サイトアイコン 残る桜も 散る桜ー膵臓がん完治の記録

膵臓がんも真菌? そんなわけないだろ

朝日新聞の広告がSNSなどで批判されています。それとの関連で、「真菌」についての話題を3つ挙げます。

朝日新聞は広告を謝罪

広告のこの本は、イタリア人の元医師 シモンチーニ氏が発見した、がん細胞は「真菌」だから重曹(炭酸水素ナトリウム)で治るというのですが、インチキ療法を野放しでよいのかとの指摘に、朝日新聞が謝罪文を発表しました。

「ガンは真菌(カビの一種) だ」 などとする表現は媒体として十分な検討を行うべきでした。

としています。

がんは人の細胞が遺伝子変異したもので、真菌とは構造も違います。真菌には細胞壁があるが、人の細胞には細胞膜しかありません。

著者の世古口裕司氏は、「ホリスティック医学の立場から現在まで2万人、延べ20万臨床を施術する療術家(気功・整体)」との紹介文から推測すると整体師なのでしょうか。彼の公式サイトでは、

この度、出版した「イタリア人医師が発見した新しいガンの治療法」で、私は製薬大会社の巨額の利権である抗がん剤に正面から批判(問題を提起)しました。

と、抗がん剤は製薬利権だとの主張を持ち出しています。よくある陰謀論ですね。

真菌が膵臓がんを誘発する

同じ真菌が話題のニュースですが、こちらは「ネイチャー」誌に掲載された記事です。

腸内に生息する真菌が膵臓に移動し、正常な細胞のがん化を促すとする研究結果を、米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン・ヘルスのGeorge Miller氏らが「Nature」10月2日号に発表した。

真菌がすい臓がんの発生に関与か腸内に生息する真菌が膵臓に移動し、正常な細胞のがん化を促すとする研究結果を、米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン・ヘルスのGeorge Miller氏らが「Nature」10月2日号に発表し...
腸内に生息する真菌がすい臓がん発生に関与している可能性、米ニューヨーク大学研... - @DIME アットダイム

膵管を介した真菌の移動が、腸内と膵臓内の真菌叢の異常な変化をもたらし、膵臓の細胞をがん化させる可能性があるという内容です。「膵臓がん細胞は真菌だ」と言っているわけではありません。

マウスレベルの実験ですから、まだ仮説の域を出ず、これによってヒトの膵臓がんに対する治療法がすぐに見つかるわけでもありません。

シモンチーニ氏は、膵臓がん腫瘍に多く存在している真菌を、がん化する前のものだと勘違いしたのでしょうか。

抗真菌薬で膵臓がんが完治

明和病院の園田医師が行なっている臨床試験で、ステージ4の膵臓がんが完治した例を紹介しました。

 抗がん剤の耐性を解除する治療法について、何回か記事を書いてきましたが、それぞれの関連性や、要点をまとめてみました。抗がん剤に耐性が付くメカニズムの1つとして、がん細胞の表面にP-糖タンパク質が多数発言し、それがポンプの役割をして抗がん剤を排出してしまうことが知られています。ただ、抗がん剤の耐性についての機序は、それだけではなく、マイクロRNAの発現が関与している、P-糖タンパク質も含めたMRP1(ABCC1)、BCRP(ABCG2)などのトランスポーターが、抗がん剤を排出することが知られており、研究が進められていま...
抗がん剤の耐性を解除する記事の「まとめ」 - 残る桜も 散る桜ー膵臓がんサバイバーの記録

この治療法は、抗がん剤と抗真菌薬を使って、がんの薬剤耐性を解除しようという研究です。

がん細胞の多剤耐性に関与しているP糖蛋白を阻害するとともに、血管新生を阻害し、がん幹細胞増殖因子も阻害するイトリゾールという抗真菌薬を併用するものです。

この研究も「がん=真菌」だから、抗真菌薬をつかってがん細胞を殺すわけではありません。

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