカサマ治療にだまされる患者

科学的根拠のない似非医療、いかさま治療に騙されて犠牲になる患者が後を絶ちません。

先日の記事『白衣を着た詐欺師』でも書きましたが、イカサマ免疫療法だけでなく、怪しげな食事療法に惹かれる患者もたくさんいます。

どうすればこうしたイカサマ医療の犠牲となる患者をなくすることができるのでしょうか。

金魚さんと大須賀覚医師がそれぞれこの問題について書いています。

心ある医療者たちが「標準治療」を選んでと勧めるのはもっともだし高額なイカサマ治療をしている施設は規制が必要アタシだってそう思ってる色々なメディアでどんどん正し…
『がん患者がイカサマ治療に騙される決定的な理由』 - Walk Strong ~自分のために大切な人のために歩き続けよう~
これからnoteも活用しようと思い、アカウントを作って見ました。ブログ・ツイッター以外にも、こちらにも色々と思ったことを書いていこうと思います。 今回、日本に1週間滞在してきました。その間に京都で開催された日本癌学会と、渋谷ヒカリエでのトークイベント「やさしい医療がひらく未来」に参加して発表してきました。そこで、お伝えしたかったことを、ここにまとめておきます。 伝えたい深刻な事態 情報新時代を向かえ、SNSを介して誰でも情報発信できる時代になりました。それに伴って、不正確ながん治療情報がネットに溢...
日本でお伝えしたかったこと|大須賀 覚|note - note(ノート)

読み比べてみて、皆さんはどう感じたでしょうか。

大須賀医師の言われていることは正論に違いありません。ご提案なさっているような活動をさらに進めてほしいと願っています。

しかし法律で取り締まったり、官民を挙げて正しい知識を普及したとして、それで騙される患者が減るのでしょうか。

私にはそうとは思えません。むしろ金魚さんの言われていることが、がん患者としての思いや苦悩をよく伝えていると感じます。

米国で乳がんの治療や研究をされている上野直人医師や、 東京大学医学部附属病院放射線科の 中川恵一医師も、自分ががんになって「がん患者の気持ちが初めてよく分かった。これまでは分かっているつもりだった」などと述べています。

標準治療には限界があります。ヒトの身体は複雑系であり、医療は不確実性に充ちています。

「自分にもまだ何かできることがあるはずだ」

治らないがんを宿した患者は「絶望的な命の危機」を感じているのです。彼らを正論だけで説き伏せ、納得させることはできません。

標準治療にはなっていなくても、統計的なエビデンスとして確立はされていなくても、良い治療効果を示している治療法はあります。そうした治療法を主治医から紹介されることは稀です。

患者は自分で探そうとしてイカサマ医療に引っかかることになるのです。

人間は部品の集合体ではない。鼻の形が違うように臓器の形も特性も、がん細胞の遺伝子変異も異なっている。患者にはそれぞれの人生の歴史があり、なじんできた生き方がある。その生き方まで標準化することはできない。

文化人類学者 磯野真穂氏の『医療者が語る答えなき世界』に、こんな一節が書かれています。

正しい医学的知識をかれらに教えたり、かれらの身体をモノとみなして介入すれば解決する問題ではない。むしろそこで重要になるのは、医学を目の前の患者にインストールすることではなく、標準化が不可能なそれぞれの患者の人生の文脈に、医学という知をどう混ぜ合わせていくか、医療者の持つ専門知と患者の人生の間にどのような再現性のない知を立ち上げ、実践し続けていくかである。

医療者の仕事の根幹は、モノとしての人間を徹底的に標準化することで体系づけられた医学という知を、それぞれの患者の人生にもっとも望ましい形でつなぎ合わせ、オーダーメイドの新しい知を患者と共に作り出していくことにある。そこで作り上げられる知は、標準化されることもなければ、再現されることもないが、人間の営みが本来そのような再現性のないものである以上、医療という知もまた再現性のなさをはらむ。

医療者の仕事は医学を医療に変換することである。

「標準医療が最高の治療法」であり、「治せない」患者は「あとは緩和」へ、「緩和も治療です」と言うだけでは、患者の人生に寄り添い、患者とともに新しい知の地平を拓く医療はできないだろう。

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