まもなく使えるオニバイド
昨日の「膵臓がんの集い Web 交流会」でも皆様と意見交換をしたのですが、オニバイドについてもたくさんの質問がありました。
オニバイドも保険に収載されて5月20日から使えるようになりました。しかし、保険収載はされたが、病院によって準備期間が必要で、すぐには使えないところも多そうです。
さて問題は、オニバイドは膵癌では初めてセカンドラインの抗がん剤として承認された訳ですけども、一次治療ででゲムシタビン+nab-パクリタキセルを使い、耐性がついた患者への二次治療として使うことが想定されています。
一方で、FOLFIRINOXを使った患者は、二次治療としてオニバイドを使うことはできないのかと言うと、そういうことは禁止されているわけではありません。
ただイリノテカンが両方に含まれて、かぶさっております。FOLFIRINOXで効果がなくなっった後で、オニバイドで効果があるのかどうかという懸念も考えられますが、オニバイドの添付文書にはこのような一節があります。
8. 重要な基本的注意
8.1 本剤はイリノテカン塩酸塩水和物をリポソームに封入した製剤であることから、本剤の有効性、安全性、薬物動態等は従来のイリノテカン塩酸塩水和物製剤と異なる。
本剤を従来のイリノテカン塩酸塩水和物製剤の代替として使用しないこと。また、本剤を従来のイリノテカン塩酸塩水和物製剤と同様の用法・用量で投与しないこと。
マイクロカプセルに包まれた DDS 製剤ですから安全性も有効性も異なってくるとの考え方ですね。
実際はどうなのでしょうか、使い始めれば情報が出てくるでしょう。
日経メディカル・オンコロジー、膵癌患者には必読の記事
が載っています。
山口大学医学部附属病院腫瘍センターの井岡達也先生が解説をされています。国内の第2相試験の結果を示しながら、上記のような疑問点にある程度答える内容となっております。
切除不能膵癌の2次治療として、イリノテカンをポリエチレングリコール(PEG)で修飾したリポソーム製剤であるナノリポソーム型イリノテカン製剤(nal-IRI)が3月に日本でも承認された。この承認は国際無作為化フェーズ3試験であるNAPOLI-1試験と国内フェーズ2試験の結果に基づいたもの。国内フェーズ2 膵癌に6年ぶりの新薬、ナノリポソーム型イリノテカン登場で考える治療の流れ - 日経メディカル |
安全性・有効性ともに、国際無作為化フェーズ3試験であるNAPOLI-1試験と相違がないという結果が出ております。
日常の診療でどう使っていくか
- 遠隔転移を有する膵癌に対する1次治療のスタンダードはFOLFIRINOXとゲムシタビン+nab-パクリタキセルです
- 1次治療からFOLFIRINOXを使って、2次治療はゲムシタビン+nab-パクリタキセルの施設では、オニバイドの使いどころがなくなる
- ゲムシタビン+nab-パクリタキセルが1次治療で、2次治療にオニバイド(nal-IRI+5-FU/LV)とすると、3次治療にFOLFIRINOXを使うことができるのだろうか
- 一次治療で投与するFOLFIRINOXのイリノテカンを勝手にオニバイド(nal-IRI+5-FU/LV)にスイッチすることは、やってはいけません。(これは添付文書にも記載されている)
- 日常診療ではゲムシタビン+nab-パクリタキセル、そしてnal-IRI+5-FU/LVという流れが主体になるのではないでしょうか。なおこの場合はmodified FOLFIRINOXの立ち位置はなくなります
- 2次治療に何を選ぶかで1次治療を考えてみますと、オニバイド(nal-IRI+5-FU/LV)を2次治療で使うことで、FOLFIRINOXのオキサリプラチンによる末梢神経障害を心配せずに、1次治療でゲムシタビン+nabパクリタキセルを採用することができる
- また2次治療にS-1も選択されてきましたが、オニバイド(nal-IRI+5-FU/LV)が承認になったことで、S-1では十分な効果が期待できないことを考えますと、今後はS-1を2次治療にするという選択肢はないだろう
主治医との治療戦略の参考としてください。
ヤマモモの果実に似ているなぁ(^Д^)膵臓がんで初めてのDDS製剤リポソームイリノテカン(オニバイド)が膵臓がんに対して承認されましたね。久しぶりの膵臓がんに対する新薬の承認です。また DDS(ドラッグ・デリバリー・システム)を利用した薬としては膵臓がんでは初めてです。製造販売元の日本セルヴィエとヤクルトが2019年10月にプロモーション契約を結んでいます。ヤクルトはイリノテカンの製造販売元であり、企業の方針としてがん領域では膵臓がんに力を入れると謳っています。セルヴィエ社はフランスに本社を置く非営利団体が運... オニバイドの効果と作用機序 - 残る桜も 散る桜 |