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リーマン予想 『魔性の難問』

「ガンペプチドワクチン療法」について続けて書いているが、ここでちょっと寄り道をして「リーマン予想」について。

先日NHKスペシャルで放映された『魔性の難問 ~リーマン予想・天才たちの闘い』が興味深かった。

リーマン予想とは何だ? とてつもない数学上の難問らしい。素数が関係しているらしい。こんな疑問にわかりやすく答えてくれる。

リーマン予想とは、数学的に表現すれば『ゼータ関数の自明でないゼロ点は、全て一直線上(x=1/2+i*t)にあるはずだ』となる。これでは?? 何のことかよく分からない。数学上の未解決問題のひとつであり、クレイ数学研究所はミレニアム懸賞問題の一つとして、リーマン予想の解決者に対して100万ドルの懸賞金を支払うことを約束している。これまで何人もの天才数学者たちが挑戦し、中には精神を患った者も出るような超難問である。

※X=1/2+i*t の i は虚数単位、つまり2乗して-1 になる数。

素数の配列には何かの規則性があるはずだと考えていた数学者オイラーは、次のような式を考えた。そして、この素数だけの式の値がある数に収束することを証明した。

あらゆる整数は一意的な素数の積として表わすことができるので、次のように変換することができる。

素数という、一見ランダムに出現するかに見える数を無限にかけていくと、完全な図形である円を表わす円周率が出現するのである。素数という単純な数が、ま
だ我々には理解できない宇宙やこの時空を構成している基本的な法則と何らかの関係があるのではないかと想像され、ドキドキするではないか。整数や素数の級数を眺めていても円周率が出てくるような気配はまったく感じられないよね。しかし、突然πがでてくる。これには発見したオイラー自身も感動したそうだ。一
見ランダムに出現している素数に、何らかの規則性がありそうだということ。それが円周率と関係しているらしい。

1世紀後、リーマンはオイラーのこの式を拡張して(2をXに置き換えて)ゼータ関数を定義します。

リーマンのゼータ関数は、

で定義される。実際はXは複素数まで拡張されているが、X=2のとき、(これがオイラーの式ですが)

ここでpは素数の全体(無限個ある)である。(Σは和を、Πは積を表わす記号である)

となる。整数の和が素数の積に変換されていることに注意。先に書いたように、この関数がある値に収束することを発見したのがオイラーである。X=2では、

さて、リーマンはこの館数の値が最も小さくなる「ゼロ点」がどのようになるかを考えた。4つのゼロ点を計算してみると、ランダムに並ぶだろうという予想に反して、一直線上に並んだのである。

手計算でやったのだからすごいです。

この計算、カシオ計算機の高精度計算サイト「keisan」で計算することができる。試してみませんか?

ゼータ関数  ゼータ関数の自明でないゼロ点

X=2を入力すると、ζ(2)=1.6449340……. となる。π^2/6を計算すると確かにあっている。

さて、手計算で4個のゼロ点を計算したリーマンは、その点が一直線上にあるらしいということに気づく。で、多分他の全ての点も一直線上にあるはずだ!・・・これがリーマン予想というわけだ。

もしも、ゼロ点が一直線上に並ぶなら、素数に何らかの規則性が存在するということが証明できることになるからだ。つまり、「素数の並びに意味はあるか?」という命題が「全てのゼロ点は一直線上にあるか?」という命題に置き換えることができる。これを証明すれば、素数に規則性があるということを証明したことになる、というわけだ。

このリーマン予想の証明に取り組んだのが、映画『ビューティフル・マインド』にもなったジョン・ナッシュ博士である。しかし、この証明との格闘の結果、総合失調症になる。「ゼロ点は相対性理論の時空の特異点と一致する」と説明する場面で、総合失調症が発病し、講演はしどろもどろのうちに失敗に終わる。

「ゼロ点」がアインシュタインの一般相対性理論における「時空の特異点」に一致するとはどういうことなのか。

次に登場するのがルイ・ド・ブランジュ博士。彼は素数の配列がミクロの世界と密接に関連しているのではないかと予想していた。それを例えでいえば、光がプリズムによって屈折され投影された位置は波長によって異なる(虹を思い出せばよい)。波長毎のこの位置がゼータ関数のゼロ点の位置に関係していると考えればよい。

素数とミクロの世界が関係しているなんて、ばかばかしいと、多くの人は取り合わなかったが、二人の物理学者と数学者の偶然の出会いが驚くような結果を生むのです。

物理学者のフリーマン・ダイソン博士と数学者のヒュー・モンゴメリ博士はプリンストン高等研究所のお茶の時間に何気ない会話をしていた。モンゴメリ博士が、ゼータ関数のゼロ点の出てくる規則性が数式で表わされるんだと話して、その数式を書いて見せます。

この式を見たダイソン博士の顔色が変わります。ダイソン博士は、ウランなどの比較的重い原子の原子核が取るエネルギー順位を著わす式にみごとに一致している、というのです。

ウランなどの思い原子の原子核は、エネルギーが変動していて、しかもその取りうるエネルギーにはある規則性がある。(起動電子にもエネルギー順位があるが、それと似たような者) その取りうるエネルギーの間隔を著わす式が上の式。

そして、二つの式が一致するということ。つまり、ミクロの世界と素数の配列には、何か宇宙の根本法則とでもいうような関連性があるということだ。

数学界も物理学会も色めき立ちます。そして1996年に世界の物理学者や数学者を集めた「リーマン予想会議」が開催された。

この会議で数学界の大御所、アラン・コンヌ博士が「非可換幾何学」がこの問題を解く鍵かもしれないと言う。「非可換幾何学」は我々の住むこの空間が一様ではなく、ひずみを持った小さな断片で構成されているとする幾何学であり、この幾何学を使えばミクロの世界とリーマン予想の関連が解明されるはずだと提案した。

つまり、素数の配列に隠された規則性を解くことは、ミクロの世界から宇宙の世界までを司る根本法則=創造主による宇宙の設計図が分かるのではないかということだ。

番組では触れられていないが、リーマン予想とカオス理論・複雑系とも多くの点で関連性がありそうだ。リーマン予想はファレイ数列で記述することが可能だが、ファレイ数列はカオス理論には頻繁に出てくる。重い原子核のエネルギー間隔という話しも、正確には量子カオスのことらしいのだが、映像化するのが難しくて原子核なんかを持ってきたのだろう、誤解を与える映像だという批判もある。

まぁ、専門家には自明のことかも知れないが、一般に訴えるにはこれも仕方がないと思う。


人間の身体は分子・原子で構成されている。当然だが、ミクロの世界の法則に影響も受けるだろう。がん細胞とリンパ球の闘いなどは化学反応ではあるが、がん細胞の表面に提示されたペプチド、CTLとの反応は、ミクロの世界であるとも言えよう。そしてヒトの身体は複雑系であり、この宇宙もまた複雑系である。我々はまだその仕組みのほんの一部を知っているだけであり、素数とリーマン予想の関係のように、隠された根本法則を理解するに至っていない。

がんの自然治癒という希な現象も、何らかの原因で免疫系にスイッチが入り、完全治癒に向かうのであろうが、その原因は分かっていない。素数が関係しているはずもないが、この時空の仕組みが関わっていない言い切ることはできないだろう。ガンペプチドワクチン療法に関していえば、ペプチドを注射して樹状細胞に記憶させ、この樹状細胞がT細胞を教育してガンを殺すのだという、単純な模式で良い結果が出るのだろうか。ヒトの身体はもっと複雑であるはずだ。

この宇宙も人間も、ほんとうにミラクルでワンダフルだ。

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