オニバイドの効果と作用機序

ヤマモモの果実に似ているなぁ(^Д^)

膵臓がんで初めてのDDS製剤

リポソームイリノテカン(オニバイド)が膵臓がんに対して承認されましたね。久しぶりの膵臓がんに対する新薬の承認です。また DDS(ドラッグ・デリバリー・システム)を利用した薬としては膵臓がんでは初めてです。

製造販売元の日本セルヴィエとヤクルトが2019年10月にプロモーション契約を結んでいます。ヤクルトはイリノテカンの製造販売元であり、企業の方針としてがん領域では膵臓がんに力を入れると謳っています。

セルヴィエ社はフランスに本社を置く非営利団体が運営する製薬企業です。利益を追求しない非営利企業であり、株式も公開していないので、株主の利益を考える必要がないため、年間売上の25%(約10億ユーロ)を研究開発費に回していると言われています。

こうした製薬企業の奮闘によって膵臓がん患者に新しい。選択手段が生じたには朗報です。

ただイリノテカンは新しい抗がん剤ではなくて、すでにFOLFIRINOXの一剤として使用しているわけです。それをナノサイズのリポソームに包んで直接がん細胞に届ける。そのために副作用が少なく効果が大きくなるだろうと、DDS 薬剤として開発されたわけです。

FOLFIRINOX療法(エルプラット+カンプト+5-FU+アイソボリン併用療法)の薬剤には、カンプト(イリノテカン)、5-FUが含まれており、アイソボリンは5-FUの増強剤ですから、実質上、オニバイドと5フルオロウラシルロイコボリンの併用療法との違いは、白金製剤のエルプラット(オキサリプラチン)だけです。増強剤としてアイソボリンの代わりにロイコボリンを使っているのでしょう。

したがって、オニバイド療法で効果がなかったら、次はFOLFIRINOX療法をということはないのでは?  膵臓がん患者の選択肢が増えたかどうか、疑問です。

まだFOLFIRINOXを使用していない方は、どちらを選ぶか主治医とよく相談されたほうが良いでしょう。

NAPOLI-1試験

ナノリポソームイリノテカン(MM-398)については2015年10月に米国 FDA がすい臓がんで承認をしています。

その根拠となった臨床試験がNAPOLI-1試験です。

NAPOLI-1試験の試験デザインは、

  • 第1群:ナノリポソームイリノテカン単独療法群
  • 第2群:5フルオロウラシルとロイコボリン療法群
  • 第3群:ナノリポソームイリノテカンと5フルオロウラシルロイコボリンの併用療法

この三つのグループに分けて世界14カ国、76施設が参加して行われた第三相試験です。

その結果の生存率曲線を下のようでした。

左の図Aは、第3群と第2群、右図Bは第1群と第2群を比較しています。

A図を見れば、リポソームイリノテカンと5フルオロウラシルロイコボリン併用療法群の生存期間中央値が6.1か月となっています。それに対して5フルオロウラシルロイコボリン群は4.2ヶ月ですから1.9ヶ月の差があるという結果でした。

右の図 Bではリポソームイリノテカン単独療法群と5フルオロウラシルロイコボリン群を比較していますが、こちらにはほとんど差がありませんでした。

アジア人への効果

今回の日本での承認にあたって、国内でも臨床試験が行われたと思われますがその結果は出ておりません。(見つけることができなかった)

ただNAPOLI-1試験には韓国と台湾から3割の患者が参加しており、台湾の保健当局が人種間の差異を解析して発表しています。安全性、有効性ともに他の人種、主に白人ですが、と同等であるとしています。

膵臓がんのドラッグ・ラグが問題にされていますが、韓国や台湾と同じように、日本がこのNAPOLI-1試験に参加していれば、5年前には承認されていたのではないでしょうか。

日本の研究機関、病院、医療従事者の奮闘を期待したいと思います。また患者もこうしたグローバルな臨床試験に参加できるよう声を上げていくべきではないでしょうか。

リポソームイリノテカンの作用機序

がん細胞は細胞分裂によって増殖していきますが、その前段階として DNA を複製します。

がん細胞の DNA は二本鎖の二重らせん構造になっていますが、複製する過程ではヘリカーゼと呼ばれるタンパク質によって一本鎖に分離されます。しかしこの DNA の二本鎖構造は超らせん構造と言われるねじれがありこのままでは一本鎖にすることができません。

それでⅠ型トポイソメラーゼと言われるタンパク質が、一本鎖は切断することによって超らせん構造を解消し、DNA の複製ができるようになるのです。

ナノサイズのDDS製剤としてがん細胞の近くまで運ばれたリポソームイリノテカン(オニバイド)は、周辺のマクロファージに取り込まれてリポソームの袋が破られ、イリノテカンが放出されます。

このイリノテカンはSM-38の変換されます。SN 38は活性代謝物であり、がん細胞のⅠ型トポイソメラーゼを選択的に阻害します。その結果、DNA のらせん構造を一本鎖に変えるためのⅠ型トポイソメラーゼが働かなくなり、にがん細胞が増殖できなくなって死滅するのです。

こうした機序が説明されています。

こう説明されると、オニバイドでがん細胞が消えてしまってくれるのではないか。そのように期待したいところですが、現実はそうはなりません。上の図Bでも示したように、オニバイド単独では、前世紀の古い抗がん剤である5フルオロウラシルロイコボリンと同程度の効果しかなく、併用することでやっと使える抗がん剤となっているのです。

新しい抗がん剤(とはいっても新しい袋に包んだだけですが)ですから期待したいところですが、驚くような効果があるとはいえないようです。


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